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そのとおり!!!Vol.22、、、歴史に残る大仕事をもう一つ、稲盛氏には東電の解体と再生に取り組んでいたたきたいと切望しています。。。

■稲盛和夫が諭す
中国とは「徳」で接せよ
稲盛和夫氏[日本航空名誉会長]に聞く(前編)

経済や政治、外交など難題が山積みになっている現在の日本。このような時代に必要なリーダーとしての心構えとは何か。稲盛和夫氏が諭すように語った。今回はその前編。(聞き手は 本誌編集長 山川 龍雄)

稲盛 和夫(いなもり・かずお)氏
1932年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年に京都セラミック(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年から名誉会長を務める。84年には第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。2001年から最高顧問。2010年1月に日本航空の会長として再建に取り組むよう要請され、2月1日から無給で務める。1984年には稲盛財団を設立し、国際賞「京都賞」を創設。経営塾「盛和塾」の塾長を務める。2013年早々にも日本航空の名誉会長職を辞す。

戦後の歴史が変わろうとしている
よっぽど腹を据えて進めないと
将来、禍根を残すことになる

政権が再び、自民党の元に戻りました。

稲盛:日本は戦後、ずっと自民党が政権与党をやってきました。しかし、正しい民主主義が定着するためには、良い悪いがあった時、政権交代できる政党があるべきだと思って、私は民主党を応援したんです。

 しかし民主党は、2009年に政権を取りましたが、国民が期待した成果を出せず、大変な失望感が横溢してしまった。その結果が今回の選挙結果になるわけです。大敗しましたが、自分たちがまいた種だからしようがない。

結果は残念だと。

稲盛:民意ですからしょうがない。

 ただ戦後の歴史が、大きく変わる方向に政治が動くんではないかと思っています。少し右翼がかった方向に政局が向かおうとしている。平和憲法をベースに戦後の日本はやってきましたが、これが大きく変わる可能性が出てきた。全面的に憲法改正とまではいかないにしても、変わるかもしれない。

 そうなれば日本の立ち位置も大きく変化せざるを得なくなってしまうでしょうし、近隣諸国を含めた世界の目も大きく変わってくる。ですから、よっぽど腹を据えて、十分検討したうえで進めてほしいと思います。

 ただの思いつきでやって禍根を残すことになってはいけない。民主党の非常に未熟な政治の反動で変なふうになっては心配だなという気はしています。

民主党はなぜ期待に応えられなかったのでしょう。

稲盛:1番目には政権与党としての経験が全くなかった。そのために霞が関の官僚をうまく使いこなせなかった。

 もう1つは、民主党の中に優れたリーダーがいなかったということでしょう。党内のガバナンス(統治)が全く機能しなかった。党首になられた方々は、民主党議員の信頼や意見をまとめることができなかった。自分の考えだけは主張されましたが、それが民主党議員の大半が賛同する意見なのかどうか。それも確認しないままに、独善的に党首が方針を決めて、ばらばらになってしまった。結局、最後は瓦解したという感じです。

 鳩山(由紀夫・元首相)政権の時から軋みは起きていました。最初は反小沢(一郎氏)といいますか…、小沢氏が政治献金問題を起こしていましたのでね。それがずっと尾を引いて、ほかの議員の意見も吸収しきれなくなった。意見をまとめて、みんなを引っ張っていくことができない。鳩山さん、菅(直人・元首相)さん、野田(佳彦・前首相)さんと(民主党政権が)3代続いても、リーダーがいなかったんだと思います。

「出でよ、傑物」

どうしたら政治の世界で真のリーダーが生まれるのでしょうか。仕組みが悪いのでしょうか。

稲盛:仕組みじゃないでしょう。優れたリーダーとは、人格を含めたトータルの人間性に魅力があり、確固たる信念に満ちて、独善ではなく、みんなの意見を吸収して、説得するだけの力がなければいけませんから。作られるものじゃなく、それを持った人がいなければいかんのです。

資質のある人が途中で消されて、そうでない人がトップになっているということでしょうか。

稲盛:排除されるんじゃなしに、もともといないんじゃないでしょうか。もちろん、そういう人は策を弄する人に対しては弱いかもしれません。

 例えば、明治維新の時の西郷南洲(隆盛)とそのほかの連中を比べると分かります。人間的に魅力があって、統率力もある無欲恬淡とした西郷は、策を弄する悪賢い連中に足をすくわれて、最後に野に下ることになりました。

 リーダーは、策を弄する連中もぐっと抱えて、収めるだけの大きな度量と力量のある人じゃないといけない。ただそれは作ろうと思って作れるもんじゃありません。「傑物、出でよ」ということしかないでしょう。

自民党政権で最も期待されているのが金融政策です。金融緩和論については、どう見ていますか。

稲盛:自民党は日銀に国債を買い取らせてでも大きな金融緩和をすると言っておられる。2%ぐらいのインフレをすると。私は専門家ではないし、あんまりよく分かってないので、感覚的にしかモノが言えません。そのうえで、金融緩和は一時的な景気浮揚を招くことはできるかもしれませんが、危険だという気がします。

