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彼の真意がどこにあれども、、、脱原発への影響力に期待。。。Vol.22

■小泉元首相「原発即ゼロ」発言の波紋

小泉純一郎元首相は2013年11月12日、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、2011年3月の福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、「安倍晋三首相が決断すれば『原発ゼロ』ができる」と強調、そうした方針を決める時期についても「即ゼロがよい」と明言した。

安倍首相の決断を迫る

小泉元首相が「原発ゼロ」論を唱える背景には、高レベル放射性廃棄物(“核のゴミ”)の最終処分場がないまま原発を再稼働することへの極めて強い懸念がある。会見では、フィンランドの最終処分場「オンカロ」の視察を通じて、日本で最終処分場の建設を決定するのは困難だとの認識を持ったことを明らかにした。

小泉氏は「原発は即ゼロがよい。再稼働させれば核のゴミが増える。最終処分場が見つからないのならすぐゼロにした方がいい」と述べるとともに、「核のゴミの最終処分場のめどを付けられると思う方が、楽観的で無責任だ」と言い切った。

その上で、小泉氏は安倍首相に対して、「(原発ゼロという)望ましい方向に権力を使ってくださいと、国民がお膳立てしてくれている。結局は、首相の判断、洞察力の問題だ」「決断すればできる」と迫った。

小泉氏は10月以降、マスメディアの取材が入った講演などで2回にわたり同様の主張を繰り返してきた。10月中旬には、自らの「原発ゼロ」論を批判した読売新聞の社説への反論を同紙に寄稿した。

ただ、本格的な記者会見は11月12日が初めてで、関心は非常に高かった。日本記者クラブに集まった記者、ジャーナリストは近年では最多といわれる350人に達し、入れなかった記者が会場外にあふれたほどだった。

二極分化したメディアの反応

記者会見へのメディアの反応は二極分化した。全国紙6紙のうち、朝日、毎日、東京の3紙は小泉氏の発言を評価し、脱原発の急先鋒(せんぽう)である東京新聞は「発言通り、再稼働は非現実的」との見出しを掲げた。これに対し、読売、日経、産経3紙は小泉発言を淡々と報じるだけで、その現実性に疑問を投げかけた。テレビ各社は、小泉流の“劇場型政治”の再来といわんばかりに大きく取り上げ、原発政策の“潮目”が変わるかのごとく報じた。

政権与党の自民党の反応は、いうまでもなく過剰反応の回避だった。それは、小泉内閣時代の官房長官だった細田博之幹事長代行の「(原発をやめて)石炭、火力に依存すると、はるかに大きな負担を人類にもたらす。(小泉氏に)敬意を表するが、結論として正しくない」という発言に集約されている。目の前の経済活動や国民生活に必要なエネルギーを供給する一方で温室効果ガスの排出抑制に取り組まなければならない現実政治の観点からの批判であり、石破茂幹事長も11月16日には「党の方針が変わることはない」と言明した。

自民党は2013年7月の参議院議員選挙で「エネルギー政策をゼロベースで見直す」とする一方で、原発については原子力規制委員会が「安全」と判断すれば再稼働するとの公約を掲げ、選挙に大勝した。また、自民党が政権復帰した2012年12月の総選挙では、「脱原発」や「卒原発」を掲げた政党が軒並み惨敗した。両選挙とも原発の是非が決定的な争点となったわけではないが、政界で脱原発派に勢いがないことは確かだ。小泉氏は会見で、自民党内での脱原発への「賛否は半々」との見方を示したが、党内の脱原発派が十分な存在感を示すには至っていない。

最終処分場稼働は2040年以降という現実

小泉氏が懸念する“核のゴミ”とは、使用済み核燃料の再処理でプルトニウムなどを除去した後に残る廃液。日本国内には、総量約1万7千トンに上る使用済み核燃料が各原発の敷地内に保存されている。

政府は、2000年に高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地選定のために「原子力発電環境整備機構(NUMO)」を設立して、自治体からの公募で処分場を決めようとしてきた。2007年には高知県東洋町が応募したが、反対運動の激化で町長は辞任に追い込まれた。このため、政府は2013年内にも決定する「エネルギー基本計画」で、公募式から国が前面に出て候補地を選定する新たな方針を打ち出すとみられる。こうした方針が顕著に報道され出したのは、小泉発言以降であり、「原発即ゼロ」論が政府の方針に大きな影響を与えたのであろう。

