« まずはすべて一切の薬を絶つことから。。。Vol.2 | メイン | 武力介入への支持支援など愚行暴挙の極み、、、悪の枢軸への従属からの脱却こそ日本が今後進むべき途。。。 »

それを看過してきたのは私たち国民の一人一人。。。

■福島第1・汚染水:海外メディア辛辣報道

 東京電力福島第1原発の汚染水事故で、海外メディアが日本政府や東電に厳しい目を向けている。2020年夏季五輪の開催地決定を前に470億円の国費投入を打ち出したことも「東京の集票目的」とみなされ、反応は極めて辛辣(しんらつ)だ。後手に回った汚染水事故が、五輪招致のみならず、日本政府の信用に影を落としている。【朴鐘珠、ベルリン篠田航一】

 猪瀬直樹東京都知事が国際オリンピック委員会(IOC)総会のためブエノスアイレスに乗り込んだ2日、都内の日本外国特派員協会で原子力規制委員会の田中俊一委員長が記者会見に臨んだ。記者席は満席、立ったままの記者もいた。

 田中氏が、汚染水の放射性物質の濃度を基準値以下に薄めて海へ放出するのもやむなしと発言すると、仏AFP通信は「福島の(汚染)放水避けられず」と速報。オーストラリアの全国紙は「海を核の捨て場に」の見出しを掲げ「環境保護論者や漁業関係者、近隣諸国の激しい怒りを買うだろう」と伝えた。

 会見で田中氏に質問したフランスRTL放送の記者、ジョエル・ルジャンドル氏は3・11以前から日本で取材している。フランスも原発大国。同氏は原発への賛否以前の問題として、東電の企業体質に嫌悪感を抱いていると語る。「情報を公開せず、疑惑が浮上するとまず全否定する。ほとぼりが冷めたころに事実を認めるので非常にずる賢い。日本人や日本メディアの忘れやすい気質を利用している」

 マドリードに本社を置くスペイン通信社の東京支局の男性記者、アンドレス・サンチェス・ブラウン氏(33)は、震災後に宮城でボランティアをしながら、福島の被災者を取材してきた。参院選直後に汚染水漏れが発表された背景に意図的なものを感じており「東電をウソつきとまでは呼ばないが、事実を矮小(わいしょう)化させ発表しているのが分かる」と言う。

 外国人記者の東電への不信感は、世界各地の報道に反映されている。独紙フランクフルター・アルゲマイネは「東電は外国人記者に『原発は制御下にあり危険は全くない』と説明したが、汚染水は太平洋に流れ込んでいた。こうしたウソと隠蔽(いんぺい)工作で、東電が本当に事故から学んだのかと国民は疑念を深めている」と非難した。

 批判の矛先は、原発再稼働と輸出に突き進む安倍晋三政権にも向かう。米紙ニューヨーク・タイムズは「安倍首相が事故処理に積極的な役割を果たすと約束した2週間後に汚染水漏れが発覚した。約束に対する首相の真剣味が問われる」と指摘。政府が3日発表した470億円の汚染水対策費について、米AP通信は「大部分が発表済みのもので、五輪開催地の投票を前に安全性の宣伝との見方が大勢」と伝えた。4日付の韓国有力紙、朝鮮日報は論説委員のコラムで「(IOC総会を意識した対策ということが)事実だとすれば、日本は原発を安全に管理する能力も良心もない国だ」と書いている。

 サンチェス・ブラウン氏は、五輪候補地のライバル、スペインでは汚染水という「敵失」を歓迎するような報道は見当たらないとしつつも「五輪には海の競技もある。東京湾が福島から離れているとはいえ、汚染水が選考委員に良くない印象を与えているのは確か」と厳しい見方を示す。

[毎日新聞]


■汚染水漏れ事故は東電にすべてを押し付けた政府の責任だ
田原総一郎

原発事故が発生したのは民主党内閣のときで、民主党内閣は原発事故の責任と対応をすべて東電に負わせた。それが事態を悪化させたのだ。

 東京電力・福島第一原子力発電所で放射能汚染水がタンクから漏れた事故が深刻な問題になっている。原子力規制委員会は8月28日、この汚染水漏れ事故について、国際原子力事象評価尺度(INES)を「レベル3」(重大な異常事故)に引き上げた。

東電にすべての責任を負わせ、事態が悪化

 政府はなぜ今まで汚染水問題に手をつけてこなかったのか。これが一番問題である。

 福島第一原発の建屋の地下に流れ込む地下水は1日約400トンとも言われる。その地下水は原子炉を冷却した水と混じって汚染水となる。東電はその汚染水をタンクに貯めて原発敷地内に保管しているが、その数は約1000基にも上る。

 タンクから漏れ出した汚染水について、東電は8月19日に規制委に「少なくとも120リットル」と報告していたが、20日になって約300トンに修正したため、事態を重く受け止めた規制委は当初の「レベル1」(逸脱)から「レベル3」に引き上げた。

