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まず始めそして続ける、、、自己実現への唯一の途。。。

■できない自分は「仮の姿」と信じる
偶然を必然に変える楽観的思考法

日本の公立高校を卒業すると、単身で渡米して、ハーバード大学に入学。その後、 INSEAD(欧州経営大学院)、マッキンゼー、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)と渡り歩き、現在、京都大学で日本の未来を支える若者たちにその経験を伝えている。日本・アメリカ・ヨーロッパ、本物の世界を知る日本人が明かす、国境すら越えて生きるための武器と心得とは。

キャリアは偶然でつくられる

 高校に入学した頃から、「海外で仕事をしてみたい」「英語ができれば国際的な仕事ができるかも」というぼんやりとした願望だけはありました。また、アメリカでは誰でも自由に楽しく生きられる、そんなイメージを抱いていたとも思います。

 とはいっても、クラブ活動と受験勉強に励む、ごく普通の高校生です。

 しかし、高校3年生の秋、職員室の前に掲示されていた「グルー・バンクロフト基金奨学生試験」の張り紙を偶然見つけたことが、私の人生を変えるきっかけになりました。

 それだけではありません。その後のキャリアの転換期を考えてみても、予想外の経験や出会いがチャンスとなり、30年近くヨーロッパで働き、投資銀行や国際機関で仕事をすることになりました。

 あらためて自分のキャリアを振り返ってみると、その選択は様々な”偶然“に支配されているように感じます。

 それでは、キャリアを切り開くチャンスとは、ただ黙って偶然を待ちつづけるしかないものなのでしょうか?

ハーバード、マッキンゼー、BIS、OECD
日本・アメリカ・ヨーロッパを渡り歩く

 ここで、簡単に私の自己紹介をさせてください。

 日本の公立高校を卒業した私は、日本の大学には進学せず、アメリカのハーバード大学への進学を決めました。当時のハーバード大学の学部生には、私を含めて日本人は3人。また、私以外は、2人とも帰国子女でした。

 私はというと、帰国子女ではないどころか、それが初めての海外で、飛行機にすら乗ったことがないという状況です。日常会話すらままならないなか、必死の想いで学位を取得しました。

 その後、日本で働くことを決意して帰国したのが1981年。しかし、当時は、留学経験者は最初から「中途」になってしまい、採用面接を行ってくれる会社そのものが限られていました。

 また、男女雇用機会均等法が生まれる4年も前の話です。女性だからという理由だけで仕事を与えられず、名刺すら持てない毎日。有名4年制大学を卒業した優秀な女性は、色鉛筆で資料を塗り分けていました。

「補助的な仕事ではなく、プロフェショナルとして生きていきたい」

 そう考えてINSEAD(欧州経営大学院)への進学を決めました。

 結果的には、INSEADへの入学が大きな転機となって、卒業後は、マッキンゼーのパリオフィスでコンサルタントとして働き、その後は、S.G.Warburg(ウォーバーグ銀行)で日本株のファンドマネジャーとして勤務することになりました。

 さらに、そこで得た資産運用の知識をもとに、フランスの証券リサーチ専門会社、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)と様々な国・業種で働き、いま、京都大学で教鞭を採る機会に恵まれました。

 こうしたキャリアは、初めからこの会社で働きたいと思って対策を行っていたわけではなく、人との出会い、たまたま目にしたホームページなど、実は、偶然とも言えるチャンスがきっかけとなっています(詳細は『自分の小さな「鳥カゴ」から飛び立ちなさい』に記しました)。

 では、たとえ偶然であっても、それを偶然のままで終わらせてしまう人と、自分が描いている目標を実現するための必然のチャンスに変えられる人にはある違いがあります。それは、楽観性です。

できない自分は「仮の姿」と信じる

 スタンフォード大学のクランボルツ教授の「計画性偶発的理論」をご存じでしょうか?この理論によると、人のキャリアの8割は偶然の出来事に左右されているそうです。

 ただし、良い偶然がたくさん起きている人と、そうではない人がいて、その違いは普段の行動パターンにあると語っています。そして、自分らしいキャリアをつくるための偶然に出合うためには、次の5つが必要だと言われています。

