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そのとおり!!!Vol.18/納得は自ら創っていくもの。。。
■「働きがいを求めてはいけない」
ワークスアプリケーションズ 牧野正幸CEOに聞く
「働きがいのある会社」とはどのような会社なのだろうか。それを検証するため、日経ビジネスでは2007年以降、「Great Place to work® Institute Japan(GPTWジャパン)」(contact@greatplacetowork.jp)の協力を得て働きがいのある会社」という企画を続けている。
この調査において、ソフトウエア開発のワークスアプリケーションズは2010年にトップに輝き、昨年と今年はグーグルに続く2位と上位の常連になっている。同社はなぜ、社員の働きがいを常に意識するのか。そのために、経営者や現場は何をしているのか。社員の働きがいと組織の成長について、牧野正幸CEO(最高経営責任者)に聞いた。
牧野 正幸(まきの・まさゆき)氏
ワークスアプリケーションズCEO(最高経営責任者)
1963年兵庫県生まれ、49歳。大手建設会社、ソフトウェア会社役員を経て、システムコンサルタントとして94年に独立。銀行などと共同で中堅企業向けシステムを開発。海外ERPパッケージの日本向け適用のコンサルティングを行う。96年、ワークスアプリケーションズを設立。2001年、ジャスダックに上場し、代表取締役CEOに就任。人事・給与システムでは国内シェアトップを誇る。2011年、MBO(経営陣による企業買収)により上場廃止。
冒頭から矛盾していると思われるかもしれないが、働きがいを求めるという行為自体、良くないと私は考える。そもそも、働きがいを求めている時点で、自分以外の誰かが「与えてくれる」という甘えの発想が生まれているからだ。
「教育環境が整っているところで教えを乞いたい」「優秀な上司がいるところで自分の成長を引っ張ってもらいたい」――。
このような考えを持つ人は、そもそも自己成長ができないタイプ。そんな社員ばかりになると、会社の成長はなくなり、結果的に働きがいを感じられない組織になってしまいかねない。
「明るくて風通しの良い会社に入りたい」と語る学生がいる。でも、私の経験値から言えば、明るい職場を条件に掲げる人に、根が明るい人は少ない。そもそも根が明るい人は、職場が明るいかどうかなんて気にせず、周りを巻き込んで楽しい職場を作っていく。つまり、自分でそういう場を作れない人が、理想の職場を掲げるわけだ。
「今いる社員に働きがいをアピールしたい」
そういう人ばかりがたくさん入ってくると、明るい職場ではなくなってしまう。当社を志望する学生には、「働きがいのある会社だから」というイメージを持ってほしくない。入社してくる人ではなく、今いる社員に「働きがいがある」とアピールしたい。
7年ほど前のこと。新卒入社から3年目くらいで退職する社員に理由を聞いたところ、半数以上が「ワークスよりも働きがいのある会社があるかもしれない」と言って辞めてしまう状況だった。上場を果たした(昨年、MBOで非上場化)とはいえ、まだまだベンチャー企業。隣の芝生は青く見えるようで、若い人材が流出してしまう。そして、「転職して失敗した」という後悔の言葉も聞くようになった。これは当社にとっても、辞めた当人にとってもマイナスでしかない。
「うちの会社は君が成長できる環境だよ」と私が言っても、うまく伝わらないだろう。であれば、第三者が客観的に評価することで、当社がどれくらい働きがいのある会社なのかを示せばいい。そこで、「働きがいのある会社」の調査に応募した。
新卒で入る社員からすれば、自社がどれだけ働きがいがある会社なのか、そのモノサシがない。外部の意見であれば、より信頼できる。そのうえ、「あの企業と同等なんだ」と誇りを感じることもできる。
よくある勘違いなのだが、「働きがいのある会社=誰もが居心地の良さを感じる会社」という考えは、間違いだ。正しくは、常に成長したいと意欲的な人材にとって、居心地の良い会社である。会社は安住の地ではない。自己成長意欲のない人にまで優遇する会社は、よほど余裕がある会社か、未来がない会社のどちらかだろう。成長したい人をサポートし、さらに成長を求めるステージを用意する。これが、真の働きがいのある会社ではないだろうか。
だから、成長意欲がない人には苦しい環境だと思う。このミスマッチで会社を辞める人もいるのが現状だ。
ただ、優秀な人材に辞めてほしくはない。これはどの会社も同じだろう。もし、辞めてしまったとしても、また戻れる仕組みを作ればいい。当社では2005年12月に「カムバックパス」という制度を作った。在職中の評価によって、認定を受けた者であれば最長5年以内に「復帰=再就職」できる制度です。
これにより、一度は退職した社員が堂々と帰ってこられるようになった。一度外に出た社員が戻ってくるのを見れば、隣の芝生の青さを気にしていた社員も「やはりワークスが良い」と思えるはずだ。
カムバックパスと同時期にできた制度で「ワークスミルククラブ」というものがある。これは、最長13年にわたり、出産や育児を支援する制度だ。
「課題解決の道筋は提示しない」
こういった制度は、私が独断で決めているものではない。現場から声が上がってきて、現場主導で作られるものがほとんどだ。
経営者やマネジャーに「他社の制度を導入したい」とか「この状況を改善する制度の創設を」と希望する社員がいる。当社の場合、「じゃあ、自分で作ってみて」と返す。経営者に頼るだけでなく、まずはどうすれば課題が解決できるのかを自分で考えてもらう。
まずはコストを度外視して、考えさせる。そこででてきた提案について、アドバイスをしたり、承認したりする。最初から私が入ってしまうと、依存型の社員ばかりになってしまうから。こうすることで、問題を見つける能力に加え、それを解決するチカラが社員につく可能性も高まる。
自己成長意欲が高い人は、それを阻害する要因をも特定して解決する道を切り開く。それが、当社の働きがい向上に役立っていると考える。
新人教育やインターンシップ(就業体験)でも、課題解決に向けた道筋の提示は極力しないようにしている。「どうすればいいですか」。この一言だけで先輩が解決まで導いてしまうと、受け身な姿勢が習慣づけられてしまいかねない。だから、新人は必ず失敗する。それでも、他社では考えられないような負荷を新人にかける。それはなぜか。失敗した時こそ、人は成長するからだ。
「成長とモチベーションは比例しない」
成長とモチベーションは比例するように思われているが、私の考えは逆。反比例ではないだろうか。成功を通してモチベーションが高いときというのは、成長しているように本人は錯覚するが、ここでは成長はしていない。1つの成功を通して、その余力で成果を出しているだけ。成功は人を思考停止にさせてしまう。つまり、成功の果実をただ食べているだけに過ぎず、次の種まきができない。
失敗した時はどうか。なぜうまくいかなかったのか、どうすれば成功するかを必死に考える。これまでのやり方を改め、試行錯誤を繰り返す。そこで、人は成長する。成功を通してモチベーションが高い時期が続くと、人の成長は止まる。だから、最初から成功するのは良くない。
ただ、失敗はモチベーションを下げる。それが尽きてしまっては元も子もないので、モチベーションが底をつく前に成功を経験させる。これが人を育てるコツではないだろうか。
働きがいのある会社とは何か。私自身の考えは、「個人の成長意欲に対して、最大限の機会を与えることをコミットする会社」だ。
社員の期待に対して裏切っていないか。「働きがいのある会社」の調査で客観的な評価を得ることは、経営者としての通知簿をもらうようなものだ。社員の成長をけん引するには、私自身がこれからも成長しなければいけない。これからも、成長意欲の高い社員にとって、その機会を与えられる経営を目指していく。
[日経ビジネス]
Posted by nob : 2012年03月18日 23:47