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常に最良の主治医は自分自身。。。

■医者に任せっきりの「二流患者」は損をする 最高の医療を受けるには「患者力」が必要だ

病院ランキングや名医ガイドのたぐいが相変わらず人気を集めている。だが、『一流患者と三流患者』を書いた米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター永代教授の上野直人氏は、こうした風潮に異論を唱える。

同氏は、最高の医療を保証するのはランキングでもブランドでもなく、患者自身がいかに医療に参加するかの「患者力」だと力説する。

一流と二流、三流の違いは

 ──タイトルの「一流患者」「三流患者」とは?

医者と一緒に考え、治療を選択し、納得のいく治療を選び取れる患者さんを一流患者としました。それに対し、医者の言うことはすべて受け入れ、自ら考えることなしに一言「お任せします」の患者さんを二流患者、文句ばかりで病院との信頼関係を作れないモンスター患者を三流患者としました。最低限のことしか病院から引き出せず、本人が損するタイプです。

あえて一流、三流と呼びますが、その意図は患者間に優劣をつけることではなく、自分の患者力がどのレベルにあるかを見直して、よりよい医療を受けられるよう、スキルを上げることです。

──「お任せします」はもう通用しない?

自分の身を守るためにも、二流患者の物言わぬスタンスは、ぜひ改めてほしいです。新しい治療法や薬が出て治療の選択肢が増え、医療はどんどん高度化、細分化している。医者は膨大な情報と日々格闘しており、正直手いっぱいです。医者も人間。国家試験は医療従事者として最低限の能力を保証するものであって、運転免許証を持っていても自動車事故が起きてしまうのと同じ。丁寧な運転の人もいれば暴走癖の人もいる。この医者は大丈夫か、本当に自分のことを考えてくれているか、患者はつねに質問をぶつけて突っつくことが大切です。医者との会話で医者を試す、といってもいい。

この治療法でいいか、ほかの治療法はないか、組み合わせはどうか。自分の生き方に合った最適な治療を医者から引き出していくのです。

みんな遅かれ早かれ病院の世話になるときがやってくる。病気に向き合う準備を先延ばしにせず、たとえば風邪を引いて受診するときなど、今から練習を始めてほしいのです。

──まずは、この薬は何のための薬ですか、と聞くことからですね。

そう、とにかく質問です。何となく引っ掛かったら必ず聞くことを習慣にする。なぜこの病名か、なぜこの診断か、なぜこの検査をするのか、なぜこの薬か、なぜ効かなかったのか。Why(なぜ)をつねに問う。自分が直面している事実を理解するためです。専門用語の羅列でわからないなら、わからないとハッキリと言う。なぜ?を重ねることで、自分の理解も深まっていく。医者にとっては、質問が気づきのきっかけにもなります。見落としや別の可能性に気づいて、より多くの選択肢が提示できるかもしれない。

それから診察時には必ずメモ帳とペンの持参を。一言断って会話を録音するのもいいし、誰かに付き添ってもらって話の受け手を増やすのもいい。医者とのコミュニケーションは真剣勝負。一言も漏らさず聞くぞという意気込みでいきましょう。疑問は放置せず、その場でも次回でもよいので、必ず聞くようにしてください。

話を理解できたかどうか確認するのにいちばんいい方法は、自分が受けた説明を他人に話すこと。聞かされた側が要領を得ないようなら、自分がちゃんと理解できていないってこと。次回受診時に、医者相手に話して反応を見る。僕の場合は大抵僕のほうから聞きますね。どう、ちゃんと理解してる?ちょっと話してみて、と。これは必ずやります。

ネットで得た情報は医者と共有を

──病気の医学的な正式名を必ず聞くことも強調されていますね。

ネットで調べるとき、正式な病名で検索したほうが情報が精査されます。セカンドオピニオンを取る際にも意思疎通がスムーズになる。

それから、ネットで得た情報は医者と共有し、わからないところは医者に聞くようにしてください。僕の患者さんはネットで見たものをプリントアウトして持ってきますよ。僕もそれを歓迎していて、必ず情報共有しようと約束します。ネットで見つけたサプリメントや代替療法を試したいなら、その前に絶対見せてくださいと。プリントアウトを見ても判断がつかない場合は、自分でもサイトを見に行きます。そこまでするのが医療従事者の責任ですから。

──日米の差は患者力の差だと書かれていますが。

実際には米国の患者だって一流ばかりでは全然ない。ただ米国では、患者力を与えることが重要だという意識を医療側が持っていて、病院全体で患者を一流に引き上げていく仕組みというか、サポートが日本よりはある。まず医者が患者に質問を促します。小児科なら、子供の患者に対し「質問はないか」と必ず聞く。親がいると話しにくいなら席を外してもらう。そうやって医者に質問することが当たり前という感覚を育てていく。そうした中で、優れた患者がキャッチボールを通して育つ可能性が高いというだけ。

 ──日本ではまだ、躊躇してしまう患者も多いかもしれません。

でも、質問し情報を正しく把握することは、日常生活のあちこちでやっていることでしょう。医者に対してだけ、恐縮して言えないとか遠慮してしまうとか、聖域視する必要はないし、そんな神話はなくさないといけない。医者には説明責任が、患者には医者の言葉を理解しようとする責任があります。

医者が投げたボールをきちんと受け止め、しっかり投げ返す。説明下手だったり面倒がったりするような医者の悪投は「ちゃんと投げて」と投げ返す。大事なのはキャッチボールです。キャッチボールする理由の一つは、相手がまっとうな医者かどうかを見極めることでもある。

患者が要求しないから医者が変わらない

──何といっても「3時間待ち3分医療」の現実があります。

現状のシステムを変えるためには、患者側からの突き上げが必要です。医療側には大きなプレッシャーになる。10年経っても20年経っても何も変わらないのは、誰も要求しないから。もっと説明を受ける時間が欲しい、それが要求である、とわからせないといけない。動かすのは患者団体などではなく、やはり個々の現場です。消費者ベースの市場なのに、消費者が声に出さないから市場ニーズが低い状態のままなんです。

日本のモノやサービスの質が成熟しているのは消費者が要求したから。それと同じ。医療だけを聖域視するのはおかしい。現実に、患者とともに医療を進めていきたいと考える若手や中堅の医者はとても多くなっています。医者が患者の面倒を見る時代から、医者のよさを最大限引き出すために、患者が医者を試し育てる時代へと移行しているのです。

上野 直人(うえの なおと)/1964年生まれ。和歌山県立医科大学卒業。ピッツバーグ大学付属病院にて米国内科専門医取得。現在は腫瘍内科医として研究、臨床に携わ り、専門は乳がん、分子標的療法開発。チーム医療推進にも力を入れ、日本でも医療従事者と患者向けの教育活動を行う。著書に『最高の医療をうけるための患 者学』。

[東洋経済オンライン]

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Posted by nob : 2016年06月25日 16:46