« 異なる才能が出会う場所、、、だから会社という。。。 | メイン | 言葉は人の数だけある、、、自らの言葉は習うものではなく創りあげていくもの、、、言葉は感じ方や考え方そして生き方の表明である。。。 »

一億総自営業者社会の構築、、、国の政策は徹底したインフラと敗者復活のためのセイフティーネットづくりだけでよい。。。

■組織にとらわれず、自らの未来を切り拓け
雇用新時代に問われる新たな働き方
『フリーエージェント社会の到来 「雇われない生き方」は何を変えるか』

7月12日に総務省が公表した2012年の就業構造基本調査によると、派遣やパートで働く非正規雇用者の数は2042万人に上り、20年前の調査から倍増しているという結果になっています。こうした組織に属さない労働者は、日本では労働条件の低さが問題視されるケースが多く、社会的地位も低く見られがちですが、アメリカでは組織に属さず独立した形での働き方が市民権を得ています。社会構造、雇用環境が異なるとはいえ、今後も日本では非正規雇用が増えていくのは明白です。ではそのような社会でいかにして自分の働き方を見つけていくのか。今回の一冊は全米でも大きな話題をさらった『フリーエージェント社会の到来』です。

自分の知恵を頼りに独立しながら社会とつながる
「フリーエージェント」という生き方

「フリーエージェント」と聞いて、大方の日本人が思い浮かべるのはプロ野球における「フリーエージェント(FA)制」でしょう。一定の条件を満たしたプロ野球選手にはFA権が与えられ、この権利を取得した選手はフリーエージェントと呼ばれます。フリーエージェントは、いずれの球団とも自由に契約を結ぶことができます。

 本書『フリーエージェント社会の到来 「雇われない生き方」は何を変えるか』の著者であるダニエル・ピンクが描くところのフリーエージェントはしかし、プロ野球選手とは一切関係ありません。本書の解説を担当した玄田有史・東大助教授(=当時、現在は同大教授)によると、「インターネットを使って、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた」人々のことを指しています。

 なにより、著者のダニエル自身が米上院議員の経済政策担当補佐官や労働長官補佐官、副大統領の首席スピーチライターなどを務めたあと、「もう二度と勤め人にはならない」と決意してフリーエージェントを宣言した当事者なのです。

 大組織に縛られることなく、自分の未来を自らの手で切り開くフリーエージェントたちは、アメリカの労働者の新しいモデルになりはじめている。自由きままな独立した労働者が経済の新しいシンボルになりつつある。テクノロジーに精通し、自ら針路を定める独立独歩のミニ起業家たちが登場したのだ。
 数字を見てみよう。実は、いまフォーチュン上位五〇〇社の企業に勤めるアメリカ人は、一〇人に一人もいない。アメリカ最大の民間の雇用主は、デトロイトのゼネラル・モーターズ(GM)でもなければ、フォードでもない。マイクロソフトでも、アマゾン・ドット・コムでもない。全米に一一〇〇を超す支部をもつ人材派遣会社のマンパワー社だ。いまのアメリカの若者の夢は、組織の中で出世することではない。若い世代は、そもそも会社に就職することすら望まない場合もある。それよりも、主にインターネット上で自分の好きなやり方で仕事をやってみたいと考えている。

 いまの映画産業は、かつてとはまるで違う仕組みで動いている。特定のプロジェクトごとに、俳優や監督、脚本家、アニメーター、大道具係などの人材や小さな会社が集まる。プロジェクトが完了すると、チームは解散する。その都度、メンバーは新しい技能を身につけ、新しいコネを手に入れ、既存の人脈を強化し、業界での自らの評価を高め、履歴書に書き込む項目をひとつ増やすのだ。……このハリウッド・モデルが、要するにフリーエージェント・モデルなのである。大勢の個人を常に戦力として抱える固定的な大組織は、戦力が常に入れ替わる小規模で柔軟なネットワークに取って代わられようとしている。

