« 憲法9条を堅持、武器を棄て国際救助隊に組編すれば、世界の賞賛を浴び国民の誇りに、、、たとえ万一攻められても戦わないという決断こそ日本国民が世界に示すべき最大の勇気。。。 | メイン | 本末転倒の極み、、、現金支給自体が生活保護の諸悪の根源。。。 »

深く考え込まずにまずは試し食い、ただし何事にも真剣に、、、最初の一歩を踏み出すことが何より大切、歩を進めるだけ自らが見えてくる。。。

■急増する「夢がみつからない…」と悩む若者たち

やりたいことが見つからない人は、海外に活路あるかもしれない。 元高校教師で、教育系NPOティーチ・フォー・ジャパンを立ち上げた松田悠介さん。20代で投資信託評価会社を起業後、多方面で活動している藤沢久美さん。人生の進路を柔軟に変えてきたおふたりに、進むべき道の見つけ方をうかがった!

夢が見つからなければ
まずは“試し食い”を

藤沢 松田さんの本を読んで共感したのは、「夢を持てない子どもたち」への言葉でした。私もよく学生から、「夢や目標が見つからない。どうすればいいのか」という質問を受けます。そのときは「いま心惹かれているものに全力投球したほうがいい」と答えていますが、松田さんも同じ意味のことをおっしゃっていた。

松田 学生は、自分が悩んでいる状態に悩んでいます。夢や目標を持っていないことに対して罪悪感があるようで、自分はダメな存在だと思い込んでしまうのです。

 でも、誰だって最初から理想の夢や目標に出会っていたわけではありません。むしろ生きる意味や目標といったものは一生見つからず、それを探し続けるプロセスが「生きる」ということかもしれません。だから悩んで苦しいのは当然なんです。

 進路に悩んでいる人は、悩んでいる自分を受け止めたうえで、そこから一歩踏み出すための行動を起こしてほしい。夢というところまでいかなくても、いま関心のあることに全力投球してみれば、自分に合っているかどうかがわかるはず。それを一生繰り返すしかないんじゃないかと。

藤沢 それでやりたいことが見つかれば万々歳だし、合わないと思えば次にいけばいいですからね。

松田 はい、まさに“試し食い”です。もしうまくいかなくても、本気で試し食いをすれば、その過程で人と出会ったり、かけがえのない経験ができる。それが人を成長させていくのだと思います。

藤沢 よくわかります。ただ、いまの日本社会は失敗に非寛容で、若い人がチャレンジしにくい環境になっている気もします。

松田 そこは日本の教育の課題です。アメリカはボーイスカウトやガールスカウトが盛んです。子どもたちはああいった活動を通して新しいことにチャレンジして、成功や失敗を繰り返しながら成長していく。日本にも、もっと場数を踏める仕組みがあるといいのですが……。

転職文化が根づけば
日本は変わる!

藤沢 具体的な問題として、日本は転職しづらいという点があると思います。本当は試し食いでたくさん転職してもいいはずなのに、日本では転職がリスクとしてとらえられているから、気軽に試し食いができない。本当はそんなことないんですけどね。

松田 僕も高校教師から教育委員会、留学を挟んで外資系コンサル、そしてNPO代表へと立場を変えてきました。はじめからいまの仕事を選べといわれたら、おそらく選んでいなかったでしょう。僕の場合、それぞれの職場で全力投球した結果、新たな問題意識が芽生えて、次のステージに移っていった。いま振り返ると、転職は必要なプロセスだったと思います。

藤沢 私もたくさん転職しましたから、松田さんのおっしゃることがよくわかります。そうやって転職するごとに気づいたり学んだりすることがあるのに、日本はいまだに「転職者は会社へのロイヤリティーが低い」と考える風潮がある。これは残念です。

松田 「せっかく新卒を採用して、社会人として使えるような人材に育てたのに転職…」というように考えてしまうんですよね。企業のほうも、そういった意識を変えないとダメですね。

藤沢 数十年前、全中国から優秀な学生100人を西側諸国に留学させる制度をつくったとき、多くの官僚は「中国に帰ってこなくなる」といって猛反対したそうです。しかし、その時の国のトップは「2割帰ってくれば十分だ。その人たちを原動力にして成長できるだろうし、成長したあかつきには海外に残った8割の学生が中国とビジネスをするはずだ」と答えたとか。

