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結局は効率の問題、、、見かけ上のスタイルではない。。。

■フリーランスがノマドなんて、大間違いだ!

自称ノマドなのに経営者を務める大石哲之さんの
“ハイパーボヘミアン”という生き方

オフィスではなくカフェなどの場所でWi-Fiやクラウドを駆使しながら働くスタイル「ノマド」が注目を集めている。しかし一方で、ノマド批判が一部でブームとなっているのも事実だ。ネット上では有名無名問わず、多くの人がこの話題を論じ、過激な批判も目立つ。

なぜ、ノマドはこんなにも話題になるのか。それはノマドという言葉が、単なる仕事術やスタイルを越え、なぜ人は働くか、人はどう働くべきなのかといった根源的な問題を突きつけているからなのではないだろうか。

そこで当連載『ノマドってどうよ? ~賛否両論から「働く」を考える~』では、ノマドの話題を軸にしながらも、「理想の働き方は?」と言った根源的な問題を考えていきたい。

今回は、ソーシャルメディアなどでノマドに関して様々な発言を行なうコンサルタント・作家の大石哲之さんに登場いただいた。(インタビュー日:2012年10月上旬)

■大石哲之さん
1977年生まれ、東京出身。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、外資系経営コンサル会社アクセンチュアに就職。その後、株式会社ジョブウェブを起業し、取締役副社長に就任。同社退社後は、株式会社ティンバーラインパートナーズを設立(現職)。『3分でわかるロジカル・シンキングの基本』など著書も多い。「tyk projects」というノマドをキーワードにした有料サロンも展開中 (ご本人のウェブサイトより)
公式サイト:http://tyk97.blogspot.jp/
Twitter:@tyk97
Facebook=https://www.facebook.com/tyk97

【ノマドへの見解/筆者の印象】
[ノマド肯定派]
前回ご登場いただいたアシシさんは、定住の地を持たないという意味で“ガチノマド”を自称していたが、大石さんはノマドの一派であるがフリーランスではない“ハイパーボヘミアン”を自称している。「やれやれ、また新しい分類か」と思うなかれ。ノマドについて書いているうちに筆者も気づいたが、現状のノマドという言葉の定義は広すぎる気もする。ノマドのさらに細かい区分と、“ハイパーボヘミアン”については大石さん流の解釈をブログに掲載しているので、時間と頭脳に余裕のある方はこちらも読んでみてほしい。
http://tyk97.blogspot.jp/2012/08/blog-post_5261.html

みんな、間違ってるぜ!
ノマド=フリーランスじゃない!

――これまでの当連載を読んでいただいたとのことですが、感想はいかがですか?

 みんな、テーマがテーマなだけに、言いたいこと言ってて面白いですね。まあ、僕も言いたいことを言わせてもらいますが(笑)。

――大石さんはノマドを自称されていますが、フリーランスではないですよね。世間の認知としては、フリーランスとノマドは一緒に扱われることも多いですが……。

 一般的に、ノマドというのは外でリモート(※1)で働いて、これは代表的な例で言えば、カフェで作業するフリーランスみたいなイメージだと思いますが、その意味では僕はフリーランスではないです。

 自由に働きたいというモチベーションで働いていますが、だからこそ僕はフリーランスではないです。僕が思うに、フリーランスは自由ではない。僕は今、会社を経営していて、むしろフリーランスの方々をまとめているようなイメージですね。

 ただし、僕は作家としても活動していますが、これは出版社などから受注するという形をとるので、この仕事に関してはフリーランスと言えるでしょうね。

 だから、フリーと経営者が半々くらいといったところですね。

(※1)ネットワークには繋がっているが、物理的には離れた場所に設置されたパソコンなどを指す。ここでは、会社の外に置かれているPC上で、場所を自由に移動しながらネットワークを活用して労働しているイメージ。

フリーではないノマドとは?
実は組織で働く方が効率的

――なるほど。世間でノマドと言えば“カフェで働くフリーランス”くらいの認識だと思うので、フリーではないノマドの方の話を聞いてみたいです。というわけで、大石さんの経営者としての側面にスポットを当てたいのですが、経営されているティンバーラインパートナーズという会社は、どういった会社ですか?

 いくつか事業はあるんですが、コンサルを行なっているのと、就職・転職サイトを運営しており、人材紹介やヘッドハンティングなどをやっています。

――会社のスタッフは何人いるんですか?

