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もう待ったなし、、、日本政府と国民の猛省のうえに全人類の英知のすべてを注ぎ込むべき時。。。
■徹底解明 あなたとあなたの家族の生命がかかっている「原発汚染水」これが真相だ【第1部】現実問題として原発汚染水は封じ込められるのか
「状況はコントロールされている」—。安倍首相の言葉に誰もが耳を疑った。いったい福島原発はいかなる状態にあるのか。実際、どれくらい危険なのか。汚染水の実態を各方面から徹底分析する。
もう時間がない
「汚染水が漏れ出したというタンクを実際に見たのですが、メーカーは5年保証だと言っているのに、すでにタンクはサビだらけ。配管部分のパッキンも腐食し、ボルトは緩んでいました。
こんな状況で、原発構内には、阿武隈山地から一日1000tもの地下水が流れ込んでくる。これは大変な状況だと思いました」
超党派の脱原発議員の会「原発ゼロの会」のメンバーで、9月5日に福島第一原発を訪れた服部良一前衆院議員が目にしたのは、汚染水まみれといっていい、原発の過酷な現状だった。
現実問題として、毎日増え続ける汚染水を封じ込めることなど可能なのか。
それを検証するためにはそもそも、原発汚染水がどこからやってくるのかを考える必要がある。
まずは冷却水だ。福島原発の1~3号機の原子炉はいまだに発熱しており、日々400tの冷却水を循環させて冷やし続けている。
そのうち、原子炉建屋から溢れた汚染水などを件のタンクに移しているのだが、その一部の300tが漏れていたことが判明。漏れた汚染水は地下にしみこみ、排水溝などを伝って、すでに海に出た可能性が高い。いまのところ、漏れが発見されたタンクは1基だが、約1000基ある他のタンクからも漏れている危険性は十分にある。
3・11原発事故から700日にわたって事故処理にあたった様子をツイートし、約8万人ものフォロワーを持つ原発作業員「ハッピー」(ハンドル名)氏が言う。
「東電はタンクのパトロールをしていますが、汚染水をタンクに移送するための配管はチェックしていません。この配管はポリエチレン製で、熱によって伸縮するので水漏れがよく起きる。それを保護するために養生シートを巻き、さらに保温材を巻くため、目視で状況が確認できないからです。だが実際は、配管部分はいろんな箇所が壊れていて、私たち作業員が配管付近の線量を調べたら 2000ミリシーベルトを超えていました。国も東電も現場が見えていないのです」
2000ミリシーベルトといえば、1時間浴びると2週間以内に亡くなる人が出てくるという数値である。原発敷地内にはこんな場所がいくつもあるという。
「汚染水問題の深刻さと並んで、もうひとつ驚かされたのが、原発作業員の方たちの過酷な労働環境です。構内の線量はだいたい50~100マイクロシーベルトなのですが、1号機と2号機の海側をバスで通りかかっただけで 900マイクロシーベルトを超えた。これは一般の大人の年間被ばく限度に迫る線量です。被ばく量が積み重なると、熟練工は働けなくなりますので、原発を熟知した作業員はどんどん減ってしまう。この点、東電に質したのですが、『なんとかなります』とあいまいな返事でした」(服部氏)
仏「エネルギー情報調査室」の元代表で、国際原子力機関(IAEA)も調査依頼をする欧州随一の原子力研究者、マイケル・シュナイダー氏は「何百とある汚染水タンク自体が危険要因」だと警告する。
「タンクには原子炉冷却のために注入され、建屋から溢れ出た海水が入ったものが多数ある。塩分がある環境下では年間最大1・5ミリのスピードで腐食が進みます。タンクの蓋のスティールは6ミリ。壁面はたった12ミリしかない。ボルトがある継ぎ目はさらに腐食スピードが早いのです」
つまり、放射性物質と海水が混じった汚染水は、タンクを内側から腐らせ、日を追うごとにあちこちから漏れ出てくるというのだ。
もう一つ厄介なのが地下水である。先述のとおり原発構内には、一日1000tもの地下水が流れ込んでいる。
「そのうち、一日約400tの地下水が原子炉建屋に流れ込んでいると見ています。残り600tが海へ出ていきますが、そのうち300tは敷地内で汚染されていると思われます」
産業技術総合研究所・地下水研究グループ長で、政府の汚染水処理対策委員会委員の丸井敦尚氏はこう分析する。
雨も見過ごせないリスクだ。原発敷地内には、年間400万~500万tの雨が降り注ぐ。これが地下水となって川や海に流れ込む。