 実際、いま中国はその彼が言ったとおりの状況になっています。帰国しなかった人たちの人脈が活きているわけで、転職したい人を快く送り出せば、こんどはお客さんとして返ってくる可能性もあるのですから、むしろ企業も人をどんどん外に出すべきです。

松田 いまの日本企業は逆のことをやっています。かつて日本企業は社員を積極的にMBA留学させていましたが、帰国後にすぐに転職・独立する人が多かったので、最近は留学に行かせなくなりました。もうちょっと先を見るつもりで、将来のつながりが太いお客さんをつくるという気持ちで、人をもっと積極的に外に出してほしいですよね。

TFAの参加者の34%は
教育問題の伝道師になる

藤沢 企業の取材をしていてよく思うのですが、積極的に人を外に出す企業は、価値観の共有がしっかりできています。価値観が同じだと、外に出た後も協力できるので、ちっとも困らないというか、むしろ世界に味方が増えていくわけです。

松田 じつはティーチ・フォー・ジャパンがやろうとしていることも、教育について同じ問題意識を持つ人を社会に増やしていくことなんです。

藤沢 どういうことですか。

松田 私たちは優秀で情熱のある人材を学校に先生として2年間配置するプログラムをやっています。プログラム修了後は、教育現場に残ってもいい、他のところに転職してかまいません。

 アメリカの場合、参加するフェローのうち、最初から教育現場に残り続けるつもりの人は7%しかいませんが、2年後に実際に教育現場に残る人は66%に達しています。

藤沢 最初は腰掛けのつもりで参加したけど、実際にやってみて本気になった人が6割いるということですね。

松田 はい。その一方で、「残りの34%の人はどうなのか。結局、外に出ていくじゃないか」という批判もあります。ただ、彼らも教育が抱えている問題を現場で目の当たりにしているので、外に行っても当事者意識を持ち続けて、教育とは別の分野から教育問題について発信してくれるんです。

 たとえばプログラムの卒業生は、教育長や政治家になって教育問題に取り組んだり、ビジネスリーダーになって学校に寄付をしたりしています。教育が抱えている問題を解決するには、社会全体を巻き込むことが必要不可欠です。その意味で、同じ当事者意識を持った人を、いかに外に出していくのかということも重要なのです。

海外に行って
視野を広げよう

藤沢 試し食いの話に戻ると、日本の中は「こうやって生きるべき」という空気が強くないですか? 先日、ある大学で講義をしたら、学生から「先生はやりたいことをやれというけど、親は大企業に行けという。本当にやりたいことをやってもいいんでしょうか」と聞いてくる。これじゃ気軽に試し食いもできません。

松田 たしかに日本には、自分の進路さえも自分で決めにくい空気がありますよね。うちの親は「お金も口も出さない。好きなことを勝手にやれ」というタイプでしたから、そのあたりは気楽でしたが。

藤沢 私は海外に行くことをすすめたいですね。海外ではいろんな人がいるので、「ああ、こんな生き方もありなのか」という例にたくさん出会えます。日本の中の狭い価値観で判断する必要はないはずです。

松田 そうですね。アメリカなどは本当に多様な社会なので、試し食いの選択肢も一気に広がると思います。

 ただ、本当は日本の中にいながら多様な選択肢を選べる社会になれば理想です。前回、少し話しましたが、日本人が海外に行くだけでなく、日本に外国人の方がたくさんきてくれれば、日本でもダイバーシティが実現される。そうなれば、日本も多様な生き方が認められ、さまざまなことにチャレンジしやすい社会になるのではないかと思います。

障がいを持った子どもたちが
のびのび学べる学校を!

