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子供を育てること、、、それが大人の唯一の責務。。。

■自分をダメだと思う高校生は65%!
夢を持つことを許されない子どもたち

夢を描く以前に、今の子どもたちは夢を持っていない子が多い!?そして、その原因は大人にあるのでは…。陸上選手として栄光と挫折を経験してきた為末大さんと、優秀な人材を学校に送り込む活動を展開する教育系NPOティーチ・フォー・ジャパン代表の松田悠介さんに、夢をテーマに語っていただきました。

夢を持てない子が急増中。これは

「現実を見ろ」という大人の責任!?

松田 前回、自分の夢がかなわない、と知ってしまったときにどうするか、といったことについて話をうかがいましたが、僕が教育現場で感じたのは、そもそも夢を持っていない子どもたちが多いということでした。

為末 それは問題ですね。今の子どもたちは、どうして夢を持てないのですか。

松田 自尊心が低くて、夢を持ってもどうせうまくかないと考えているようです。財団法人日本青少年研究所の調査によると、「自分が価値のある人間と思うか」という質問に対して、アメリカが57.2%、中国が42.2%「全くそうだ」と答えているのに対して、日本人は7.5%しかおらず、「まあそうだ」を含めても36.1%。逆にいえば、65%近い人たちが自分はダメだと思っているわけです。筑波大学の調査でも、将来に希望があると答えた中学生は、中国は9割を超えているのに、日本は3割弱しかいないんです。

為末 同じようなデータを見たことがあります。これは文化的な背景があるのでしょうか。

松田 僕は文化というより大人の責任だと思います。子どもたちは生まれもって自信がないわけではありません。それが証拠に小学生までは、多くの子どもたちが夢を持っているんです。将来、何になりたいか聞いてみると、「パティシエになりたい」とか、「プロ野球選手になりたい」とか、みんな何かしらの夢を語ってくれます。

 ところが中学に入った途端、夢を語ることがタブーになってしまう。大人側が「プロなんて本当になれると思ってるのか」とか「現実を見なさい」、「とにかく受験だ」とか言うから、「夢を追いかけることは悪いことだ」と思ってしまうんです。その結果、一回も本気で夢を目指さないまま、夢を持つことすらやめるようになる。

 これでは人が育つはずがありません。人が資源であるこの国で、こういうことを続けていると、相当に厳しいことになると思います。

「I can」と「They want」
この二つで人は頑張れる

松田 いま子どもたちに伝えているのは、「I want」と「I can」です。パティシエになりたいというのは「I want」で、小学校のときにみんなwantを持っています。ただ、そこに「自分だってやればできるんだ」という「I can」が加わらないと、夢に向かって進んでいけない。子どもたちの自己肯定感をいかに高めるか。それが、いま教育が抱えている課題の一つです。

為末 僕の「かけっこ教室」でも、子どもたちにハードルを飛んでもらうときには、かなり低い高さから始めるんです。それが成功してだんだん高くすると、最後にはけっこう高いところまで飛べる。できなかったことができるようになること、そして自分で飛ぼうとしたということ。それが自信になって、いい結果につながっていく。学校でも、そういうやり方ができるといいですが。

松田 日本の教育は、ずっと○×方式で評価してきましたからね。この弊害は大きいと思います。たとえば英語。日本人は中高大で10年間勉強しているのに、道端で外国人に話しかけられても話せない人が多いですよね。これは、完璧に話せないと×だと思ってしまうから。べつに100点じゃなくてもいいのに、子どもたちは減点が怖くなってしまう。

為末 子どもたちに前向きな気持ちになってもらうには、「They want」も必要でしょうね。職業はそもそも誰かのために、そして誰かが求めてくれる「They want」がないと成立しないし、まわりがそれを認めていないと、本人もやる気が続かない。

松田 そう思います。「よくできたね」と声をかけて、承認欲求を満たしてあげることが、子どもたちの自己肯定感につながっていきます。「They want」をデイリーに感じさせてあげることが、大人の役目だと思うんです。

ハウツーは世にあふれている
試し続けることが課題解決への近道

松田 あたりまえですが、夢は念じているだけでかなうものではありません。夢を実現させるには、具体的な力が必要です。私は子どもたちに、その力を身につけさせてあげたいと思っているんです。

為末 たとえばどんな力ですか。

松田 まず大切なのは課題解決力じゃないかと。為末さんはコーチをつけずに一人でやっていた時期がありますよね。誰にも答えを教えてもらえない状況になったとき、自分で課題を解決していく力がないと、どうにもならない。為末さんの場合は、どうやって課題解決力を磨いてきたのですか。

為末 課題を解決するには、まず課題を発見しなければいけません。そのためには、まず自分がやりたいこと、なりたいものを明確にする必要があります。それらと現状とのギャップこそが課題になります。

