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また旅立つ君へVol.30/眼前にそびえる山に登ってみて、果てしなく広がる海原に漕ぎだしてみてこそ、初めて見えるそこにしかない美しい景色がある。。。Vol.2

■自分のために生きる勇気~人生の舵をとるために考えたいこと

「かたくなに一本道を歩まなくてもいい」
自分のために生きる道の選び方とは?
――白木夏子×安藤美冬 特別対談【後編】

勇気を持って生きる。この課題を、生き方、働き方にどう活かしてきたのか?「ブレないこと」「ひとつのことを極めること」が正しいとされる世の中は本当に正しいのか? それぞれ若くして会社を飛び出し起業した二人が語る、「蛇行のススメ」。大反響の安藤美冬×白木夏子対談、後編。(構成・田中裕子)

かっこよく意志を貫いてきた…わけではない

安藤 この本を読んでから、私は自分のために生きてきただろうか、と人生を振り返ってみたんです。その中で、「自分で決断できなかったこと」はいつまでも強烈に覚えているなあ、と気づいて。

白木 自分で決断できなかったこと?

安藤 私、大学進学も就職も、親の反対で第一希望を諦めたんです。両方とも、チケットは手の中にあったのに。本当は、上智大学の外国語学部スペイン語学科に行って字幕や翻訳の勉強がしたかったし、映画の宣伝を扱う仕事がしたかった。

白木 あ、そこは英文学科じゃなくてスペイン語学科なんですね。

安藤 好きなスペイン映画があったことと、どうせやるなら「英語」というメインストリームから外れようかなと。今と変わらず天邪鬼だったので(笑)。まあ、今思えば「映画がやりたい」なんてものすごく漠然とした思いだったのですが。

白木 でも、親の反対で道を諦めるということは、それほど執着がなかったとも言えますよね。私も高校生のときファッションの道に進みたかったのですが、それこそファッションデザイナーをしていた母に猛反対されて。「そこまで言うなら」とあっさり断念したんです。

安藤 親に反対されて挫折。まったく同じ経験ですね。

白木 けれど、結果的にそれでよかったと思っています。短大に行ったからこそ、国際協力という人生を変える出会いを得ることができましたし。実は、「自分の思惑と違う」という意味ではもうひとつ岐路があって。

安藤 なんですか?

白木 私、本当はアメリカの大学に行こうと思っていたんです。でも、ちょうどアメリカの大学を見学しているときに、件の同時多発テロが起こって。治安が不安だということで、イギリスの大学へと方向転換しました。

安藤 でも、環境問題や人権意識、エシカル意識はヨーロッパの方がずっと高いですよね。アメリカの大学、特にMBAの評価軸は卒業生の年収で、イギリスの大学は社会起業家の排出数だと聞いたことがあります。

白木 そうなんです。だから、ラッキーですよね。こういう経験もあって、「ここは譲れない」という部分以外は流されてしまっても結果オーライだと思うようになりました。ただ、起業するときはどんな反対に遭っても自分の意志を貫きました。それが私の「ここは譲れない」だったので。

安藤 今回の本のサブタイトル、「流されない心をつくる」というのは「ここは譲れない」という部分の話ですよね。コアの部分があるから、こだわらないところでは流されることができる。

白木 ええ。あらためてこう見てみると、美冬さんも私も、決してかっこよく一本道を進んできたわけではないですよね。

安藤 もう、全然です(笑)。あのとき反対を押し切らず、親の言うことを聞いてよかった! とすら思います。だから、これからも流されてしまえって。軸さえ持っていれば、状況に応じて変化すること、流されることは決して悪いことじゃない。

白木 誰の意見も聞かず、ワンマンで人生を決めていくのもひとつの強さかもしれない。けれど、私はそうなりたくはないんです。「素晴らしい意見だな」と思えばどんどん取り入れます。やじろべえみたいに、ブレても揺れても最後には真ん中に戻っていくイメージです。一見ゆらゆらと弱いようでいて、その実、強い。かたくなな心は折れてしまいますが、柔らかく鍛えた心はすごくしなやかなんです。