1. :好奇心(Curiosity)
2. :こだわり、持続力があること(Persistence)
3. :柔軟性(Flexibility)
4. :楽観性(Optimism)
5. :リスクを取ること(Risk Taking)

 自分自身の行動や性格を分析してみても、この5つは当てはまっていると思います。そして、この中でも、楽観的であることは非常に大切です。

 ハーバード大学への留学を決めた当時の私には、普通の高校生程度の英語力しかありませんでしたが、「とりあえず行ってみればなんとかなる」と考えて、飛び込んでしまいました。いま考えてみても、ずいぶん大胆な選択だったと思います。

 もちろん、行ってみるとそれなりの苦労はありました。とくに言葉の面では苦戦の連続です。当初は、ルームメートの話を聞きとれない、私の話もまったく通じないような状態でした。

「chocolate」は「チョコレート」、「McDonald's」は「マクドナルド」とカタカナの発音だったため、「何を言っているんだろう?」という顔をされてしまいます。日々のコミュニケーションにすら苦労する生活でした。

 新しい国や環境で仕事をする場合、日本にいるとき以上に、失敗して恥ずかしいこと、悔しい想いをすることがあります。また、楽観的なほうがいいと言ってしまうのは簡単ですが、突然、性格を変えることは難しいでしょう。

 そんなとき、私はいつもこうしています。

 できない自分は「仮の姿」だと信じること。

 元々の私の性格は、どちらかといえば、慎重で、臆病だと自分で理解しています。

 それでも、新しい環境にチャレンジしてもがいている最中も、挑戦を決意して、失敗して恥ずかしさや悔しさに押しつぶされそうになったときも、私はこの方法で、辛いと思う状態から脱け出してきました。

成功した自分をはっきりと思い描く

 夢や目標を現実化するには、「現実化するんだ」と楽観的に考えることが重要です。とにかく挑戦しなければ、夢は単なる夢のままで終わってしまうことでしょう。

 よく「ポジティブシンキング」と言いますが、私の場合、自分が夢や目標を実現した姿を想像することから始めています。

資産運用の世界から日本で教育の世界に関わりたいと考えたときも、このイメージトレーニングを実践しました。

 資産運用の世界では、長年培ってきた経験や人に伝えられる多少の実績があったものの、京都大学が募集していた「英語でグローバル人材を育成する」という仕事は、私にとって初めての経験のため、やはり不安もありました。

 その不安を打ち消すために、私は、自分が京都大学の教授となり、教壇に立っているイメージを具体的に心に描き続けたのです。

「そんなことをしても意味はない」と思われるかもしれません。たしかに、イメージトレーニングを行っていなくても採用された可能性もあります。

 しかし、とくに面接などのように、限られた時間で評価される場面を考えてみてください。不安を隠しきれない人と、自信ある振る舞いをする人、どちらが採用されるのかは明らかではないでしょうか。

 トレーニングの成果もあり、実際の面接でも、採用されて当然だとすら思って臨むことができ、採用に繋がったと信じています。

 できない自分は「仮の姿」。右も左もわからない環境で頑張り抜くためにたどり着いたこの考え方は、偶然を必然に変える楽観性を身につけるために、意識してみてはいかがでしょうか。

河合江理子(かわい・えりこ)
[京都大学国際高等教育院教授]
東京都生まれ。東京教育大学附属高等学校(現筑波大学附属高等学校)を卒業後、アメリカのハーバード大学で学位、フランスの欧州経営大学院(INSEAD)でMBA(経営学修士)を取得。その 後、マッキンゼーのパリオフィスで経営コンサルタント、イギリス・ロンドンの投資銀行S.G. Warburg(ウォーバーグ銀行)でファンド・マネジャー、フランスの証券リサーチ会社でエコノミストとして勤務したのち、ポーランドでは山一證券の合弁会社で民営化事業に携わる。
1998年より国際公務員としてスイスのBIS(国際決済銀行)、フランスのOECD(経済協力開発機構)で職員年金基金の運用を担当。OECD在籍時にはIMF(国際通貨基金)のテクニカルアドバイザーとして、フィジー共和国やソロモン諸島の中央銀行の外貨準備運用に対して助言を与えた。その後、スイスで起業し、2012年4月より現職。

[DIAMOND online]

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Posted by nob : 2013年07月30日 09:02