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そうなればいいけれど。。。

■小泉進次郎ついに起つ! 自民党の先輩方、もう愛想がつきました 旗印は「増税廃止」「原発再稼働中止」
真冬の大決戦!「12・14総選挙」を読み切る

79・86%。前回'12年の総選挙における、小泉進次郎内閣府・復興政務官の得票率だ。安倍晋三総理の得票率78・16%をも上回る圧倒的な数字だが、12月14日に控える総選挙では、2人の得票率の差はさらに開くかもしれない。

「このままでは、地方選も総選挙も乗り切れない。この際、サプライズで若手を大抜擢すべきです」

今年の夏、内閣改造を目前に、人事に頭を悩ます安倍総理へ直言したのは、菅義偉官房長官だった。彼は総選挙を仕切る立場の幹事長候補として、若手有力株の名前を挙げたという。すなわち、政治資金スキャンダルで失脚の瀬戸際に追い詰められた小渕優子前経産相、そして進次郎氏だ。

最終的に幹事長の座には谷垣禎一氏が収まったが、夏に永田町の一部でまことしやかに囁かれた「進次郎幹事長」の噂は、これが発端だった。そしてこの噂は、秋以降の政局の中で伏流し続ける「進次郎待望論」の呼び水となった。

今回の解散総選挙をきっかけとして、自民党が描いていた近未来のロードマップは、どんどん早回しになっている。

「2020年の東京五輪が終わるまでに、進次郎氏は重要閣僚や官房長官の要職に就き存在感を増していく。そして2020年代半ば、40代にさしかかった暁に総理の座を狙う。その時には、第一次安倍政権の時のように、自民党内で世代交代が起こるでしょう。

しかしこの青写真は、安倍総理の長期政権が危うくなったことで崩れました。このまま進次郎氏が自民党にいるなら、構想よりも早く、東京五輪までには党の中心になっている可能性が高い」(全国紙政治部デスク)

永田町関係者や政治記者が口を揃えて「政界に大人物がいなくなった」と嘆く今、すでに進次郎氏は、自民党という枠を取り払って見渡しても、一頭地を抜いた存在である。

しかも、与党自民党に身を置きながら、彼の考え方は至るところで安倍総理ら自民党本流と相容れない。少なくとも経済政策、そして原発問題では明確に政権へ異議を唱えている。総選挙後の早い段階で、党内の重鎮たちにも対抗しうる存在として、進次郎氏が脚光を浴びることは間違いない。

遠からず、そして本人の好むと好まざるとにかかわらず、進次郎氏は自民党主流派と決裂し「起つ」ことになる。彼の父が「自民党をぶっ壊す!」と叫んでひとり拳を振り上げ、やがて大きなうねりを生んだように。

世代交代が一気に進む

いくら人前でいい顔をしていても、そこは政治家、裏の顔があるだろう—そう勘繰る向きも少なくない。しかし、オフレコと断ったうえで自民党幹部たちに彼の評判を尋ねても、返ってくるのは不思議なほど、好意的な答えばかりである。

「進次郎は偉いですよ。誰に対しても腰は低いし、少なくとも、私の知っている限りじゃ表裏もない。復興庁の仕事があるとはいえ、あれだけ被災地に通っている議員は野党にもいません。オヤジさんはあまり好きじゃないという人とか、野党の人でも、彼を悪く言う議員は見たことないよね」(自民党閣僚経験者)

自民党内で静かに渦巻いていた安倍総理への不満は、今回の解散総選挙で一気に具体的な形をとり、そう遠くない将来「安倍降ろし」の奔流に変わるだろう。だが、仮に安倍総理の退陣が時間の問題なのだとしたら、その後を誰かが引き継がねばならない。

麻生太郎財務相や谷垣氏は、ともに総裁経験者のうえ、年齢的にもそれぞれ74歳、69歳と若くはない。もし総理のお鉢が回ってきたとしても長期政権に執心することはなく、「中継ぎ」になることを本人たちも織り込み済みだ。

では、前回の総裁選で安倍総理と死闘を繰り広げ、総理総裁の座まであと一歩に迫った、石破茂地方創生相はどうだろうか。おそらく安倍総理は、積年のライバルであり、年齢も3つしか違わない石破氏を自分の道連れにする覚悟でいる。