 汚染水漏れはこれまでにもあったが、なぜこれほど深刻な事態になったのか。基本的には、原発事故対応の体制に問題があったと私は考えている。原発事故が発生したのは民主党内閣のときで、民主党内閣は原発事故の責任と対応をすべて東電に負わせた。それが事態を悪化させたのだ。

ようやく「国が前面に出る」と表明

 もし米国で原発事故が起きたらどうなるか。政府が最初から乗り出し、軍を出動させて事故処理にあたるだろう。

 ところが福島第一原発事故では、事故処理を東電という民間企業にすべて任せてしまった。このことがそもそも大きな問題だった。

 原子炉建屋に1日約400トンの地下水が流れ込む問題は、本来なら敷地内に入る前段階で地下水をくみ上げ、汚染されていない状態で海に流せば何の問題もなかったはずだ。そうした対策がとられずにこれまでやってきたのである。

 自民党政権になり、今年5月、経済産業省が原子力建屋の地下に流れ込む地下水を減らすため、建屋を囲む遮水壁をつくるように東電に指示していた。技術的課題が多いのは確かだが、これまで実行に移されなかったのは東電には費用負担する余力がなかったことも影響している。

 政府はようやく「国が対策の前面に出る」という姿勢を固めた。茂木敏充経産相は26日、汚染水漏れの現場を視察し、「汚染水対策は福島第一原発の廃炉に向けた取り組みと切り離せない重要な課題。東電任せでは解決は困難だ」と述べた。

国費投入に消極的な財務省

 茂木さんは汚染水の濃度を下げる新型浄化装置「アルプス」を9月中旬から稼動させるなど5項目を東電に指示した。また、地下水の流入を防ぐ凍土遮水壁の設置などに予備費(内閣の裁量で使途を決められる費用)を活用すると明らかにした。

 東電は新型浄化装置でトリチウム以外の放射性物質を基準値以下にした汚染処理水を海に放出したいと考えているが、福島県漁業組合連合会(県漁連)などが強く反対しており、話し合いがついていない。

 県漁連の東電に対する不信感は強い。東電は原発事故が起きることはないと過去に言い続け、原発周辺の双葉町や楢葉町、大熊町などでは避難訓練さえしてこなかった。しかし、事故は起きた。だから福島の人々は、東電に対して強い不信感を抱いているのだ。

 ところが事故発生当時の民主党政権はすべてを東電に任せた。原発事故の処理は東電が責任を負うとして、政府や国が批判の矢面に立たされることになる国費の投入などに消極的だった。

 自民党政権は今回、「国主導」で汚染水対策をすることを決め、県漁連と話し合う意向だ。しかし、これに反対する“組織”がある。財務省だ。新たな賠償により国の財政が膨らむようなことはしたくないからだ。

「大変だ」と大騒ぎするだけのメディア報道

 自民党政府と財務省の話し合いはことのほか長引いた。本来なら、自民党政権ができてすぐに「国主導」の体制をつくるべきだった。茂木経産相が福島第一原発を視察した26日に「国が対策の前面に出る」という考えを示したのは、ようやく体制づくりができたことを意味する。

 私はマスメディアの報道にも問題があると考える。原発について「大変だ」とばかり書くが、どうすれば問題が解決できるのか、解決するためには東電任せで大丈夫かなど、問題の本質をつくような記事を書かない。「原発=大変だ」と書いていれば無難だと考えているかのようである。

 福島原発事故対応の最大の問題は、民主党政府が東電を悪者にし、すべてを東電に任せ、政府も経産省も学者もみんなが責任逃れをしてきたことである。今回、自民党政府が「国主導」の姿勢を明確にし、新しい体制をつくったのは重要な舵切りと言える。

 菅直人首相(当時)は「原発の再稼動にはストレステスト(耐性調査)が必要」と主張し、それにより日本の原発が2012年5月にすべて停止した。欧州のストレステストは稼働したまま行われる。再稼動の前提条件としてストレステストを位置づけ、全原発を停止させる必要があったのだろうか。

世論迎合的な体質が事故対応を遅らせた

 当時、民主党内でもめた別の問題もあった。福島県の人々への損害賠償である。民主党内には東電を法的整理しようという声があったが、もし東電を整理してしまったら賠償ができなくなる。

 そこで、東電が賠償するが、その資金は原子力損害賠償支援機構を通じて国が資金援助するという体制をつくった。その仕組みを考えたのは仙谷由人氏である。民主党内には反対の声も多く、仙谷さんは「東電を守った」として悪者扱いされた。しかし、損害賠償をきちんと行うためには、こうした仕組みが必要だったのである。

 以上に述べてきたような民主党の世論迎合的な体質や、マスメディアの「原発は危ない」「東電が悪い」と言っていればいいという体質によって、福島第一原発の事故対応が遅れてしまったのは否めない。

 今回の汚染水漏れ事故は、その象徴的な出来事だと言える。

[NIKKEI BP NET]

ここから続き

Posted by nob : 2013年09月05日 08:06