なぜでしょうか。

稲盛:私は 80歳で、戦争が終わった昭和20年は中学1年生でした。戦時中に国は、戦時国債を膨大に発行して、民衆は国のためにと国債をいっぱい買いました。これが戦後、紙切れになり、同時にハイパーインフレが起こってしまった。父は戦前、印刷屋をやっていてこつこつとお金をためてきましたが、それも全部紙くずになったんですね。焼け野原に掘っ立て小屋を建てて、親子9人で生き延びてきましたが、その時のハイパーインフレ、つまり本当に紙幣が紙くずになっていくのを見てきました。

 インフレターゲットをやったら、しばらくは国の借金にとっても、借金をたくさんしている人にとってもいいかもしれません。ですが今度、インフレを止めようと思っても、そう簡単に止まるものじゃない。私はブラジルのハイパーインフレや、いろいろなことを現地で見てきましたから。

 過去の経験からすると、よっぽど劇薬で、非常に危なっかしいと危惧しますね。

経済政策に過度に頼ろうとする企業側の「他力本願的」なムードも少し気になっていらっしゃるのでは。

稲盛:確かに現在の日本は、政府も民間も非常に依頼心が強くて、誰かが何とかしてくれると思っている。自主性や自立性が希薄になって、依頼心と依存心が官民すべてに横溢している。

 自立する心がない限り、日本の現状を打破することはできません。自立するという意識の下に、何としてもいい方向に向かわなきゃならんと思う。そういう強い意志力が欠落している気がします。

 リーダーの方々も含めて日本全体が、自らこの状況を打開し、回復する気持ちが横溢しなければ、現状を変えることはできないと思っています。

稲盛さんから見ると、今の日本人は自立心が弱いですか。

稲盛:私だけでなしに、みんな思っているのではないですか。バブル崩壊後ずっと低迷を続けて、なすすべがないですし。本当に弱いですね。

外交面では尖閣諸島に端を発した日中関係の悪化が続いています。政治家や経営者は今後、どのように中国とつき合うべきでしょうか。

稲盛:日中関係は非常にぎくしゃくして厳しい局面です。これを何とかするのは簡単なことじゃない。尖閣諸島については、日本は自分たちの領土だと信じていますし、中国は中国でそう思っている。足して2で割るわけにもいきませんから。この問題はのどに刺さったトゲみたいなもので、解決には時間がかかるだろうと思います。

 ですが、たったそれだけのことで、経済も含めて、いつまでも日中関係がぎくしゃくするのは問題です。我々日本人としては、国境問題は別に置いて、徳でもって中国の民衆とつき合っていく。中国の政府の人たちとも、日本人が持つ素晴らしい人間的な徳でもって接していく。

孫文が訴えた「王道」統治

具体的にどういうことですか。

稲盛:私は7〜8年前、中国共産党幹部の教育機関である北京の党中央校で講演しました。日本と中国は、歴史的にも非常に深い、いい関係を続けていかなきゃならんと話しました。その中で、明治時代、辛亥革命で敗れた孫文が日本に来て、神戸で講演した時の言葉を引用しました。

 孫文は日本国民に対してこう話したんです。「日本は明治維新を迎えて欧米の近代文明を取り入れ、繁栄を遂げようとしている。その欧米文明というのは覇権の文明、力の文明です。しかし東洋には、人間の徳で治めていくという王道の文明があります。欧米文明を取り入れて覇権の道を歩くのか、それとも古来東洋に存在する王道の道を歩くのか。日本の将来は皆さんの選択にかかっています」。こういう素晴らしいスピーチでした。日本はその声に耳を貸さないで、一瀉千里(いっしゃせんり)に覇権の道を歩いて、1945年に敗戦を迎えて壊滅してしまった。

 当時、中国は大発展を遂げる過程にありました。このままいけば世界第2位の経済大国になるのは必至です。そこで私は、孫文が日本人に言ったのと同じことを、中国の皆さんにお返ししたんですね。

 「中国が王道の道を歩かれるのか、それとも覇権の道を歩かれるのか。それはまさに指導者である皆さんの責任です」、と。

 その翌日、人民大会堂で当時の中国共産党の副主席と会いました。彼は私の講演のゲラをもらったと言い、「稲盛さん、読みました。稲盛さんが危惧されるようなことは一切ありませんから、心配いりません」とおっしゃってくださいました。

中国側の反応は、良かったんですね。

稲盛:もともと中国は数千年の歴史の中で、孟子や孔子を含めて、立派な哲学者を出しておられる。素晴らしい哲学を説いてこられたので、普通の方にもそういう素養があるんです。覇権ではなしに、王道や徳で、日本は中国とつき合っていくべきだと思います。

