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手段は人それぞれ、、、最期まで自力で歩けてこそのすへての人々の幸福。。。

■「認知症1000万人時代」に備えよ!最後まで自分の足で歩く10の鉄則

結局、これができるかどうかが分かれ目です

高さ40cmほどの椅子に腰かけ、手を使わずに片足だけで立ち上がれるだろうか。できなかったら、近い将来、車椅子が必要になるかもしれない。そうなれば、認知症のリスクも急上昇。今から対策を。

95歳で杖も一切必要なし

「私の生活習慣なんて、メチャクチャ。これ以上ないくらい不規則なんですよ。夜2時まで起きていたり、朝ごはんがお昼になったり……ってね。

2週間に1度、仲間で集まって麻雀をやっています。それが朝10時から夜中の0時になっちゃうこともあってねぇ。一緒に住んでいる娘から『もう少し早く帰ってきて』と言われるんだけど、そうはいきません(笑)。

それから、気功、デッサン、絵手紙、ワインの勉強会も、それぞれ月に1度、仲間と一緒にやっています。スポーツ観戦も大好き。阪神ファンですから野球も必ず観ますし、サッカー、ラグビー、テニス……なんでも観ますよ。ルールも全部知っていることは、自慢できるわね。

もう、毎日忙しくって死んでる暇なんてないわ、っていつも言っているんです(笑)。1日38時間、1ヵ月が50日欲しいくらい。長生きするためには、早寝早起きで三食きちんと食べないと、なんて言うでしょう。私の場合、それにはまったく当てはまらないですね」

こう話すのは、滋賀県大津市に住む伊東綾子さん。今年で95歳になるというのだが、背筋はシャンと伸び、早口でてきぱきと話す姿は、実年齢より20歳は若く見える。

「昔よりは体力は衰えてきましたけれど、杖なんて一切使いません。元気で長生きする秘訣?みんなに聞かれますけどね、気をつけていろいろとやっているわけではないんですよ。でも、ちゃんと自分の足で歩いていることがいいんでしょうねぇ」

平均寿命が延びているとはいえ、伊東さんのような「スーパーおばあちゃん」はごく一握り。現実は深刻だ。

いま、認知症の患者が急増している。厚労省の発表によれば、'12年の時点で65歳以上の認知症患者は推計462万人。「認知症予備軍」と言われる軽度認知障害を含めると800万人を超えている。このままいけば、10年後には1000万人を超えるとみられており、「認知症1000万人時代」が間もなく到来するのだ。

たとえ長生きできたとしても、ボケてしまっては元も子もない。だが、自分の足で歩き続けることができれば、死ぬまでボケずに人生を全うできる可能性は広がる。じつは、歩くことこそが認知症の予防につながっているのだ。認知症専門医で、おくむらクリニック院長の奥村歩医師が言う。

「そもそも、人間の脳が発達して頭が良くなったのは、二足歩行によるところが大きいと言われています。認知機能に重要な前頭葉の働きは、歩くことと深く関係している。逆に言えば、自力で歩けなくなると、前頭葉の働きが著しく低下するということです。馬は歩けなくなると死んでしまいますが、人間も寝たきりになるとボケてしまうので、人間的な生活が送れなくなる。それくらい、自分の足で歩くことは大切なのです」

今回本誌は、90歳を過ぎて、ボケることなく杖も車椅子も使わずに生活している全国の高齢者たちを取材した。すると、ある「共通点」が浮かび上がってきた。彼らの生活習慣から、「最後まで自分の足で歩くための10の鉄則」を探っていこう。

筋肉が1週間で20%低下

冒頭の伊東さんの場合、〈1〉毎日のように外出する趣味を持っていることが、一つの大きなポイントとなる。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授の白澤卓二医師が解説する。

「何事にも好奇心を持ち、趣味が多い人は、高齢になっても元気な方が多いんです。日常生活の活動と肉体機能には関連性があるので、とくに人に会ったり、外に出かける趣味は、最後まで自分の足で歩くためにはいい。健康な人でも、1日中じっとしていると、下肢の筋肉が1週間で20%、3週目には60%も低下するというデータがあります。さらには、体中の関節がスムーズに動かなくなり、歩くことができなくなっていくのです」

取材した日、伊東さんは身に着けた青い洋服に合わせて、ブルーがかった銀色のマニキュアを塗っていた。

「出かけるときはもちろんお化粧もします。赤い口紅をひいてね。マニキュアは洋服や指輪の色なんかに合わせて、変えていますよ。麻雀をするときにも爪は目立つでしょう。この歳になっても女ですから(笑)」

女性であれ男性であれ、身なりに気を遣うことで、人に会うのも楽しみになり、行動範囲は広くなる。〈2〉おしゃれをすることで、自然と活動量は増えていくのだ。

「自分で洋服を選び、女性ならお化粧をすることで、気持ちも若々しく保てます。身なりに気を遣わなくなると、人に会うのもおっくうになり、外出も少なくなっていく。おしゃれをして社会性を保つことが、認知機能を維持し生活の質を高めることに役立ちます」(前出・白澤医師)