前出・ハッピー氏が意外なことに気づいたのは、事故から3ヵ月ほど経った梅雨の時期だったという。
「大量に雨が降ったら、原子炉建屋から汚染水が溢れ出てくるだろうと警戒していたのですが、意外なことに溢れなかった。逆に汚染水を移送しても、建屋内の水が減らない。つまり、そのころから建屋内の汚染水は地下水脈とつながり、海に流れて出ていたのです」
地中から、あるいは原発から、隣接する湾内に流れ込んだ汚染水はシルトフェンスと呼ばれる水中カーテンに囲まれた0・3km2の囲いの中に収まっている、とされる。放射性物質の濃度が高いのがこの範囲内だからだ。安倍首相が「湾内でブロックされている」と主張する根拠がここにある。
だが、前出・シュナイダー氏は、こうした主張を一蹴する。
「福島原発に隣接する湾内にある海水の半分が、毎日外洋に流出しています。これは日本の海洋学者も、東電も認めている事実。つまり、事故発生後から今まで、いったいどれだけ放射性物質が太平洋に流出したか、見当がつかないのです」
右の写真はドイツのキール海洋研究所が原発事故発生直後から、放射能が太平洋に拡散していく過程をシミュレーションしたものだ。上が事故から100日後、下が9月20日現在のシミュレーションである。いかに汚染が拡大しているか一目瞭然だろう。
汚染水は太平洋全体に拡がる一方で、局所的に「海のホットスポット」も作りだしている。
海上技術安全研究所などの研究グループは、福島第一原発の20km圏内で、海底土の放射線濃度を調査した。その結果、セシウム137の濃度が局地的に高い場所(アノマリー)が見つかったのである。
「いくつかのアノマリーが発見されましたが、場所は沿岸からの距離ではなく、海底の地形と土質に関係があることがわかった。窪み地や、海底土の粒子が細かいところです」(同研究所・小田野直光氏)
たとえ周辺の汚染度がさほど高くなくても、そのホットスポットに棲息する魚介類が高濃度で汚染されているのは確実だ。
除去する方法がない
前出の産業技術総合研究所・丸井氏によれば、現在、建屋内にたまっている汚染水は5万t。これとは別に、海に向けて原発の下をゆっくり移動している汚染された地下水が20万t以上あるという。今後、さらに高濃度の汚染水が、太平洋に流れ出るリスクを日本は抱えている。
政府は、タンクを密閉性の高い溶接式に切り替え、故障中の除染装置「アルプス(ALPS)」を早急に再稼働させようとしている。
だが、京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏はその効果を疑問視する。
「地上タンクから漏れたとされる300tの汚染水には、1リットルあたり8000万ベクレルのベータ線放出核種があると発表されました。その正体を私はストロンチウム90だと見ています。このストロンチウム90を、規制値以下の濃度にするには30ベクレル、つまり、約300万分の1にしなくてはならない。それを汚染の激しい現場で達成することはとても難しいと思います」
三重水素と呼ばれる放射性物質、トリチウムも除去する方法がない。
「トリチウムは水と同化してしまうため、アルプスでは取り除けないんです。当初の計画では、そのまま海に流すことになっていました」(ハッピー氏)
ともかく原子炉建屋に流れ込む地下水を止めようと、政府は凍土壁を作るプランをぶち上げたが、その内容は実に心もとない。
凍土壁とは、1500本ほどの凍結管を地中に埋め、地下水を土壌ごと凍らせて壁を作るというもの。だが、長さ1・5km、幅500m以上、高さ 10mという巨大な凍土壁は世界に例がない。そもそも、凍土壁は本来、地下鉄工事のときに、地下水の流入を防ぐため、一時的に何mか土を凍らせておくための技術に過ぎないからだ。
一気に凍るため、短期間での運用には適しているといわれる凍土壁だが、維持には莫大な電力が必要。廃炉までの30~40年間、使い続けるのは、技術的にもコスト的にも現実的ではない。
原子力専門家のアーニー・ガンダーセン氏も否定的だ。
「凍土壁が完成するのは2年も先。それが機能する保証もない」
実際、原子力事故担当の内閣補佐官を務めた民主党の馬淵澄夫氏は「凍土方式を一度却下した」という。
「'11年5月の時点で、検討はしました。ですが、『汚染範囲が大きい場合は実現困難』という結論に達した。そこでベントナイトと呼ばれる、鉱物が入った粘土を注入して壁を作る粘土遮水壁で防ぐことにしたのです」
だがこの粘土遮水壁の計画は実現せぬまま、中止に追い込まれてしまう。