 3人です。僕も含めると4人ですね。基本給は支払っていますが、成果給ですね。

――今までのノマドはフリーランスという立場の人が多かったのですが、組織で仕事をする意味は、何かあるんですか?

 クライアントは共通だったり、人材のソースは共通だったりするから、組織で行なう方が効率的なんですよね。

――海外にいらっしゃることも多いようですね?

 会社の仕事とはあまり関係ないのですが、執筆業のほうで海外ネタを書くことなどが多いので、取材を兼ねて海外に出向いています。

――現在のような働き方によって、労働時間や報酬はサラリーマン時代と比べて変わりましたか?

 うーん、あまり具体的なことは諸問題で言えないですが、労働時間はかなり短くなりました。報酬は、僕は会社員時代がかなり昔のことなので何とも言えませんが、その頃よりは増えていますね。まあ、会社員時代よりは不安定で、たとえばリーマンショックの頃は所得がなかったりしましたが(笑)。

 自分では自身のことを“スモールビジネス事業家”と呼んでいるんです。「スモールビジネスでノマドをしましょう」というのが、僕が言いたいことです。

ノマドの観点からすると
フリーランスは最悪な働き方!!

――では、ノマドに適した業種や働き方はあるんですか?

 ノマドを時間や場所に囚われない自由な働き方と定義すると、フリーランスはノマドに向かないと思いますね。自分で働かなくてはいけないし、請負ですし、対面の作業が必要ですし。

 フリーランスとして朝から晩まで働く人もいますが、僕から言わせれば、フリーランスをやっている限り、ラットレースからは抜け出せないですね。やっぱり、自分で事業とか仕組みをつくらない限りは、働き詰めの生活からは抜け出せないですね。

――フリーランスである以上は、マネジメントによって所得を得られないので、必ず実労働が必要になってくるということですね。世間では、社畜とフリーランスが対立軸として扱われることが多いですが(煽ってるのは僕みたいな人間なのですが)、どちらもラットレースであると……。

 ですね。あと、僕の周囲には起業家が多いので、働き詰めですが、いつかはIPO(新規上場)で何十億もの巨額の富を得たいというタイプの人も多いです。

 でも、僕はそれもしんどいので、うまく事業の仕組みをつくりつつ、スモールビジネスの経営者として、そこそこの収入を得るぐらいのスタンスのほうが楽だな、と思いました。僕の周囲にも同じ考えの人はいますが、目立たないのであまり語られないんですよ。

小さな会社だからこそ
ノマド的な働き方ができる

――単純に、「もっと稼ぎたい」「巨額の富を得たい」という野望はないんですか?

 葛藤はありますよ。あわよくば上場させたいとか。ただ、従業員3人の現在の会社を100人の会社にしたとして、どちらも同じビジネスモデルで成立させるのは難しいですね。あくまで小さな会社だからこそ、できるビジネスモデルもあると思います。

 まあ、新しい事業をつくってIPOをやるなど、成功を目指したいですが、今のところ僕はやってないということです。いつかやるかもしれませんが。

――もっとできる能力があるかもしれないのに、ある程度のところで止めてしまうことには、何か意味があるんですか?

 まず、税金が高いですよね。一生懸命働いても税金でとられたらあんまり意味でないですから……。たとえば、50人とか100人ぐらいの規模の会社にしたとして、それで所得は今の1.5倍止まりという場合も、周囲の会社を見ていると多いんですよ。

 1.5倍も税金を取られたら、あんまり変わらなくなっちゃうというか。当然、従業員の数だけ責任や管理コストは増えるけど、所得はあまり上がらなくなっちゃう。そんなことが起こり得る。できるだけ僕も従業員も自由に働けて、だけどある程度の報酬がもらえるという仕組みを考えています。

 ……まあ、こんなこと言ってますけど、たとえば新しい事業を考えて起業して、3年くらいでIPOして100億稼げたら、その後どんな働き方をするか関係ないですよね。それがベストだと思うんですよ。能力があればね。

 そういう意味で、所詮は僕たちは超勝ち組コースを渡れなかった凡人なので、ノマドだとかノマドじゃないとか、そういう小さな議論ではなくて、貧乏人の庶民なりに仲良く生きていこうよ、とそういう話ですね。

ノマドだろうが社畜だろうが
ヒエラルキーの話はチンケだ

――ノマドも社畜もチンケであると(笑)。

 そうですね。ノマドが良いとか社員が良いとか、ヒエラルキーの話をしているけど、頂点に君臨する人からしたらどちらもチンケだってことなんですよ。僕がやってることなんて、本当にチンケです。偉くもなんともないです。そこを自覚するのは大事ですね。

――少し質問が変わりますが、大石さんはノマド的な働き方をする人がもっと増えるべきだと思いますか?