安藤 ああ、すごくわかります。

自分だけが経験するような不幸なことはない

白木 前回の留学話でもそうですが、美冬さんはネガティブな要素をポジティブ思考に変換することが得意ですよね。嫌なことがあったとき、どういう捉え方をしていますか? たとえば、ネット上でつらい言葉を投げかけられたときとか。

安藤 意外と、ネット上でいろいろ言われても落ち込まないんですよ。もちろん、最初の頃は見知らぬ人から悪口を言われるなんて初めての経験にびっくりして、かなり落ち込んだこともありましたけどね。……たとえば、夏子さん、初対面の人に突然「この卑怯者!」って言われて落ち込みますか?

白木 ……落ち込まないですね。まったく。不思議です。

安藤 そうですよね。何か言われて傷つくのは、身に覚えがあるからだと思うんです。自分自身が自分のことを心のどこかで「私は卑怯者だ」と感じているから、人の言葉を真に受けてしまう。

白木 自分が自信を持って「そうじゃない」と思えれば、それでいい、と。

安藤 はい。自分が自分を「卑怯者」だなんて微塵も思っていなければ、悪口を「受け取らない」という選択ができます。それに、チャンレンジし続けている仲間や尊敬する方々に会えば、すぐに嫌な気持ちが消えて、心が凪の状態に戻ることもわかってきた。だから、なるべくそういう仲間たちと一緒にいるようにしています。

白木 一緒にいる人をはじめ、自分のいる環境を整えるということはとても大切ですよね。

安藤 夏子さんは落ち込んだとき、どうされていますか?

白木 まず、「先人に学ぶ」ということを意識します。飲み込まれてしまいそうな高い波を目の前にしたら、「みんな経験していることだ」と開き直ってしまうんです。私が悩むことなんて、誰かが経験して、そして解決しているはず、と。歴史の中で自分にだけ降り掛かる問題って、なかなか起こらないですよね。

安藤 たしかに。

白木 たとえば、稲盛和夫さんの『生き方』(サンマーク出版)という本の中に、あるとき、社員が全員辞めてしまったというショッキングな事件が記されています。私だったら、もう、卒倒してしまうと思うのですが(笑)。

安藤 うーん、想像できないですね、そんな状況。

白木 あの歴史に名を残す経営者である稲盛さんですら、こんなにとんでもない波を経験している。私が抱えている問題なんてほんの小波だ、乗り越えられないはずはない、と思って……あとは頑張ります。そう開き直れるという意味でも、ノウハウや解決策があるという意味でも、やっぱり先人の存在ってすごく偉大なんです。

安藤 たいていの問題はだれかが経験して解決しているという考え方、気持ちがラクになりますね。まったくまっさらな道って、実はなかなかないのかもしれません。

ジェネラリストはスペシャリストより劣っているか?

安藤 私、仕事にまつわる「勇気」に関して、どうしても夏子さんとお話ししたいことがあるんです。

白木 なんでしょう?

安藤 前回お話ししたとおり若い方からキャリアの相談をいただくことが多いのですが、その中でも「色々と手を出してみるものの、これだ!と思うものが見つからない」「いろいろなことに興味はあるけれど、一生をかけてやりたいことが見つからない」という悩みが目立つんです。

白木 つまり、何かひとつを極めきれない、ということですね。

安藤 私自身ずっとコンプレックスを抱いてきたので、彼らの切実な悩みが痛いほどよく分かるのですが……若い人がなかなか勇気を出せない原因のひとつに、「スペシャリスト>ジェネラリスト」という風潮があるんじゃないか、と思うんです。今の日本、そういう雰囲気があるじゃないですか。ひとつのことに全力を傾けることが正しい、というような。

白木 ええ、ありますね。突き抜けていることが素晴らしい、と。

安藤 でもね、なにかひとつに、突き抜けるほどエネルギーを注ぐことができない人はたくさんいるんです。もちろん私を含めて。
いろいろなことに興味があって、手を出す。だから、それぞれちょっとだけ知識や経験がある。けれど、プロフェッショナルにはなれない―—。今、そういう人がすごく生きづらいような気がして。