「'11年6月にいよいよ記者発表をする段階になって『待ってくれ』と言われた。『6月28日に株主総会がある。粘土遮水壁工事のために新たに1000億円の債務が発生すると、株主総会が混乱してしまう』と東電側がストップをかけてきた。それで、計画が止まってしまった」(馬淵氏)
安全より、東電の経営が優先されたのである。最近の汚染水対策会議の報告書にも、耳を疑うようなこんな文言があったという。
「凍土方式はチャレンジング。ダメな場合は速やかに粘土遮水壁に切り替えるべきだ」
政府としても、何か対策を打ち出さないわけにはいかないのだろうが、現状の計画がいかに頼りないか分かるだろう。実際、すでに、不気味な現象が現れている。
獨協医科大学准教授の木村真三氏が言う。
「原発にほど近い、福島県双葉町の人から『震災後にいったん涸れた自宅の井戸から、またこんこんと水が湧いてきた』という話を聞いた。井戸水を検査したところ、微量ではあるがセシウムが検出されたのです。地表のセシウムが雨水などと一緒に地下水に紛れ込むことは考えにくい。汚染水が地下に染み込み逆流している可能性がある」
欧州放射線リスク委員会のクリス・バズビー博士はさらに恐ろしいシナリオを本誌に示した。
「タンクの周囲から17万ベクレルという超高濃度汚染水が検出されていますが、これは明らかにおかしい。タンク内の汚染水の濃度が急に上昇するはずがないからです。推測するに事故後の水素爆発で飛び散った燃料棒の一部が土中にあり、地下水を汚染しているのではないでしょうか。これは、言ってみれば土中に原子炉があるような状態です」
事故から2年半がたったが、福島原発事故は収束するどころか、汚染水まみれになり、事態は悪化の一途を辿っている。しかも、このような状態を廃炉まで何十年も続けていかなければいけないのだ。
最後の手段はある
前出の小出氏は苦い表情でこう語った。
「東電が海への汚染水の流入を止めようと水ガラスで遮水壁を作った影響で、原発の敷地全体の地下水位が上がり、地上のタンクの設置場所が50ʘも浮き上がったと聞いています。つまり、地下水を汲み上げれば地盤沈下が起こりますし、せき止めれば地盤が浮き上がる。福島第一原発は大変危ういバランスの上に成り立っているのです。本来、絶対にあってはならないですが、汚染水を海に流すしか方法がないというのが現実です」
まさに八方ふさがりのように思える原発汚染水問題。しかし、希望がないわけではない。専門家たちの声に耳を傾けてみよう。
東大名誉教授・井野博満氏は「空冷方式」と大型タンクの設置を推す。
「水で冷やし続ける限り、汚染水は増え続ける。どこかの段階で空冷に切り替えるべきです。そのためには、融け落ちた燃料(デブリ)の状態を全力で調べ、冷却水を減らして様子を探る必要がある。そしてデブリを取り出さず、チェルノブイリのように石棺にするのです。そのためにも今、使っている仮設のタンクではなく、石油の備蓄に使われる10万t級のタンクを強固な岩盤の上に造るべきです。このクラスのタンクだと高さがあるので敷地面積は5分の1で済みます」
産業技術総合研究所の丸井氏のもとには大胆な提案も寄せられているという。原発前にある八の字型の港湾の先端部を完全に塞ぎ、仮設の巨大プールをつくって汚染水を貯めるというアイデアだ。
「海外から寄せられたアイデアなのですが、国は真摯に向き合うべきでしょう。私は凍土壁の完成を待つ間に、地中へ薬液を注入して地下水の流れを遅くするべきだと考えています。石灰性の薬液を注入することで土を目詰まりさせるという鉱山の技術なのですが、いろんな分野のノウハウを使えば、汚染水の食い止めは不可能ではないと思います。考える人、実行する人、評価する人でチームを作って事態にのぞむべきです」
エネルギー問題に詳しい米・ラドフォード大のビル・コバリック教授は「五輪招致を奇貨とせよ」と本誌に述べた。
「海洋汚染は相当に深刻な状況。ただ、五輪開催を返上する必要はない。国際社会に向けて安全宣言をしたことで、日本政府は最善を尽くすはず。他国をリードする海洋熱エネルギーや、世界有数のソーラーシステムなどの技術を駆使して、再生可能エネルギーの開発にフォーカスすべき。世界が日本を注視しています」
原発汚染水問題は、我々や家族の生命にかかわる問題であると同時に、もはや日本だけで解決できる問題ではなくなっている。先の安全宣言を引っ込め、頭を下げてでも、世界中から原発コントロールのための、知恵と協力を集めることが唯一、残された道だろう。
[週刊現代]
Posted by nob : 2013年10月04日 13:34