 うーん、僕自身は働き方なんてどうでも良いと思っています。

――なるほど。たとえば、元同僚が大石さんと同じようなノマドになりたいと言ったら、賛成しますか?

 業種によって違いますが、元同僚だったら「やればいいんじゃない」と言いますね。どういう生活をするかは、人それぞれですからね。大きな企業をつくって大儲けしたいという人もいますし、知名度や名声が欲しいという人もいますし、phaさん(※2)のように、お金もいらないからできるだけ楽をする生活を目指すという人もいます。

(※2)pha(読み:ふぁ)。 1978年生まれのブロガー。今年8月に『ニートの歩き方』という本を出版し、一部で話題となる。自身をニートと位置づけ、決まった定職を持たないが生活はできているという、まさにノマドな人。phaさん、当コーナーへの出演、お待ちしております。

――今世間で、ノマドと呼ばれているような人についてどう思いますか? たとえば、イケダハヤトさんとか。

 うーん。いいんじゃないですかね。ブログとかのアフィリエイトで食っていこうとしているわけでしょ。本で言えば印税で食っているようなもので、それは素晴しいことだと思います。ただ、彼が言ってることはよくわからないところもあるけど。

――安藤美冬さんはいかがでしょう?

 あの人はセミナーとかで食っていますよね。ノマドをどう定義するかによりますが、ノマドが自由な働き方だとすれば、あの人は今学校もやっているらしいし、タレントのような仕事もされて、すごく忙しいと思うので、自由で楽な生活ではないような気はしますね。まあ、組織にしばられないという意味ではノマドなのかもしれませんが。

―― 一方で、そういう人々が一部で支持されている背景には、今までのサラリーマン的な価値観へのアンチが特に若い人の間で盛り上がっているのかな、とも思うんですが。

 そうだね。僕はコンサルなので、生産性を上げるとか物理的な話をしていますが、イケダさんとかはもっと精神的な話が多いですけどね。「嫌いなことはやりたくない」って彼は言うんだけど、それはその通りだなって思う。

シェアハウス、シェアオフィスは
ノマド的ではない!

――ノマドの方々が主張していることについて、僕がよくわからないのは、シェアハウスについてです。確かに、住居をシェアするとコストは減ると思います。ただ、シェアハウスを利用するということは、そのハウスのなかのルールに従わなくてはいけないということだと思うので、生活の自由度はむしろ下がってくると思うんですよね。あれだけ自由を尊重したいノマドなのに、矛盾してないかと思うんですが……。

 確かに、シェアハウスがなんでノマドなのかよくわからないよね。僕の基準では、自由度が上がれば上がるほどノマド力が上がっていくと思うので、そういう意味では不便だよね。

 まあ、一緒に居た方が楽しいとか、寂しくないとか、それなりにメリットがあるのはわかるんですけど、でも自由度が増すかと言われればそうじゃない。

――むしろ不自由ですね。

 今、ノマドの人々は商品を何でもシェアしてコストを浮かすのは良いんだけど、それを持ってして「消費時代の終焉だ」なんて大上段なことを言うから、批判が出てくるんだよね(笑)。

 それに企業だって、シェアード・サービスと言って、もうずっと前からシェアの発想はあるんですよ。たとえば100個の会社があって、経理部門とか人事部門が100個あってもしょうがないじゃないですか。

 だから、そういうのは1ヵ所に集約させて、そこで集中処理して、しかもそれを中国とかインドとか、そういう場所に持っていけばどんどんコストが下がるんですよね。こういう手法は、経営においてごくごく当たり前に行われているんですよ。

 だから、シェアで消費時代が終わるなんて言っているけど、単なるコスト削減でしかなくて、別に新しくはないですね。フリーランスより企業のほうが先を行っている。

 シェアハウスだとかシェアオフィスとかで働いて、ノマドだって言ってるけど、もしそこで朝から晩まで働いてたら、ぜんぜん自由じゃないですよね。表層的なところでは自由に見えるかも知れないけど、本質を見ていない気がする。

大石さん、ご立腹!
「この連載は何がやりたいの?」

 だいたいこのノマドの議論は、何がゴールなんですかね? あなたはこの連載で何がやりたいの?

