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彼の真意がどこにあれども、、、脱原発への影響力に期待。。。Vol.11

■“小泉批判”は逆効果?小泉元首相の進撃は続く
田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

 小泉純一郎元首相の脱原発発言が止まらない。それどころか、ますます演説のトーンが高まっている感じだ。独りになっても郵政民営化を諦めなかった人、時が経てば声が小さくなるとは考えにくい。それに批判や反論があるほど元気になるという稀有な性格だ。政治家として“借り”を最小にしてフリーハンドを維持してきた人だから誰の手にも負えないのである。

 今のところ彼の“倍返し”を恐れてか、正面から立ちはだかる人も組織もないが、それでも放置できなくて、このところ散発的に異論反論も出てきている。

 彼に対する批判・反論は、“主張内容”と“主張資格”の2つの方向から浴びせられている。

小泉元首相が主張する
「最終処分場なき原発依存」の無責任さ

 まず主張内容については、原発ゼロは「楽観的で無責任」、「代替案を示せ」、そして「現在の経済や生活をどうする」という周知のもの。目新しいものや説得力のあるものは聞かれない。

 これらの反論は小泉氏の「最終処分場もないのに原発に依存するほうがよほど無責任」の一声で一蹴されてしまう。

 ところで先般引用した(第204回参照)湯川秀樹博士は、昭和29年に次のように警告している。

「原子力の脅威から人類が自己を守るという目的は、他のどの目的よりも上位におかれるべきではなかろうか」(『現代人の知恵』湯川秀樹自選集3)

 この年は、第五福竜丸がビキニ環礁で米国の水爆実験で被災した年だから、博士の警告には当然原子力の軍事利用も含まれているだろう。

 だが、前年暮れにアイゼンハワー米大統領が国連演説で「原子力の平和利用の促進」を呼びかけ、日本でも第五福竜丸事件とほぼ同時に初めて原子力開発予算が計上された29年度予算が成立した。だから私は、湯川警告はむしろ日本の平和利用に重きを置いた警告と理解している。

 この警告は、科学的知識に乏しい政治家などの発言ではなく、原子力の脅威を熟知する世界の第一人者の発言である。

 だがわが国は博士の警告を無視して原発を導入し、今回の原発事故に至った。こうして不幸な結果が出たからには早々に原発と決別するのは当然のなりゆきだ。

 われわれが信じてきた原発に関する4つの神話は福島原発事故によってことごとく崩壊した。①安全神話、②低コスト神話、③クリーン神話。さらに、原発に依存しなければ経済も生活も成り立たないという④原発不可欠神話である。今や日本の原発はプラス面がほとんど否定されてしまったのである。

日本の原発依存が
不適格である6つの理由

 小泉氏に対するもう1つの批判は“主張資格”に関するもの。「元首相の言うことか」、「推進派だったじゃないか」と脱原発を主張する資格がないと言わんばかりだ。それなら私も容認してきたから同罪である。

 これに対して小泉氏は「過ちを改むるにはばかることなかれ」と素直に過ちを認めている。

 原発政策については、彼だけでなく反省、後悔、責任の念を抱く政治家は少なくないだろう。元首相であればとりわけ痛切にそれを感じているはずだ。そして、福島原発事故から学び、深く反省した人が強力な脱原発の一翼として立ち上がっているのだ。

 われわれは今回の事故によって、日本の原発依存の不適格性をあらためて強く確認させられた。

 他国と比べて不適格なのは、まず有数の①地震国であること。そして、②海洋国であること。海に囲まれていることによって大津波の襲来と事故後の海洋汚染が避けられない。③人口密集国であることも、立地の困難を招き事故被害も甚大となる。将来にわたって④最終処分施設の建造が至難の業であることも国土構造の特徴だ。

 加えて社会的、政治的要因もある。⑤利益共同体の色合いが強い原子力ムラの存在。業界と学会の癒着に対する不信感は消えない。

 決定的なのは⑥チェック機能の麻痺である。福島原発事故が“人災”と言われるのは、安全規制行政と電力行政が天下りなどで長く深く癒着して厳正な規制など望み得ない関係になっていたからだ。米国をはじめ他国と比べて日本の規制の甘さは突出していたと言ってもよい。事故を経て、行政のこの体質が大きく変わったとは思えない。これは社会的不適格性のトップに挙げられる。

 このところ小泉効果か、脱原発新党や政界再編が話題になってきた。これも「それぞれの立場で頑張ればよい」との小泉流が最も望ましい。政局次元の思惑が先行すると必ず目標達成が困難になる。

 小泉氏の直接「自民党と政権に方針転換を迫る」という正攻法に期待したい。その原動力はもちろん広く強く国民世論である。

[DIAMOND online]

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Posted by nob : 2013年11月07日 07:48