「安倍総理がいなくなるときは、石破さんもいなくなる。総理が、内閣改造の時にまで自分に公然と刃向かい続けた石破さんに後を託すなんて、ちょっとありえない」(自民党中堅議員)

つまり、現在自民党の枢要にいて、安倍総理の後釜を虎視眈々と狙っている政治家たちは、みな遅かれ早かれ姿を消すのである。

彼らの次の世代である50代、40代には、目ぼしい人材が育っていない。「若手最有力」と評される57歳の岸田文雄外相でさえ、「実力も哲学もないイエスマン」(前出・閣僚経験者)と陰で囁かれる程度。

となれば、まだ33歳とはいえ、勢い進次郎氏に注目が集まることになる。「次の次の総理」「初の女性総理」と言われていた40歳の小渕氏に黄信号が灯った今、行き場を失った党内の期待が、一気に進次郎氏へ流れ込んだとしても何らおかしくはない。

一方で進次郎氏自身は、解散総選挙を発端とする自民党内の混乱、そして「オレが一番偉いんだ」というホンネを丸出しにした安倍総理はじめ重鎮たちの醜態を、少し離れた場所から冷ややかに眺めている。

とりわけ、国民の声に耳をふさいで、自らの延命のために解散総選挙に踏み切り、さらには「景気が回復しようがしまいが、1年半後には絶対に消費税を上げる」とまで言い切った安倍総理に対しては、もはや完全に愛想をつかしていると言っても過言ではないだろう。進次郎氏にとって、そうした傲慢な政治家の姿は、理想から最も遠く離れたものだからだ。

今回の総選挙で、安倍総理が消費税増税先送りについて「国民の信を問いたい」と繰り返し、最大の争点に位置づけようとしていることは周知の通り。進次郎氏は断言こそしていないものの、消費税増税についてはもとより反対派だった。

昨年の参院選の際、進次郎氏に密着取材したノンフィクションライターの常井健一氏が言う。

「自民党が野党だった'12年8月に、進次郎氏は若手の衆院議員11人の署名を集め、消費税増税反対、三党合意破棄の声明文を作って当時の谷垣総裁に手渡しに行ったことがあります。

加えて、今でも被災地や地方を毎週のように視察に回っている進次郎氏は、アベノミクスの効果が地方まで波及していないことを身に染みて知っている」

具体的には口に出さずとも、彼が増税に強い違和感を抱いているのは確かだ。

進次郎氏が「地方」にこだわりを持っていることは、彼の地方出張の多さを見れば分かる。安倍内閣発足の際、内閣府・復興政務官に就任したのも、本人のたっての希望だった。東日本大震災直後から自主的に被災地へ入り、その実情を目の当たりにしていたためである。

安倍総理への静かな怒り

「東北の方は明るい表情を見せていらっしゃいますが、本音は違うでしょう。愛する人の消息が分からない。愛する人が、未だに仮設住宅に住んでいる。こんな状況でいいんですか。

(安倍総理は『被災地の復興は進んでいる』と言ったが)私には、そんなこと言えない」

これは今年3月11日、宮城県女川町で実施された追悼式典の際、進次郎氏が述べた言葉だ。ポーカーフェイスで知られる進次郎氏だが、この日ばかりは珍しく、怒りを露にしていた。

アベノミクスのもたらす「雫」は、グラスタワーの最上段にいる首都圏の大企業と富裕層がすべて受け止め、その下にいる地方の人々、中小企業にはまったく流れてこない。総理が言う、「金持ちが儲かれば庶民も儲かる」「東京が儲かれば地方も儲かる」という話が机上の空論に過ぎないのは、わざわざGDP速報値など見るまでもなく、進次郎氏には自明のことだった。

さらに、進次郎氏が安倍総理の意見とは明確に一線を引いている政策がある。原発再稼働である。

避難計画の整備を求める地元住民の懸念をほとんど無視するようにして、安倍政権は今月7日、川内原発再稼働に関する鹿児島県の同意を取り付けた。与党に身を置く進次郎氏にとって、自民党の原子力政策に面と向かって異を唱えることは難しい。しかし、地方軽視の極みともいえる安倍総理のやり方には、強い憤りを覚えているはずだ。

「原発については、今年2月の東京都知事選で小泉純一郎氏が細川護熙元総理の支援に動いた時には『父は父ですから』と言及を避けていましたが、ここ最近は明確に反対しています。