2001年時点で全米労働人口の1/4、
フリーエージェントが増大する理由と背景

 フリーエージェント人口の内訳は、政府の統計や民間の調査、学術的な研究などをもとに推定すると、フリーランス1650万人、臨時社員350万人、ミニ起業家1300万人となっています。少なく見積もっても、アメリカには合計3300万人のフリーエージェントが存在している計算になります。本書が刊行された2001年の時点で、労働人口の4人に1人がフリーエージェントという働き方を選んでいたわけです。その後IT社会はさらに進展し、それに伴ってフリーエージェント人口も増大していることは間違いありません。

 フリーエージェントという働き方が登場した要因として、著者は「4つの変化」を指摘しています。

 第1に、従来の労使間の社会的契約、すなわち従業員が忠誠心と引き換えに会社から安定を保障してもらうという関係が崩壊した。第2に、生産手段(富を生み出すのに必要な道具)が小型で安価になって個人で所有できるようになり、操作も簡単になった。第3に、繁栄が社会の広い層に行き渡り、しかも長期間続いている結果、生活の糧を稼ぐことだけが仕事の目的ではなくなり、人々は仕事にやりがいを求めるようになった。第4に、組織の寿命が短くなり、人々は勤め先の組織より長く生きるようになった。

 つまるところ、ひとつの組織に一生涯勤め続けるなどということはますます考えにくくなっているわけです。では、フリーエージェントたちはどのように働き、どういう生活を送っているのか。何を考えているのか。そして、彼らにとって意味のある仕事とはどういうものなのでしょうか。

 フリーエージェントにとって重要なのは、安定より自由。自己表現が自己否定に取って代わった。人々は組織の陰に身を隠すのではなく、自分の仕事に責任をもつようになった。なにをもって成功と考えるかは、あらかじめ決められた定義に従うのではなく、自分自身で決める。フリーエージェントにとっては、「大きいことはいいこと」ではない。こうしてフリーエージェントは、プロテスタントの堅苦しい労働倫理を様変わりさせ、新しい労働倫理を生み出した。フリーエージェントの労働倫理を構成するのは、「自由」「自分らしさ」「責任」「自分なりの成功」の四つの要素である。

地位の低い非正規社員ばかりが増える日本
労働システムの根本的な見直しが必要

 ひるがえって、日本においてフリーエージェントという働き方は定着していくでしょうか。最新の調査によると非正規社員の割合が38%を超え、男女とも過去最高を記録しました。一見、フリーエージェント人口は拡大しているように映ります。しかしながらフリーエージェントの一翼を担っている派遣労働者の現状は、労働条件ひとつとっても決して満足のいくものではなく、「正社員」に対して著しく不利な立場に置かれています。
すでにフリーエージェント社会を迎えている日本で、いかに生きるのか。巻末の玄田有史氏による解説も収録しています。

 安倍政権は、職種や勤務地、労働時間を限定したうえで企業と無期雇用契約を結ぶ「限定正社員」構想を掲げていますが、この政策によって非正規労働者の正社員化が進むのかどうか。「解雇しやすい正社員」が増えるだけではないか、という懸念は拭えません。

 正社員を大前提にした「正社員ありき」の政策ではなく、フリーエージェントたちを前提にした政策が求められているのではないでしょうか。正社員を前提にしてつくられている労働社会の仕組みやルールの見直しを進めるほうがよほど時代の要請に応えられると思うのですが、いかがでしょう。当のダニエル・ピンクはこう指摘しています。

 フリーエージェントは、私たちの仕事と生活に関する基本的な常識を塗り替えようとしている。大きな地殻変動が起きれば、地表の地形も様変わりする。既存のシステムが崩壊し、代わりに新しいシステムが生まれる。……フリーエージェントこそが、本当のニューエコノミーなのだ。

[DIAMOND online]

ここから続き

Posted by nob : 2013年08月01日 13:08