松田 まず課題を発見するのが大切なんですね。

為末 そうなんです。そして課題が見えれば、それを解決するハウツーは世にあふれているので、解決方法を見つけることは難しくない。むしろ厄介なのは、解決方法をどこまでやれるのかということでしょう。解決方法の中には、「毎日3時間以上はやりましょう」というような根気や時間をかけることが必要なものもある。そうなると解決方法を見つけるより、やりきることのほうが課題になってくる。

 ですから粘り強くさまざまな解決方法を試すことが大事だと思います。陸上の場合はタイムに反映されるので効果のある、なしがわかりやすく、そして現実にはほとんどアプローチが無駄に終わります。そういう状態でも、課題解決に向けてさまざまな方法を試し続けられるかどうか。これも重要な点です。

モチベーションは長く続かない
短期の目標設定で気持ちを盛り上げる

松田 粘り強く続けるためのコツはありますか。たとえば目標設定を間違えると、モチベーションが下がったりしそうですが。

為末 一生懸命やれば到達可能なところに目標を設定するといいと思います。タイムスパンが長すぎないことも大切。数年先よりも数ヵ月先、数週間先とか。モチベーションが持続する時間にはかぎりがあるので、ある程度の期間で達成できる目標を設定して、一つ一つ達成していった先に大きな夢がつながるという形にしたほうがいい。

 一方、目先の目標だけでも気持ちが続かないと思います。だから、たとえばですが「世界一になりたい」という大きな目標と、「これができるようになろう!」というような、一つ一つ積み上げていく目標の二本立てでやると、モチベーションが続くんじゃないかなあ。

オリンピックで転倒
その経験が5年後に活きた

松田 モチベーションについては、失敗したときの対処法も鍵になると思います。先ほど言ったとおり、子どもたちは〇×式の教育を受けてきたせいで、一度失敗しただけで自分を全否定してしまうんです。為末さんは、失敗をどうやって乗り越えてきたのですか。

為末 失敗ですか…。僕はシドニーで派手に転倒したんです。原因は風でした。

松田 見てました。

為末 でも、この失敗も学びになるんです。シドニーで僕は、「風が吹いている状況は、それを経験していない選手にとっては不利に働く」とわかった。そのことは、5年後のヘルシンキの世界陸上で活きました。決勝に残ったのは、若い選手ばかり。僕は環境が悪いときの若い選手の気持ちがなんとなくわかっていたので、じつはちょっとした心理戦を仕かけた。それがメダルにつながったわけです。

 僕が失敗を活かせたのは幸運だったかもしれません。現実には、次に活きるチャンスのない失敗もたくさんあると思います。でも、いつか活かせるときがくるという思いで失敗を受け止め、蓄積していくしかない。僕はそう思います。

わかりやすい報酬を求めると
努力が長続きしない!

松田 失敗をいつか活かすという思考は大事ですね。ただ、いまの子どもたちは努力に対してすぐに結果を求める傾向があるから、なかなか待てないかもしれません。いや、子どもたちだけじゃなく、最近の大人もそういう傾向があるかも……。

為末 自分の努力に対して、わかりやすい報酬を求めないほうがいいと思います。自分を振り返るとトップの世界はすでに限界に近づいているから、新しいことを試しても結果が出ないことが多いんです。そのときに「タイム短縮」というような報酬を頼りしていると、気持ちが続かなくなってしまいます。

 だから結果が出なくても、「少なくてもこれはダメだとわかった」とか、「うまくいかなかったことも経験として蓄積されていく」ということを自分の報酬にしないといけない。

松田 その考え方は研究者に似ているかもしれませんね。

為末 そうかもしれません。そうした報酬に日々気づける人は伸びると思いますよ。

為末 大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。2001年エドモントン世界選手権で、男子400mハードル日本人初となる銅メダルを獲得。さらに、2005年ヘルシンキ世界選手権でも銅メダルと、トラック種目で初めて日本人が世界大会で2度メダルを獲得するという快挙を達成。オリンピックはシドニー、アテネ、北京の3大会に出場。“侍ハードラー“の異名を持つトップアスリート。2003年に大阪ガスを退社し、プロに転向。2012年6月、大阪で行われた日本陸上競技選手権大会を最後に、25年間の現役生活に終止符を打った。Twitterフォロワー16万を超え「知的に語れるアスリート」として、言動にも注目が集まる。 2010年、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリートソサエティ」を設立。現在、代表理事を務めている。著書は、『走りながら考える』(ダイヤモンド社)、『諦める力』(プレジデント社)、『負けを生かす技術』(朝日新聞出版)等多数。

松田悠介(まつだ・ゆうすけ)
全米で就職ランキング第1位になったティーチ・フォー・アメリカ(TFA)の日本版「ティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)」創設代表者。大学卒業後、体育科教諭として中学校に勤務。体育を英語で教えるSports Englishのカリキュラムを立案。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院修士課程(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、外資系コンサルティングファーム PricewaterhouseCoopers にて人材戦略に従事し、2010年7月に退職、現在に至る。世界経済会議Global Shapers Community メンバー。経済産業省「キャリア教育の内容の充実と普及に関する調査委員会」委員。

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Posted by nob : 2013年06月20日 18:11