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憲法学者の所見
■安保法案「違憲」104人、「合憲」2人 憲法学者ら
集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法案は憲法違反にあたるか
安全保障関連法案の合憲性をめぐり、朝日新聞は憲法学者ら209人にアンケートをした。回答した122人のうち「憲法違反」と答えた人は104人、「憲法違反の可能性がある」は15人。「憲法違反にはあたらない」は2人だった。
調査は先月下旬、判例集「憲法判例百選」(有斐閣、2013年発行)を執筆した210人のうち故人1人を除いてメールなどで実施。一部無回答を含め122人(実名85人、匿名希望37人)が回答した。法案と憲法との整合性を問う質問は四つの回答から選ぶ選択式で、「憲法違反にはあたらない可能性がある」は0人、回答なしが1人だった。
違憲か違憲の可能性があると答えた計119人は「集団的自衛権の容認は、解釈の限界を超える」「憲法は武力行使を政策的に判断する権限を政府に与えていない」などを理由に挙げた。一方、合憲と答えた2人は「国家を守るために必要な範囲に限定されている」「従来解釈と論理的整合性が欠如しているだけでは憲法違反の理由にならない」とした。
法案に先立ち、安倍内閣は昨年7月、集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定をした。この妥当性について尋ねたところ、回答した116人が「妥当でない」とした。「都合のよい憲法解釈は法的安定性を失う」といった批判があった。法案が合憲と答えた2人を含む6人は無回答だった。
政府は集団的自衛権行使容認の根拠として1959年の砂川事件の最高裁判決を挙げている。この判決が集団的自衛権行使を「認めていない」と答えた人は95人で、「認めている」は1人。「判決は判断していない」などとして「その他」を選んだ人が24人、無回答が2人だった。
自衛隊については「憲法違反」が50人、「憲法違反の可能性がある」が27人の一方で、「憲法違反にはあたらない」は28人、「憲法違反にあたらない可能性がある」は13人だった。憲法9条改正が「必要ない」は99人、「必要がある」は6人だった。
憲法判例百選は重要判例の概要を紹介し、意義を解説する専門書。13年発行の第6版はI、II巻合わせて210人が執筆した。衆院特別委員会で法案の合憲派として菅義偉官房長官が名前を挙げた3人は執筆していない。
法案をめぐっては、衆院憲法審査会に参考人招致された憲法学者3人が憲法違反と発言するなど法的正当性に疑問の声が出ている。
[朝日新聞]
■憲法学者らから見た安保法案 「曲解」「政策論に期待」
集団的自衛権をめぐる政府と憲法学者の考え方
解釈の限界を超えている――。朝日新聞が実施した憲法学者らへのアンケートでは、安全保障関連法案を大多数が「違憲」と判断した。成立を目指す安倍政権は、法の専門家からは立憲主義を脅かす存在と映る。
■法案の合憲性
法案について、違憲や違憲の可能性があると答えた119人のうち40人以上が自由記述で現行憲法下での集団的自衛権行使は違憲と強調した。野坂泰司・学習院大法科大学院教授は「『他衛』を本質とする集団的自衛権行使の容認は、解釈の限界を超える」。市川正人・立命館大法科大学院教授は「集団的自衛権の一部を個別的自衛権の延長線上のものと位置づける政府解釈は論理的に破綻(はたん)している」と指摘した。
一方、法案を合憲とする2人のうち、井上武史・九州大院准教授は、集団的自衛権について「憲法の文言からは明らかに違憲とする根拠は見いだせない」「違憲かどうかではなく、日本や国際社会の平和と安定に真に貢献するかという政策論議を国民は期待している」と述べた。
法案は集団的自衛権行使のための「武力行使の新3要件」を定め、政府は「厳格な歯止め」とするが、20人以上が定義があいまいだとした。若尾典子・佛教大教授は「漠然としており、制限規定となっていない」。大津浩・成城大教授は存立危機事態について「政治的多数派の主観的な『危機』の判断で拡大する基準」とする。
これに対し、法案を合憲とした元衆議院法制局法制主幹の浅野善治・大東文化大院教授は3要件を「厳格」と評価し、「国家を守るために必要な範囲に限定されている」とした。
政府の憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を可能にした手法についても約40人が疑問視した。井上典之・神戸大院教授は「憲法の最高法規としての性格を無視した行為」とした。
[朝日新聞]
■「憲法学者の中で改憲論者は警戒されている」安保法案「合憲論」百地教授に聞く
集団的自衛権の行使を可能にする安保法案をめぐって、多くの憲法学者から「違憲」の大合唱が聞こえてくる中、少数ながら堂々と「合憲論」を主張する憲法学者がいる。「合憲」とする学者は、憲法をどうとらえているのか。日本大学の百地章教授に聞いた。
