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事の真偽はさておき、一連の経緯で明らかになった理研の組織としての体、煽るマスコミ、そして踊る私たち一人一人の在り様に深く失望、小保方氏と当該研究者達の今後に期待。Vol.2

■小保方氏に責任押し付け“金満体質”理研の異常な成果主義と天下りの蔓延~理研研究者証言

 STAP細胞の論文をめぐり、理化学研究所(以下、理研)の小保方晴子ユニットリーダーが9日、大阪市内で記者会見を行い、論文作成のプロセスに不正があると判断した理研の内部調査結果を承服できないことを、公の場で初めて説明した。

 テレビのキー局のほとんどが会見を中継し、専門媒体も含めてすでに多くのメディアがこの問題について報じているので、その詳細はここでは触れないが、小保方氏について「初歩的なミスとはいえ科学者として失格」「説明が稚拙」といったような批判が数多くなされ、「魔女狩り」の様相を呈しているような気がする。確かに小保方氏の説明には納得のいかない部分も多々残るが、論文作成のプロセスで落ち度があった程度なのに、「国民オール裁判官」気取りで、まだ将来のある若き研究者を断罪していいものなのか。

 まず筆者は、理研のマネジメントが杜撰であるがあるゆえに、このような問題が起き、事態が深刻化しているのだと思う。筆者の取材に対して、ある理研の研究者は「小保方氏の論文が不正かどうかを判断するのはまだ早いが、理研には不正が起きる温床がある」と指摘した。その理由は、理研が異常なほどの行き過ぎた成果主義に陥っているからだという。一例として、「研究者を全員任期付の契約制にしようとしており、常に成果を出さないと契約を切られるかもしれないとの危機感を植え付けている」そうだ。公的な補助金も得て研究している以上、一定の成果が求められるのは仕方ない面もあるが、とにかく「研究成果」を出せと圧力をかけられるという。

 しかし、驚くような研究成果は簡単に出せるものではない。長年の努力の積み重ねで「発見」は生まれる。期間を区切って生まれるものではない。イノベーションも然り。そもそも理研は「科学者の自由な楽園」と呼ばれており、科学者に自由にのびのびと研究させることで「成果」を出してきた。そして、その成果をビジネスに変えて、潤沢な資金をひねり出してきた。理研ビタミンの「わかめスープ」や、理研の発明をきっかけとして設立されたリケンが自動車部品を製造しているのもその名残だ。

 だが、なんとも皮肉なことに、科学技術バブルと呼ばれて科学分野に莫大な国の予算が付くようになり、理研の風土は短期的な視野での「成果主義」に変貌した。そして、その成果を対外的にやたらと大げさに発表したがるそうだ。

 そうした風潮を助長させているのが野依良治理事長だといい、内部では「鬼軍曹」とも呼ばれているようだ。その構図について、前出の研究者がこう解説する。

「科学技術バブルの恩恵を受けて理研には国から多額の補助金が下り、資金があり余っている。そのため、山ほど最新設備を購入し、海外出張も行きたい放題、年収が700万円ほどもあるポスドクもいるから、ポスドクを辞められない。理事長として名古屋大学から移ってきた野依氏が、その姿を見て『理研は努力もせず金満になっている、けしからん。論文を多く書いて、外部から競争的資金を取ってくるように』と指導し始めた。それにより競争が激しくなり、お金を稼ぐ研究者が偉いという風潮ができあがった」

 潤沢な補助金に加え、競争的な資金も理研がごっそりと持っていくようになった結果、地方大学などに競争的資金が回りにくくなっている。そして、理研の金満ぶりは近年さらに加速している。所管官庁である文部科学省(旧科学技術庁)が原子力関連に予算を回しづらくなった分、理研にその金が流れているという。その結果、予算消化のために何百万円もする海外製の高級家具を調度品として買うようなこともしている。

 ただ、野依理事長だけが悪いわけではない。権力欲が強いといわれる野依氏はうまく神輿に担がれている面もあるという。

「野依氏は一流の研究者だが、一流の経営者ではない。しかし、自分は一流の経営者だと思っている。そこを天下り官僚と取り巻きにうまくつけ込まれて、利用されているだけ。今、理研内ではよく『野依さんの指示だから』といったような言い方がされますが、実際には野依氏は指示をしていません」(理研関係者)

●強まる天下り官僚の支配

 こうした背景には、理研を独立行政法人化したことで、文部科学省の支配力がよりいっそう強まったことも影響している。野依氏を文科省出身の天下り官僚が操り、役所に逆らわない研究機関化した。その結果、理事がどのような根拠で選ばれているかももわからず、天下り官僚とその取り巻きたちがすべて「談合」で決めていく組織となった。

 今回のSTAP細胞論文問題でも、小保方氏は早く公式の場で説明する意向があったが、理研側がそれを止めさせたという。

 また、理研は「小保方氏は論文撤回の意向がある」と説明していたが、小保方氏はそれを会見で否定した。役人根性丸出しで、理研という組織に火の粉がかかるのを恐れて、小保方氏に撤回を勧めたのではないか。

 加えて、補助金面などでさらに優遇される「特定国立研究開発法人」化を狙ってその実績づくりのために、STAP細胞の発見を華々しく打ち上げたものの、事態が急変すると組織としての管理の問題には頬被りして、小保方氏一人に責任に押し付けようとしている。これもいかにも役人のやりそうな手口だ。

 今回の論文問題は小保方氏個人だけの問題ではない。理研の組織風土が大きく関与していると見たほうがいい。

(文=井上久男/ジャーナリスト)

[Business Journal]

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Posted by nob : 2014年04月15日 10:22