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(既得権層に)不都合な真実が自ずと伝えられることはない。。。Vol.5

■東京が壊滅する日 ― フクシマと日本の運命

広瀬隆 [ノンフィクション作家]

3人の元総理は、
なぜ「脱原発」に転向したのか?
――吉原毅×広瀬隆対談【最終回】

脱原発に転向した
3人の元首相

広瀬 私たちはこれからも吉原さんはじめ、城南信金のみなさんがどんどん表に出て発言してくださることを、とても期待しています。金融機関ですから、心強い味方です。

 吉原さんは今年6月に理事長を退任されましたが、今の役職は何ですか?

吉原 「城南信用金庫相談役」であり「城南総合研究所所長」。「所長」兼「小使い」です(笑)。

広瀬 たしか、元首相の小泉純一郎さんが「名誉所長」ですよね。

吉原 はい、小泉純一郎さんも『東京が壊滅する日』を読んでいます。「素晴らしい本だ」とおっしゃっていました。
『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(集英社新書)も含めて、かなり広瀬さんの本を熟読されていますよ。

広瀬 私は過去に小泉さんの悪口をいっぱい書いているので、会いにくいのですが(笑)。

吉原 小泉さんは常々、「民主主義だからいろんな意見があっていい」と言っています。いちいち感情的にならずに、自分の意見は堂々と言う。「他人が反対意見を言ったからといってつぶしてはいけない」と。

広瀬 うれしいことに、私が批判してきた総理候補と、歴代首相3人が次々反原発に変わってくれました。
 小沢一郎、細川護煕、小泉純一郎、菅直人の4人を批判してきましたが、現在は4人とも私たちの味方ですからね。この変化が大事な進歩だと思います。安倍晋三は退歩だけ!!

吉原 私は一般の方を対象に脱原発をテーマに講演をしています。
 女性には原発反対の人が多いのですが、大学生などの若い男性、働き盛りのビジネスマンや経営者を中心に「原発は必要」という声がまだあります。
 その理由を聞くと、「原発がなくなると経済が悪化し、文化的な生活は維持できない」とか、「景気が悪くなって就職できなくなり、仕事がなくなる」など、誤解をしている人がいっぱいいます。

広瀬 原発を止めるためには、その人たちにこそ正しい知識を持ってもらう必要があります。
 私が吉原さんに講演をお願いしてきたのは、そうした原発推進論者を、吉原さんが経済的な面から正しく説得して、原発無用という結論を信じてくれるようになるからです。

 今、愛媛県の伊方原発の再稼働問題がクローズアップされていますが、地元紙「愛媛新聞」の世論調査では、うれしいことに県民の7割が反対しています。
 今年の10月9日に愛媛県議会が再稼働に賛成しましたが、「愛媛新聞」は社説で、「この県議会の決議はなんの意味もない」
とはっきり書いていました。

 でも、残り3割が反対してくれればもっと大きな力になります。再稼働反対を8割から9割に増やしましょう。できますよ。
 推進論者は、ほとんどが経済的な理由ですから、「原発ゼロのほうが自分に利益が出る」とわかれば、私たちの味方になってくれます。そのためには、誤解している人、無関心な人に正しい知識を持ってもらいたい。

 そういう意味で吉原さんは、我々にとって異色のスターです。稲盛和夫さんが浜岡原発反対署名に参加してくれましたけど、先頭に立って実践活動をしてくれた企業人は、吉原さんが初めてですから。

なぜ、1000万円以上の寄付が集まったのか?

吉原 広瀬さんと初めてお会いしたのは、2012年6月27日でした。当金庫に口座を開設したいとおっしゃって。

広瀬 国会前での大飯原発の再稼働反対デモの様子をメディアがきちんと報道しないので、腹が立って、NHKたちにプレッシャーをかけるために、自分たちでヘリコプターをチャーターして、抗議活動を空撮しようと考えたときでしたね。その寄付金を集めるために、世の中で最も信頼されている城南信金に口座を開設してもらったのです。

「正しい報道ヘリの会」というのは吉原さんの命名で、第1号として、吉原さんがへそくり10万円を寄付してくださったので、私も10万円入れてスタートしました。

吉原 わずか数日間で1000万円以上の寄付が集まって、志のある方が本当に多いのだと改めて感動しました。心強いですね。

広瀬 城南信金だからあれだけの人気になったと思います。名の通り信用があるから、お金を集めるなら吉原さんしかないと思って、あの日、頼みに行ったのです。

吉原 最近では、話題となっている、SEALDs様にもご用命いただいているようです。

広瀬 そうですか。

吉原 するとネット右翼が攻撃してくるのです。ネットに悪口雑言が書いてありました。「そのうち金融機関も痛い目に遭うぞ」というような脅迫も。ああいうのはよくないですね。「我々は絶対に屈しないぞ」と社内で言い合っています。

広瀬 気にすることはありません。あんなのは「張り子の虎」です。
 どこかから金をもらって騒いでいるチンピラで、本当の右翼じゃない。ヘイトスピーチをやっている連中もそうです。だから大丈夫。こっちは強いですから、絶対ゆるがない。

電力会社の地域独占体制を
崩す方法

広瀬 今後は原発反対運動をどう展開しようと考えていますか?