転ぶのを防ぐために

90歳を過ぎても自分の足で歩ける元気な高齢者たちは、毎日の生活の中で自然と体を動かす習慣を持っていた。たとえば、茨城県水戸市に住む黒川幸二さん(仮名)は、90歳になった今も、自宅の2階に寝室があるという。

「転んだら危ないので、娘に『1階で寝てよ』と言われるんですが、もう40年以上の習慣ですし、変えられません。昔に比べたら時間がかかりますけど、上がれないわけではありませんからね」

紺色のジャケットを羽織り、取材現場に颯爽と現れた黒川さんだったが、背筋も伸び、〈3〉歩くのが速いことに驚いた。それを伝えると、こんな答えが返ってきた。

「私は昔から車を運転しないんです。自宅から最寄りの駅が遠くて、出かけるときは徒歩で片道20分はかかりますし、近場であればどこへ行くのも歩いていきます。それに、せっかちな性格なので速足なのかな」

NTT東日本関東病院の整形外科主任医長の大江隆史医師は、この「速足」がポイントだと話す。

「米国で発表された研究ですが、65歳以上の男女を対象に歩行速度と寿命の相関関係を調べたところ、速く歩く人ほど5年生存率、10年生存率が高く、元気で長生きできるということがわかったのです」

死ぬまで自分の足で歩き続けるには、足腰の筋力を維持することがもっとも重要になるが、速く歩けるということは、筋力が衰えていないということ。自分で歩く速度を測るのは難しいが、それに代わるこんなチェック方法がある。「2ステップテスト」というものだ。

まず、できるだけ大股で2歩歩き、距離を測る。その値を身長で割ったものが「1・3を下回るようなら要注意」(大江医師)。たとえば身長160cmの人なら、2歩の距離が208cm未満なら、筋力が低下していると言える。

前出の伊東さんは「何もやってない」と言いながらも、話を聞いていると、じつは毎日、気功を続けているということがわかった。

「15年ほど前からやっているかしら。朝に20分、夜に20分、講習会で先生に習った気功をしていますが、気持ちいいんですよ。たしかに、これは私の健康法ね」

東京都調布市に住む松原洋二郎さん(89歳・仮名)は、仕事を辞めてから30年近く、毎朝のラジオ体操を欠かさない。

「朝は6時に起きて、ラジオ体操をして目を覚まします。気候がよくなってきたから、最近は外でやりますよ。旅行先でも欠かさないので、ラジオはどこにでも持っていくんです」

こうした〈4〉ゆったりした運動を続ける習慣は、中高年にとって転倒を予防するためにお勧めだ。

「車椅子や杖に頼らずにいるには、まず、転ばないことが大切です。高齢になるほど筋力の衰えと共にバランス感覚が失われるので、転倒の危険性が高くなります。気功やラジオ体操、太極拳といった体全体を使ったゆったりした運動も高齢者では効果があるでしょう」(桜美林大学大学院老年学研究科教授・新野直明医師)

転ばないために、体操のほかに簡単に始められる習慣がある。今回話を聞いた一人、東京都杉並区に住む笠井正美さん(91歳・仮名)の「こだわり」がそれだ。

「私は、出かけるときは〈5〉いつもスニーカーを履くんです。だって、歩きやすいでしょう。とくに運動はしていませんが、息子夫婦と孫夫婦、保育園に通うひ孫と暮らしていて、食事作りは私の仕事。ほぼ毎日、6人分の食材を買いにスーパーに行きますが、いつもスニーカーで歩いて行っていますよ」

この日も、春らしい花柄のシャツに細身のズボンをはき、足元は白いスニーカー。ショートカットの白髪にはパーマがかかっており、ピンク色の口紅と頬紅をつけた顔は、とても90代には見えない。

前出の新野医師が言う。

「転倒防止のために、スニーカーなどかかとが入る靴は非常にいい。サンダルや草履などは、脱げやすく転びやすいですし、脚を上げずに歩く癖がつくので、筋力も弱まって転倒しやすくなってしまいます。家の中でスリッパを履くのも、高齢者の方にはお勧めしません」

痩せすぎはよくない

食事については、これまでの「常識」と反対のことがわかってきた。まず、高齢になったら「粗食はNG」。歳をとったら消費カロリーが減るので、昔ながらの粗食がいいと思われがちだが、そうではない。取材したお年寄りたちには、〈6〉肉をよく食べる人が多かった。

「筋肉量を維持するためには、たんぱく質を継続的に摂取しなければいけません。また、体を支えている骨は、半分がカルシウム、半分がたんぱく質でできています。メタボを気にして肉は控えるという方が多いですが、高齢の方が粗食をすると、筋肉や骨を作るたんぱく質が不足してしまうのです」(前出・大江医師)

では、実際にはどれほどの量を摂らなければならないのか。厚労省が提示しているたんぱく質の食事摂取基準の推奨量('15年)は、20代でも70代でも変わらず、男性で一日60g、女性は50gが必要とされている。