●護憲派のヒエラルキーができている
――なぜ、「少数意見」になってしまったのか。
安保法制を合憲だと考えている憲法学者は、私のほかにも結構います。だけど、声を上げられない雰囲気があります。
憲法学者の学界では、護憲派のヒエラルキーができています。その中にいて、「あいつは改憲論者だ」ということになると、警戒、排除されるおそれがあります。発表の場が失われたり、論文の執筆の機会を奪われたりということもありえます。そうなると、賢明に対処しようという学者は、声を上げられないのです。
私は、この国の憲法の成立過程に疑問を感じています。憲法を改正する必要があると考えています。平和憲法が、そんなにいいものだったら、世界中が輸入してくれそうです。でも、そうなってはいません。
自らを守ることができない国家なんてありえません。世界の歴史から見ても、はたしてこれでいいのかという疑問がありました。憲法をなんとか改正したいという思いで、これまで主張を続けてきました。
●新しい安保法制で「ポジティブリスト」を増やす
――従来と異なる安保法制が、なぜ必要なのだろうか。
これまでの日本は「集団的自衛権を保有しているけれど行使できない」という状態でした。それを国際標準に合わせて、行使できる状態にするのが、今回の安保法制です。
政府見解では、憲法9条1項は、侵略戦争を放棄しており、戦力をもつことは認めていませんが、2項で、戦力にいたらない実力は保持できるとされています。つまり、自衛隊は「戦力」(軍隊)ではなく、「実力」だから認められるということです。
軍隊は「ネガティブリスト」で行動します。「してはいけない」と、国際法で禁止されたこと以外は、主権と独立を守るために自由に行動できるということです。これが軍隊の特色です。逆に、警察は「ポジティブリスト」、つまり、具体的に「これとこれはしていい」と書いてあることしかできません。
自衛隊は法制度上、警察と同じ発想にたっています。ですから、具体的に「ポジティブリスト」として、法律に書いてあることしかできません。今回の安保法制は「してもいいこと」を増やすためです。「集団的自衛権は保有しているけど行使できない」という、これまでのいびつな状態を解消するために必要なのです。
ただし、本当にやるべきことは、9条2項を改正して、自衛隊を軍隊とすることです。
――改憲をしなければ、集団的自衛権を行使できないのではないか。
そうではありません。今の憲法の枠内でも、集団的自衛権の限定的行使は可能です。それが今回の安保法制なのです。集団的自衛権は、国連憲章51条によって、すべての国連加盟国に認められた、国際法上の固有の権利です。
そのため、憲法に明記されていなくても当然に行使することができます。当たり前のことをわざわざ明文化することはありません。調べた限りですが、他の国でもそんなことをわざわざ規定している国はありません。
――国際法のほうが、憲法より上ということなのか。
国際関係においてどちらを優位にするのかという問題と、国内においてどちらを優位とするのかという問題は、分けて考える必要があります。
国内的には、条約よりも憲法が優位だというのが政府見解なので、憲法に違反するような条約は違憲無効になります。
ところが、国際社会においては、国際法が優位しています。だから、国際社会では、各国とも国際法にしたがって行動しています。国際関係においては、憲法を引き合いにだしたら国際秩序が成り立ちませんから。
●「お抱え学者が徴兵制合憲を主張している」報道に「そんなわけない」
――一部の報道では、「お抱え学者の百地教授は徴兵制も合憲だと主張している」と伝えられているが、真意なのか。
全くの事実無根です。徴兵制は憲法違反だといっています。ただ、政府のいう違憲論は理屈に合わないと考えているということです。
憲法18条には「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」とあります。
政府の理屈では、徴兵制は「意に反する苦役」にあたるから違憲だというわけです。しかし、そうだとすると、自衛官は、自ら率先して、自らの意思で「苦役」についているということになる。国を守るという神聖な任務に就いている人に対して、「あなたがやっていることは苦役だよ」というのは失礼極まりないと思います。
国際的に見ても、強制的な労働の中には、軍務的な役務は含まれないと国際人権規約に書いてあります。徴兵を苦役と考えている国は、私の知る限りありません。
私は、憲法で軍隊の存在が認められていないので、徴兵制も認められていないと考えています。つまり、徴兵制は9条違反ということです。また、現実問題として考えても、仮に改憲したとしても、徴兵制を定めることはないでしょう。
今日の軍隊は極めてハイテク化しています。素人の国民を連れてきて、1年2年鍛えたところで、なんの役に立つというのでしょうか。かえって足手まといになります。いい加減なことを報道するのはやめてほしいですね。
[弁護士ドットコムニュース]
Posted by nob : 2015年07月16日 20:41