 徳とは仁と義です。優しい思いやりの心がベースにあって、素晴らしい仕事をしながら相手を慈しみ、愛し、ビジネスを展開していく。これを続けて、日本人の立派な人間性を分かってもらえれば、彼らも日本人を尊敬してくれるんじゃないかと思っています。

「徳」をもって接するのが基本だと。

稲盛:昨年は反日デモがあったり、日本製品の不買運動が起こったりしました。中国の書店からも日本人の書いた本が全部消えたんですね。でも私の本は残っていた。日本で発売した『生き方』という本は、中国でもう100万部以上売れている。正規品が100万部を超えたんですから、海賊版がその何倍と出とるでしょう(笑)。

 ですから、人間の徳については、中国でも関心を持つ人たちがたくさんいるんです。

中国の方は、稲盛さんの講演や本の中で、特にどの部分に関心を寄せているのでしょう。

稲盛:ビジネスの根幹には、どうすれば儲かるかということがあります。けれど、それを考える前に、「利他の心」がいると私は説いています。自分が儲けようと思うなら、相手も利益を得られるような思いやりの心、つまり利他の心がなかったら意味がありません。

 ビジネスにテクニックは必要でしょう。ですがそのテクニックを動かす人間のベースにあるのは、相手を思いやる利他の心です。利己の塊みたいな人が、ビジネスの中でテクニックを使ったら、世の中はますますいびつになっていく。

 ところが、欧米流というのは全部が利己の塊で、利他の心を抜きにした考え方です。自分が儲けられるなら、相手がいくら苦しもうと構わないという考えが根底にある。利己の塊で、頑張って成果を上げれば、おまえの給料をなんぼでも上げてあげるというのが成果主義です。ベースが利己で、テクニックを使っていく。

 私はそれがあるべき姿だとは思いません。利他の心をベースにしてテクニックを使うべきだと訴えています。

 北京大学や清華大学で話をした時、有名な教授がこう言ったんです。「我々は今まで、中国を近代国家にするために、ハーバードビジネススクールと提携して、欧米流のマネジメントを教育してきました。でもハーバードビジネススクール一辺倒のやり方はいかんと猛烈に反省しました。今後はあなたの哲学も大学で取り上げましょう」と。

日本人は信頼できるし、尊敬できる
人間性からほぐしていけば
日中関係は解決できるでしょう

一見、利己的にも見える中国で、なぜ、稲盛さんの哲学が響いているのでしょう。

稲盛:中国の場合は、賄賂がものすごくはびこっています。民間企業同士の場合でも、簡単に経理担当の若い女の子が不正を働く。購買担当の人が「買ってあげる」と言えば、いっぱい業者が来て、賄賂ぐらい簡単にくれる。自分がもらおうと思わないでも、課長級ぐらいの地位の人に対しても、いろいろな賄賂があります。

 さらに、共産党の幹部は想像を絶するような蓄財をしています。そういう社会を、庶民が見ているわけです。正常ではないとみんな思っている。そこで私が、お金は一銭ももらわずに、坊さんの辻説法みたいにして歩いているから、その姿を見て、みんなが詰めかけて、賛同してくれるんでしょう。

 為政者から見ると、変なふうに洗脳されると困るわけですから、通常こういう活動はとても警戒されるんです。けれど、どこの省でも、どの大都市でも、共産党幹部の人たちも、非常に結構な話です、と。中国の経営者たちが啓蒙、啓発されて見事です、と言ってくれます。

中国の中で、こうした考えを理解するのはまだ少数かもしれないけれど、これがだんだん層になっていく。中国はその過程だということですね。

稲盛:過去、日本が軍国主義であった時、日本人は中国人に対して横暴なことをしました。中国にはその時の恨みつらみも残っています。けれどもそれは、軍閥の一部の人がそうだっただけで、日本古来の民衆はそうじゃない。それを分からせることが大事です。日本人は信頼できる民族だと。

 中国には13億人の民衆がおりますから、一朝一夕にはいかんでしょう。しかし、そういう心を持った人たちが相当、知識階級にも経営者にもいるということは、期待が持てます。

 日中問題というのは、ドラスチックには解決できないかもしれません。けれど、人間性という点からほぐしていけば、時間はかかるかもしれませんが、解決はできるでしょう。

傍白
 「盛和塾を中国でもやってほしいという要請が来ています。共産主義から部分的に資本主義に移行する過程で、中国では経営者の精神の拠り所が必要になっている。大事な時期ですから、できる限りお手伝いしたい」。17年前、稲盛さんがこうおっしゃっていたのを思い出します。盛和塾のルポを書くために、取材していた時のことでした。当時、稲盛さんが、塾生の相談に「それでいいんやないか」とうなずいたり、塾生の手を握って「まだ努力不足ですな」と叱っていた光景が目に浮かびます。今やその活動が中国にも広がっている。反日ムードが高まる中でも、なぜ、中国の指導者たちは稲盛さんの言葉に耳を傾けるのか。そこに雪解けのヒントもあるような気がします。

[日経ビジネス]

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Posted by nob : 2013年03月27日 13:41