白木 よくわかります。私も、国際協力の中でも雇用促進、児童労働、環境問題……と、たくさんの「やってみたい」がありました。そのせいで進むべき道が決められなくて。専門性がないことがコンプレックスになってしまうんですよね。「器用貧乏だ」と自分を責めてしまう。

安藤 今、「何者であるか」「何ができるか」というプレッシャーに、みんながさらされている時代になっていると思うんです。「やりたいことなんて変わるものだ」という雰囲気なら、もっとラクになるはずなのに。

白木 そのとおりですね。

安藤 やりたいと思ったら反射的に手を出してしまえばいいんです。堀江貴文さんなんてまさにそうですよね。舞台に出演したり、選挙に出馬したり、ロケット開発やグルメサイトの運営……こう並べてみても、すごい幅の広さです。
漫画、詩、小説、ファッションデザイン、新聞づくり、演劇、バックパック旅行――これ、ぜんぶ私が思春期の頃に「やりたい!」と思っていたことです。我ながら、よくもまあころころと夢が変わったなあと思いますが……。ところが不思議なことに、この一見ばらばらの「やりたいこと」の多くが今の仕事とつながっているんですよね。

白木 たとえば、どんなことですか?

安藤 漫画や小説は、出版社に入社して。ファッションデザインは、カバンやステーショナリーなどの商品企画を通じて。新聞づくりは連載や書籍執筆を通じて。そして、今年はとある企業さんから依頼を受けて初の海外取材も敢行する予定ですが、「新聞づくり」と「バックパック旅行」がつながったんです。
最近では、とある劇団の作家さんからお声がけいただいて、ひょっとすると脚本の原案をやらせていただくかもしれないんですよ。

白木 それはすごいですね! でも、キャリア、ひいては人生ってそういうものですよね。たとえ一貫性ない選択のように見えても、やりたいことはやってみて、一歩を踏み出し続ける。そのプロセスを重ね続けていけば、必然的に道が拓けていく。私も今、まさにそういう人生を歩んでいます。

安藤 そうなんです。忘れたころにつながるんですよね。

白木 もちろん、「これで一生やっていこう」と思えることに出会えることにも、とても大きな価値があります。自分の本当にやりたいことを見つけることは、それだけで素晴らしいこと。ただ、「これだ」と決めたらその道に邁進すればいいし、見つからないときはいろいろやってみればいい。どちらかが正解ではない、ということですね。ただ、人生すべてが、今の仕事につながっているということはどちらにしろ同じことですね。

プロフィールは一生更新しつづけるもの

安藤 人生すべてが今につながる——ジョブズの言うところの「コネクティング・ドット」。プロセスの点をつないで線を描くイメージですね。
私、ドットをつなぐことを可視化する意味でも、プロフィールがとても大切だと思っているんです。

白木 プロフィールというと……たとえばTwitterに記載するような?

安藤 そうです。私、プロフィールは、一生かけて更新していくものだと思っていて。

白木 プロフィールを更新?どういうことですか?

安藤 自分の紹介であり、看板というべき存在だから、「プロフィールは一生未完成なものだ」と思うんです。某テーマパークと同じです(笑)。

白木 Never be completed.『永遠に未完成』ですね。

安藤 つまり、興味が変わったり、小さな成功体験を積んだり、時代が変化するごとに更新していくもの。大きい功績や賞じゃなくてもいいんです。たとえば、小さな成功体験を積んだら「あ、プロフィールが変わったな」。新しい興味が生まれたら、「あ、この分野がプロフィールに加わったな」、と。

白木 いいですね、「プロフィール更新論」。私もこれからどんどん更新していきたいな。今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました。

安藤 こちらこそ。大好きな白木さんとまたこうして対談をご一緒できて、私自身も大きな勇気をいただきました。本日は、ありがとうございました!

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Posted by nob : 2014年04月15日 08:15