――ダイヤモンド・オンラインを見ている層は、圧倒的にサラリーマンが多いと思うんですよ。で、サラリーマンじゃない働き方をしている人が出てきているけど、その実態はどうなんだ、という話です。

 それはフリーランスでしょう。

――そうなんですけど、ノマドと呼ばれている働き方は、これまでのフリーランスとはどうやら少し違う価値観なんじゃないかと思うわけですよ。

 いや、一緒でしょう。そこは一刀両断したいよ。一緒だよ。

――うーん(答えに窮する)……。たとえば、クラウドというテクノロジーがありますよね。これは過去にはなかったものです。紙の資料を持たなくても良くなったので、働く場所が自由になったわけですね。

 それは場所の自由の話だよね。組織に縛られないフリーランスとは、別のベクトルの話でしょう。ペーパーレスなんて、大企業のほうがよっぽどやってるよ。

 僕は就業形態の話と時間や場所の自由というのは、別の概念だと思うんですよ。そこを一緒にしないでほしい。別の議論だよ。

時間と場所を自由に使える
フリーランスはノマドなのか?

――時間と場所の自由がノマドだと僕は認識していますが、そのなかで時間と場所を自由に使っているのがフリーランスという形態の人が多いので、それが目立っているから、「ノマド=フリーランス」になってしまっています。大石さんみたいに、フリーランスじゃないノマドも居ますよね。

 だから、フリーだろうが社員だろうが、いろんな形態でノマド化はできると思いますよ。それに企業だって、ノマド化しているんですよ。大企業だってノマド化しているよね。コストの安い外国の労働者を使って、作業効率を上げたりしている。これはまさにバーチャル化であり、ノマド化ですよね。

 企業のほうが、フリーランスよりはるかに進んでいます。ノマドの手法というのは、フリーランスがやっているような手法ではなくて、もっとビジネスの手法として、企業が昔から行なっていることなんですよ。ブームになってノマドが軽いもんだと思われると、残念ですね。

 逆に、そういう技術の革新で、フリーランスでもそういう時間や費用の削減が楽に行なえるようになったといったテクニカルな側面こそ、ノマドブームで本質的に語るべきところですね。

――テクニカルな変化によって、個人の働き方がどう変わるか、というところは取り上げていきたいですね。

 それはあると思います。世界規模での働き方の再編はすでに始まっていて、それが個人で実感できるレベルになってきているということじゃないですかね。個人が一番変化が遅いですから。

 僕に言わせれば、フリーランスなんて全然効率的じゃないし、単価が下がるだけだから。生産性を上げなければ、わざわざノマドになる必要なんてないですからね。

――そうですね。流行のキーワードに踊らされるのではなく、生産性や単価を上げ、実利を追究するスタイルとしてのノマドを、この連載では考えたいと思います。今回はありがとうございました。

■今日のまとめ

 当連載を執筆している関係で、ノマドを人に説明する機会が増えたが、「ノマドって、フリーランスを言い換えただけでしょ」という考え方が目立つ。僕自身も何だが流されて、ノマドの話なのかフリーランスの話なのかがごっちゃになったまま、議論が進行することが多い。

「職業はノマド」なんて主張が出てきたから、ややこしくなってしまったけど、本来はノマドとフリーランスは別の概念だ。ノマドというのは、技術革新によって、働く場所を自由にし効率化することで労働時間を押さえて、自由を増やしましょうということだ。会社を辞めて独立するとか、そういう話ではない。

 大石さんは、「フリーランスになることはお勧めしないが、ノマド化するのは素晴しい」というスタンスの人だったので、今回はノマドとフリーランスの違いを意識できて良かったと思う。今後は、「ノマドはフリーランスではない」という考えを徹底させたいと思った。

[DIAMOND online]

ここから続き

Posted by nob : 2012年10月17日 13:46