「たとえば赤身の牛肉の場合、たんぱく質の含有量は20%程度なので、60gのたんぱく質を摂ろうと思ったら、300gのステーキを食べる必要があります。こ れほどの肉を食べるのは難しいですが、たとえば豆腐は一丁20gほど。魚のたんぱく質含有量は15%程度なので、組み合わせて摂取するようにしましょう」 (大江医師)

前出の黒川さんは、60歳で奥さんに先立たれてからずっと一人暮らしをしているというが、毎日自炊をしており、「手の込んだ料理はしませんが、魚と肉を毎日交互に食べています」と話す。

また、あまりに太っていたら腰や膝に負担がかかってしまうが、自分の足で歩き続けるためには、高齢になったら少し太めくらいがいい。とくに、〈7〉60代以降は、痩せすぎないことが重要だ。

「肥満度を示すBMI(体重〈kg〉÷身長〈m〉÷身長〈m〉)の値が19未満の人は、骨粗鬆症になりやすいことがわかっています。そうなると、骨折して自分 の足で歩けなくなります。太りすぎはいけませんが、BMI25以下であれば、体重を減らさないほうがいいでしょう」(前出・大江医師)

食品では肉のほかに、牛乳やヨーグルトなどの〈8〉乳製品を積極的に摂ることもいい。前出の伊東さんは、毎朝フルーツに牛乳をかけて食べており、松原さんはヨーグルトを欠かさないという。前出の白澤医師が言う。

「私が以前所属していた東京都老人総合研究所の調査では、乳製品を習慣的に摂る人は、摂らない人に比べて寝たきりなどの介護状態になりにくいという結果が出て います。良質のたんぱく質や骨を作るカルシウムなどを多く含み、最後まで自分の足で歩くためにはパーフェクトな栄養食品です」

楽しみながら腹筋強化

埼玉県川越市に住む野上和夫さん(90歳・仮名)は、60代から市民農園の
趣味を始めた。

「昔から趣味がなくて、仕事を辞めてから暇を持て余していたんです。娘から勧められて始めたんですが、だんだん面白くなってきた。枝豆やトマトから始めて、大根、白菜、と徐々に種類が増えていった。毎日欠かさず畑仕事をしていますね。このおかげか、脚も丈夫だし食欲もある。畑仲間と、たまに青空の下で飲むビー ルも最高ですよ」

60代から始めた趣味が、野上さんの健康にいい影響を与えている。それは、歩くための筋力を保つということだけではない。〈9〉毎日、日光に当たるということが秘訣だ。

「骨粗鬆症を防いで最後まで自力で歩くには、紫外線が重要な役割を持っています。骨の生成には、カルシウムだけでなく、カルシウムを体に取り込むためのビタミ ンDが不可欠。干しシイタケなどにも含まれますが、皮膚が紫外線に当たることで、人間はビタミンDを体内で生成できる。紫外線は悪とされていますが、日光に当たることは大切なのです」(前出・大江医師)

国立環境研究所が行った調査によれば、必要なビタミンDを生成するには、7月の昼間だと6分、12月の昼間だと41分の日光を毎日浴びないといけない(関東圏・つくばでのデータ)。もちろん日焼け止めはつけない状態で、だ。食事やサプリで摂取するのも手だが、毎日30分以上の畑仕事をしている野上さんは、自然に必要なビタミンDが生成されているようだ。

最後まで自分の足で歩くためには、こんな意外な要素もある。昭和大学藤が丘病院副院長の佐々木春明医師が話す。「男性ホルモンのテストステロンに、筋肉や骨の老化を防ぐ効 果があることがわかってきています。自分の足で歩き続けるためには、男性ホルモンの低下を防ぐことが重要です。そのためには、まずストレスを溜めない生活を送ること。ストレスが脳に作用して、男性ホルモンの分泌を妨げてしまうのです」

千葉県流山市の村本泰三さん(89歳・仮名)は、趣味のカラオケでいつもストレスを発散している。

「カラオケボックスに行くことも多いけど、月に1度はレッスンを受けに行っている。歌うのは、やっぱり演歌だね。女性の先生に褒めてもらうために、みんな必死で歌うんだよ(笑)。気持ちもいいし、こんな安上がりな楽しみはないでしょう」

ちなみにカラオケには、こんな利点もあるので、歩き続けるために一層効果を発揮する。「〈10〉お腹の底から大きな声を出して歌うことで、脳下垂体を刺激し て自律神経が整うだけでなく、自然に腹式呼吸になるので心肺機能も高まります。力一杯歌うと、1曲で100mのジョギングをするのと同じくらいの有酸素運 動になるんです」(前出・白澤医師)

歌うのが嫌いな人が無理にやっても効果はないというから、やはり、楽しんでやるというのが一番の秘訣のようだ。

ボケずに幸せな人生を全うするためには、最後まで自分の足で歩くことが不可欠。そのためにも、いま挙げた10の鉄則を実践してみるところから始めてみてはどうだろうか。

[現代ビジネス]

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Posted by nob : 2015年06月03日 16:56