« 言い得て妙。。。Vol.15 | メイン | オリンピック返上論にも賛成、、、とにもかくにも原発ストップが火急的最優先課題。。。 »

そのとおり!!!Vol.33

■世界はナショナリズムの暴走に歯止めをかけられるか
2014年、安倍首相の転換を願う

田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

 新しい年は、1914年の第一次世界大戦の開戦からちょうど100年になる。偶発したサラエボでの「一発の銃声」が世界を巻き込む大戦争に発展したことを、現代人はあらためて想起して、ナショナリズムの暴走に歯止めをかけねばならない。

 近年、多くの国の政権が、経済のグローバリズムと政治のナショナリズムを併用して国の統治をしているように見える。

 元来、この2つは相反するものであって両立させることが困難であるはずだ。

 グローバル経済は、モノ、カネ、ヒトの自由な交流によって、国境の塀を低くする。

 だが、国家、民族、宗教を優先価値とするナショナリズムは、国境の塀をどんどん高くしてしまう。

 それにもかかわらず、多くの国、特に新興国の一部では、意図的、意識的であるかはともかく、この2つをいわばセットとして活用し、国を統治している印象だ。

 これらは根本的に相矛盾するものだから、いつかは必ず破局を招くことが必至である。

 中国や韓国の現状はそれに近いように見えて心配になる。エジプト、トルコ、あるいはブラジルなどの大規模デモや暴動も、一見違うように見えるがこの矛盾が根底にあるように思われてならない。

急速なグローバル化が巻き起こす
経済格差、ナショナリズムの先鋭化

 グローバル経済は必然的に経済格差を生む。私はそう考えている。これが世界の雇用、賃金水準が平準化するまで続くとしたら、少なくとも今後2、300年間は経済格差が拡大し続けるのかもしれない。

 グローバル経済下では、権力上層部が他国のそれと連携して権益を拡大確保する。マラソンで言えば、第一グループが手厚く援護されて、第二グループが軽視されるから、その差は否応なく広がり、第一グループの背中さえ見えなくなってしまう。

 こうなると、第二グループはナショナリズムに熱狂する他に不満のはけ口がなくなるではないか。また、権力側はすすんでナショナリズムを煽り、矛先を他国に向けさせて自らの保身を企てることになる。失業者や低所得者が尖閣問題に熱中しなければ、中南海の指導者は気を休めることができないのだ。

 日本は、この轍を踏んではいけない。過剰なナショナリズムで日本を挑発する国と同じ次元で争わないことが何よりも重要である。日本は攻撃的ナショナリズムではなく、防御的ナショナリズムに徹するべきである。他国の主権侵害は絶対にしないと同時に、自国の主権侵害を断固として許さずはね返す。そんな一段格上のナショナリズムを目指そうではないか。

 安倍晋三首相の「積極的平和主義」はこんな方向を目指すものであることを願っている。

 ところが、最近の安倍首相の言動は、多くの国に誤解や疑念を生んでいる。特定秘密保護法、集団的自衛権の行使への熱意、さらには唐突な靖国参拝などが、米国をはじめヨーロッパ諸国、東南アジアまで「失望」させ、疑心暗鬼にさせている。

 さて、経済のグローバル化は、そのスピードが急速であればあるほど、格差の拡大も急激となり、またナショナリズムの先鋭化も速くなる。

 とにかく今年は拙速なTPP合意を含め、グローバル化を急がずに、ここで一息ついて遠くを見る必要もある。

 首相の6日の記者会見は、むやみに馬にムチを当てる感じではなく、首相にしては精一杯抑制されたものと受け取った。もしや、このままウルトラナショナリストのような評価が欧米でも定着したらそれこそ不本意であろう。新年は首相が転換する機会である。

[DIAMOND online]

ここから続き

Posted by nob : 2014年01月15日 17:15