松田 話は変わりますが、藤沢さんご自身の夢や目標って何ですか。

藤沢 私ですか。いま関心を持っているのは障がい者の教育についてです。日本は障がいを持った子どもたちに教育の機会が十分に与えられていません。いつか、障がいを持った子どもたちがのびのびと学べるように学校をつくってみたいですね。

松田 どうして障がい者教育に問題意識を持つようになったのですか。

藤沢 私と同世代で、障がいを持った子どものいるお母さんたちと話す機会が何度かあって、みなさん真剣に「子どもより早く死ねない」と口々におっしゃるんです。そういう状況を見ると、なんとかしないといけないだろうと。

松田 たしか、有名な政治家のお子さんも発達障がいを持っていて、日本ではなくイギリスのボーディングスクール(寄宿生の学校)に通っていると聞きました。

藤沢 はい、小学生のころにイギリスに行ったそうなんですが、甘えたい年頃ですから、最初は寂しかったり、なじめなかったりして。それで、その政治家の方が「日本に帰ってくるか」と聞いたら、お子さんは「日本には居場所がないから、ここで頑張る」と答えたそうです。その話を聞いて、泣けちゃって。

 子どもが自分の居場所がないと感じるような国にしたのは、私たち大人の責任だとおもうんです。そこは何としても変えていかないといけないですよね。

障がい者は“ハンディキャップ”ではなく
才能を与えられた“ギフテッド(Gifted)”

藤沢 障がい者教育の問題は、社会の多様性とも深く関わってきます。日本だと障がい者を特別なものだとみなして、普通の教育と隔離している。これはどう思われますか。

松田 日本は「ひまわり学級」とか、それらしい名前をつけていますが、実態は完全隔離です。完全隔離は障がいを助長する面があるので、個人的には賛成できません。子どもは環境適応力が高いので、たとえば発達障害の子どもばかりのクラスだと、その環境に順応してしまうんです。

藤沢 アメリカだと、どうですか?

松田 アメリカではインクルージョン教育といって、なるべくみんな一緒に教育を受けさせる流れになっています。すべての授業を一緒に受けることはできないかもしれませんが、一緒にできる科目は一緒にやる。基本的には障がいを持った子どももそうでない子どもも区別していません。

 一緒に授業をやると、多動性障害の子どもが授業中に立ち歩いてしまうこともあります。でも、先生はそれを見て怒らずに、「あら、ありがとう。プリント配ってくれるのね」といってプリントを渡したりする。そうやって子どもに役割を与えて承認することで、子どもたちは承認欲求が満たされて、多動症状が落ち着いていくというケースも報告されています。

藤沢 つまり障がいを持った子どもも一つの個性として社会が認めるということですね。

松田 最近、アメリカでは障がいを持った人のことを「ハンディキャップ」ではなく、「ギフテッド(Gifted)」と呼ぶんですよ。昔はギフテッドというとエリートのことでしたが、いまは障がいも天から与えられた才能の一つと見なしているんですよね。

藤沢 その考え方が多様性のある社会を支えているのでしょうね。日本もぜひ多様性を受け止める社会になってほしいと思います。それが本当の「グローバル人材」が育つ社会ではないでしょうか。

藤沢久美(ふじさわ・くみ)
国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。99年同社を世界的格付け会社に売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年、代表に就任。03年社会起業家フォーラム設立、副代表。07年ダボス会議を主宰する世界経済フォーラムより「ヤング・グローバル・リーダー」に選出。法政大学大学院客員教授、情報通信審議会委員など公職も多数兼務。NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」のキャスターを3年間務め、その間、全国の中小企業やベンチャー企業の取材を行ってきた。同時に、様々なテレビ・ラジオ・雑誌等を通じて、これまでに1000社を超える全国各地の全国の元気な企業の経営者のインタビューと現場の取材を行い、各種メディアや講演を通じて発信している。

松田悠介(まつだ・ゆうすけ)
全米で就職ランキング第1位になったティーチ・フォー・アメリカ(TFA)の日本版「ティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)」
創設代表者。1983年生まれ。
大学卒業後、体育科教諭として中学校に勤務。体育を英語で教えるSports Englishのカリキュラムを立案。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院修士課程(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、
外資系コンサルティングファームPricewaterhouseCoopers にて人材戦略に従事し、2010年7月に退職、現在に至る。世界経済会議Global Shapers Community メンバー。経済産業省「キャリア教育の内容の充実と普及に関する調査委員会」委員。

(取材・文 村上敬)

[DIAMOND online]

ここから続き

Posted by nob : 2013年07月23日 11:07