吉原 これから一番大事なのは、電力会社の地域独占体制を崩すことでしょう。電力会社の地方支配力はものすごい。

広瀬 確かにすべての経済を握っていますからね。電力会社は就職の斡旋までやる。

吉原 お祭りのときの奉納金、議員には盆暮れに商品券、土建業や旅館業には利幅の大きな仕事、高校生には就職の斡旋……。

 でも、2016年4月1日に電力が自由化されますから、一部の人間がおかしな使い方をすることはできなくなります。そのために私たちは、新しい電力会社とタイアップして拡販を推進していこうと考えています。また、自然エネルギー事業を多くの国民の方々に拡めることです。

 その1つがソーラーシェアリングです。
 農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置します。耕作しながら発電も行います。農業をしながら電気を生む。これが一番採算性もあり、成功する可能性があるのです。

 もし日本のすべての農地に設置すると、原発700基分の発電力になります。1割の農地でも70基分です。

広瀬 農地の上にソーラーパネルをつけると、日よけをつけたことになり、収量は下がりませんか?

吉原 実際やってみると、なんと逆に増産になりました。
 農林水産省から、日よけをつけても、「80%程度の出来高が設置の条件」と言われていましたが、実際には120~150%の作物ができました。

 植物は一定の光飽和点を超えると光合成を止めてしまいます。また、太陽熱から身を守るために水分を蒸散して自らを冷却します。

 その結果、光合成に使う水がなくなり、夏場はある程度日よけをかけたほうが植物はよく育ち、農家にとっては食料増産につながる。しかも売電収入で現金収入が10倍になります。こんなうまい話はありません。

広瀬 設置コストはどのくらいかかりますか?

吉原 ソーラーパネルを設置する際の最大のコストは整地費用です。したがって、山を削ったり、コンクリートを打ったりすると大変です。
 しかし、ソーラーシェアリングの場合、もともと整地されている農地の上に設置します。農地の上に立てる支柱、その上に載せる太陽光パネルも、キットを買えば自分で簡単に作れます。コンクリートも使いません。ですからコストは極めて安いのです。

 まして農家は毎日農地を見ていますから、そのときにソーラーパネルの角度調整や、ちょっとしたメンテナンスはできます。

 これを推進することで農家の力がアップします。若い人たちが後継者として帰ってくる。地域の活性化、耕作放棄地の復活、TPP対策にもなります。そして、個々の農家が売電するのですから、原発は農家の邪魔になります。
 結果として、原発反対の大きな力となると思うのです。

新電力自由化は
すごいビジネスチャンス!

吉原 一般家庭では、積水ハウスなど、エネルギーゼロ住宅がいっぱい出てきています。世田谷、川崎では水素スマートシティ構想があります。

 トヨタやホンダの開発した水素自動車は、生産が追いつかず、大人気です。
 水素が主役になれば、太陽光や風力も水素に転換して保存流通できるので、自然エネルギー100%でも安定的な電力提供ができる。

「ブルータワー」といって、森林バイオマスから水素をつくるプラントもすでに稼働しています。水素から都市ガスもつくれます。ドイツでは自然エネルギー比率を2050年に80%まで引き上げる構想もあります。

 ただちに原発をやめれば、いろいろなビジネスがどんどん生まれてきて、すごいビジネスチャンスだと思います。

広瀬 東京・品川のマンションでも、電気とお湯を生み出す全戸エネファーム(燃料電池)つきのタイプが売り出されていますから、電力会社離れが進んでいます。

 電力会社への依存度が下がれば、自然と原発ゼロに向かって社会は動くでしょう。吉原さんは、中小企業の方と手を組んで、色々なイベントもしてきましたから、このエネルギー革命を実現できますね。

吉原 どうせ生きていくのであれば、子どもたちの未来につながる生き方をしていきたいというのは自然の感情です。そういうものを大切にしていきたい。
一部の人が利権で主導するのではなく、みんなが健全だと思う社会を底辺からつくっていきたいです。

 大企業の経営者、ビジネスマンの方々に言いたいのは、あなた方は、子どもたちに誇れるような立派な仕事をしたくありませんか、ということです。
 東芝でも日立でも、テレビのCMで「自然エネルギーで環境をよくしている企業」というPRをしていますが、「原発を推進している」ことはPRしていません。

 それほど「原発は後ろめたい事業」なのでしょう。それなら会社の方針を転換して、原発から撤退し、自分たちが誇りを持てる企業、子どもたちが笑顔で暮らせる未来をつくる企業、そして日本を代表する立派な企業になってください。

広瀬 吉原さんの主張は、金融の元締めで、なおかつ実績をあげてきたから、とても説得力があります。あとひと息です。百万の味方を得た気分です。原発ゼロで日本経済を再生しましょう!

吉原 11月4日(水)には城南信用金庫本店で、細川護煕さんがやっている自然エネルギー推進会議と共催で、小泉元総理、香山リカさん、ロバート・キャンベルさん、河合弘之弁護士と、自然エネルギーシンポジウムを行い、大変盛り上がりました。

 お客様である中小企業の方々による自然エネルギー事業の事例発表と『日本と原発』の映画上映。そういう形で、あちこちで活動を展開して、気焔をあげていこうと思います。みなで一緒に、世の中を変えてゆきましょう。

(おわり)

<著者プロフィール>
広瀬 隆(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『日本のゆくえ アジアのゆくえ』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

吉原 毅(Tsuyoshi Yoshiwara)
1955年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、城南信用金庫に入職。1996年、41歳で常務理事となり、2010年、理事長に就任。ともに助け合う協同組織である信用金庫の原点回帰を打ち出し、理事長の年収を支店長の平均以下である1200万円、全役員の定年60歳、現場による経営計画の策定など、異色の改革を行っている。2011年4月1日には「原発に頼らない安心できる社会へ」を発表。職員による被災地支援も続けている。著書に『原発ゼロで日本経済は再生する』(KADOKAWA)『信用金庫の力――人をつなぐ、守る』(岩波書店)、『城南信用金庫の「脱原発」宣言』(クレヨンハウス)がある。

[DIAMOND online]

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Posted by nob : 2015年11月22日 15:00