今年8月には、福島県で講演した際に『もう一度事故を起こしたらおしまいだ』、『本当にあの事故から学んでいるのか』とまで言っている。純一郎氏には折に触れて教えを乞うているそうですから、父の話を聞いているうちに、意見が固まってきたのでしょう」(前出・全国紙政治部デスク)

安倍総理は内閣改造以降、まるで取ってつけたかのように「地方創生」「アベノミクスを地方にも」と言い始めた。しかし、それがもはや手遅れだからこそ、総理は解散総選挙にまで追いつめられたのである。

経済も原発も、問題の根っこから目をそらし続け、ただ政権の延命のために国民をもてあそぶ。そんなことで、上手くいくはずがないでしょう—進次郎氏は、国会やテレビで威圧的な態度で自分の正しさを訴える安倍総理を横目に、11月に入って解散風が強まった後も、地方を歩き続けた。

父の「弱点」を克服する

安倍総理も進次郎氏も、世襲の政治家だ。自民党の大幹部の次男坊で、「家業」を継ぐはずだった兄が他の仕事を志したために、急遽政治家をやることになったというところもそっくりである。さらに言えば、安倍総理の弟は養子に出され、進次郎氏の弟は離婚して家を出た母に引き取られて、別々に育ってきた。

しかし、二人の政治家人生で大きく異なるのが、地元支持者との関係だ。安倍総理を古くから知る、東京の支持者がこう話す。

「安倍さんには真の意味での『地元』がない。選挙基盤こそ山口ですが、ほとんど山口のことは知りません。政権に返り咲いた後、母校の成蹊学園の同窓会にゲストとして呼ばれた安倍さんは、『僕には山口の友達はいないし、故郷と呼べる場所も持っていない。強いて言えば、この成蹊が故郷です』と話していました」

進次郎氏は、生まれ育った横須賀を今も地盤にしている。地元の人々は、いわば彼の全てを知っている。だが、幼少から彼と顔を合わせていたはずの近隣住民、同級生に取材しても、進次郎氏の過去やスキャンダル、噂話については誰一人口にしない。逓信大臣を務めた曾祖父・又次郎の時代から小泉家が綿々と続けてきた情報統制があるにせよ、彼の直接の知人たちは「本当にいいヤツなんです」と口を揃えるのだ。

地元を知らない安倍総理と、地元の有権者の中で育った進次郎氏。株価と支持率ばかり気にして、庶民と地方を置き去りにしている安倍政権に、進次郎氏が不信を抱くのはむしろ当然のことだろう。

先述の通り、現在でも自民党内外の「進次郎待望論」は根強いが、彼にもまだ足りないところはある。

「男前で口が達者で、知恵者なのは分かった。それじゃあ、これから何ができるのか。小渕氏の件もあり、世襲議員に向けられる目も厳しい。政務官就任1年間の『成果』を示せない限り、聴衆は納得しません。2年前とは異なり、与党の立場で衆院選に臨む彼にとって、今回は防衛戦なのです。

進次郎氏自身も自覚していると思いますが、今後彼に最も必要なのは、安倍総理にとっての菅官房長官のような、汚れ役を買って出てくれる腹心でしょう。月に1度、親しい議員と開いている『落語の会』のメンバーや、党青年局長時代の彼を支えた若手議員の中に、その候補がいるかもしれません」(前出・常井氏)

父・純一郎氏は、政界の大物には珍しい一匹狼で知られた。一方で、ある意味ではそれが弱点でもあった。

小泉政権時代に思春期を過ごした進次郎氏は、父親の良いところと悪いところの両方を、よく観察している。政策と信条を軸として、今度こそ本当に自民党を「壊す」ことができ、野党をも巻き込んだ政界再編の軸になれる唯一の存在。それが進次郎氏なのである。

少なくとも、安倍総理の迷走ぶりに比べれば、消費税や原発に関する地に足のついた進次郎氏の考え方には、賛同する議員も国民も多いだろう。何も、自民党という古く狭苦しい枠に収まり続ける必要はない。

進次郎氏が起ち、閉塞しきった政界に新たな風が吹く—その日はもう間もなくやって来る。

[現代ビジネス]

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Posted by nob : 2014年12月03日 22:53