高レベル放射性廃棄物の最終処分については、火山などのない安定した地盤の地下300メートル以上の深さに埋める「地層処分」が最も安全だというのが、国際的な共通認識になっている。

地層処分では、まず高レベル放射性廃棄物の液体をガラスで固めた「ガラス固化体」を頑丈な鉄製容器に詰めた上で30〜50年間冷却する。その上で、粘土のブロックですき間なく囲んで地中深く埋める。この方法なら10万年以上安定して処分できるとされている。海外では、小泉氏が視察したフィンランド・オルキルオト島の「オンカロ」(フィンランド語で「洞窟」「隠し場所」の意)のほか、スウェーデン・フォルスマルクで最終処分場の建設が決定している。

日本では2014年夏から、北海道幌延町で高レベル放射性廃棄物の処分技術の実証実験を行う予定だ。しかし、実際の処分場の建設地は決定していない。処分場の稼働はどんなに早くても2040年代とみられており、そのための総事業費は現段階でも3兆5千億円(国際原子力機関[IAEA]試算)と見積もられている。

波紋は小さくなれども、課題は大きく残る

小泉発言が政界やメディアに与えた波紋は時間とともに小さくなりつつある。同氏の「原発ゼロ」論に対しては、「そこまで言うなら、原発を推進したこれまでを反省して、原発停止のための具体的道筋を示す必要がある」という指摘も多い。原発停止に伴って増加した石油、天然ガス、石炭などのエネルギー費用は1日当たり約100億円であり、日本が国際収支の慢性的な赤字に転落する可能性を指摘する識者もいる。

他方、福島第一原発事故で目の当たりにした、原子力事故の怖さ、その処理の難しさは、哲学的な問題さえも含む人類全体にとっての多元的・複合的課題を提起しており、単なる政治・経済的イシューではないことも歴然とさせた。小泉発言は、そうした人間の不安や懸念を再び呼び覚ましたという意味で、重要な分岐点といえるかもしれない。波紋は小さくなれども、発言が投げかけた課題はまだまだ大きく残っている。

原野 城治 HARANO Jōji
一般財団法人ニッポンドットコム代表理事。政治ジャーナリスト。

[nippon.com]


■世界一の原発大国 米国で原発閉鎖 相次いでいる理由

 世界一の原子力大国で原発に逆風が吹き荒れている。1999年から一昨年まで稼働中の原発の閉鎖はなかったが、この1年で4カ所5基の閉鎖が決まった。

「苦渋の決断だが、いまの状況下ではやむを得ない」。今年8月下旬、米バーモント州にあるバーモントヤンキー原発の閉鎖決定に当たって、同原発を運営する電力大手エンタジー社のレオ・ドノー最高経営責任者はこんなコメントを発表した。

 同原発は1972年の運転開始で、2011年に米原子力規制委員会(NRC)から20年間の運転延長が認められたばかり。閉鎖の理由として会社は収益の厳しい見通しを挙げる。

 今年5月に運転を停止したウィスコンシン州キウォーニー原発も、11年に20年間の運転延長が認められたばかりだった。閉鎖の理由について、同原発を運営する電力会社は「純粋に経済性に基づく判断」とする。

 原発はこれまで、建設まで多大なコストがかかるが、運転を始めれば、その後の経費は他のエネルギー源に比べて安いと言われてきた。その構図が成り立たなくなっているのだ。

 最大の要因はシェールガスの普及により火力発電の燃料となる天然ガスの価格が下がっていることだ。天然ガスの価格は、08年ごろに比べて3分の1程度。原発なら認可から建設まで5〜10年はかかるが、天然ガス発電所なら数年で済む。石炭に比べて温室効果ガスの排出が少ない点も天然ガスへの追い風となっている。

 一方、老朽化した原発は維持管理に経費がかかるうえ、福島第一原発事故以降、追加の安全対策も求められる。地域によっては風力発電と比べてもコスト面での優位性を失いつつある。

 バーモントヤンキー原発が来年、運転を停止すれば、米国で稼働する原発は99基となり、大台を割る。元NRC委員でエネルギー分野のコンサルタント業、ピーター・ブラッドフォード氏は「さらにあと何基かは早期の閉鎖を迫られる原発が出てくるだろう」と予測する。

[AERA]

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Posted by nob : 2013年12月12日 16:44