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東京五輪開催が決まった以上は、日本にそして世界に暮らす人々と選手との絆が結ぶ素晴らしい大会として成功するように、皆で考え楽しみそして将来に役立てていかねばなりません。。。

■東京五輪は、世界中のみんなの力で!
小林 隆=東海大学教授

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった。そして日本のお家芸レスリングの存続も決まった。開催や存続に力を注いできた人々が見せた決定の瞬間の表情は、ロンドン五輪で勝利した人々と同じ素晴らしい笑顔だった。彼ら、彼女たちの努力を称えるとともに、招致プランを振り返りつつ、私たちが五輪に向けてできることを考えてみたい。

 2012年には遠くロンドンの開催で、大きな時差があったにもかかわらず、あれほどの感動を与えてくれた日本の若き選手たちである。2020年の東京では、さらに、若き選手たちが大きな感動を与えてくれるに違いない。

 ロンドンでは日本選手団のフェアな戦いぶりが輝いていた。それは、物質的な豊かさと精神的な豊かさをともに獲得した国家に暮らす人々だけに許される伸びやかさと明るさを兼ね備えたものだった。

 貧しさを乗り越え、追いつけ、追い越せと、個人を捨てた努力を強いられた成長の時代には、日本人選手でさえ国家を背負わされ、オリンピックを楽しみたいと口にしながらも、国民の期待というプレッシャーに負けて涙を流した選手たちが多かった。

 豊かな国が開催するオリンピックである。私たちは、日本の選手を応援するとともに、成長期にある世界の選手たちに、伸びやかに明るくフェアに競技に臨める環境を提供したい。

 五輪招致の最終プレゼンで滝川クリステルさんが伝えた「お・も・て・な・し」は、漢字で書けば「お持て成し」で、その意味は、とりなす、待遇する、歓待する、世話をする、もてはやすといったものだから、相手をおもんぱかり気持ちよく過ごせるようにするといったところだろう。

 この文化は、世界のリーダーで構成されるIOC総会のメンバーに感動を与えたように、ネット時代の人間が取るべき態度として世界に誇るべきものである。

 情報社会に生きる若者たちを見てほしい。情報通信の双方向性がそうさせるのだと思うが、彼らは、相手の気持ちをおもんぱかり、協調を好み、対立を好まない。ネットなどで若者が表す中国や韓国への嫌悪感も、これらの国の対立的な行動に憤りを感じているのであって、自らが対立的な態度を取って相手国をけん制するといった不正義は好まない。むしろ、ナショナリズムを煽ってしまうのは、競争を重んじる古い世代を反映したマスコミや国家なのかもしれない。

LINEに見る若い世代の双方向コミュニケーション術

 若い世代の協調的な態度は、競争の時代を生き抜いてきた中高年層には少々分かりにくい。例えば、若者は、LINEを使う際に、相手が既読になっているのに「返信してくれないなあ……」なんて心配しないように、既読にならないようにメッセージを読むなんていうことをする。また、LINEの既読機能に対応することに心悩ます若者も多いことは、相手の気持ちを大切にする次世代文化を象徴する。そしてキャラメルペッパーズという音楽ユニットは「LINE 既読なのに返信こないSONG」という曲で(図2)、双方向コミュニケーションの心の機微を歌っている。こうした若者の行動は、LINEの機能が若者を悩ませるとする技術決定論ではなく、若者のおもんぱかる姿勢がLINEの既読機能を重視すると考えた方が妥当だろう。

 情報が一方的に流れてきたテレビ世代と、相手との双方向コミュニケーションが前提のネット世代では、相手に対する配慮や取るべき態度に違いが生まれてくるのは当然である。

 東京開催の決定要因は種々あると思うけれど、製品も、イベントも、そしてもちろんスポーツも、その完成度が極めて高い日本への信頼感は、精緻な招致プランからも読み取ることができる。それと同時に、日本国民のおもてなし的な協調的態度は、世界にとっても貴重なもので、その心をさらにネットで育んできた若き五輪選手たちのプレゼンは、IOC委員の心を動かしたに違いない。

 世界に数ある国々の中で、清潔で、安全で、人々が優しく親切な国というのは本当に少ない。世界の人々は、情報社会の今、日本がそうした国の一つであることを皆知っているし、近隣の国家の人々ならなおのこと知っている。国家という壁を取ってしまえば、人は皆、お互いを思いやる心をもっている。開催決定に対する世界の人々のTwitterやFacebookのコメントは、東京開催を喜ぶものが多かった。

 若者たちのコミュニケーション行動を見ている限り、この国の2020年は、さらに優しく親切な国になるだろう。

 それでは、2020年開催の東京五輪は、どんなオリンピック、パラリンピックになるのだろうか。

 オリンピックの開催期間は、ロンドン五輪と同じように、サッカーだけは開会式前の2020年7月22日(水)から競技が始まり、開会式は7月24日(土)20時からスタートする。そして8月9日(日)21時から24時までが閉会式となる。16日間+2日間の計18日間に28競技、306個の金メダルを目指して選手たちが躍動する。

世界に類を見ないほどバリアフリー化が進む日本

 一方、パラリンピックは、8月25日(火)から9月6日(日)までの計12日間で22競技、527個の金メダルが争われる。日本の建築物や構造物、道路や公園などの都市施設の多くは、法律や条例によって世界に類を見ないほどのバリアフリー化が進められている。ホテルにも数多くのバリアフリー対応の部屋がある。その上、ネットではWebアクセシビリティへの配慮がJIS規格に定められ、デジタルデバイスやソフトウエアも高齢者向けや障害者向けのものが多数ある。日本はパラリンピック開催においても、最も優れた開催地の一つと考えられるのは当然だろう。

 大会期間中の観客と大会のスタッフの数は約1010万人で、1日最大92万人の人々が、熱く燃えながら、東京を大移動する。これだけの人々が一気に東京にやってくるのであるから、成長中の都市なら、新しく道路や鉄道を作ったり、下水を整備したり、土地を購入したり、新たなスタジアムやホテルを建設したりする。だが、東京の場合には、もともと車移動の都市ではなく、公共交通に依存した大都市である。無数の都市活動のためのインフラは、ほとんどが整備済みであるし、施設建設のために新たに土地を購入する必要もない。競技施設も都心部と湾岸部に集約され、選手村から概ね20分以内ですべての施設にアクセス可能だとう言うから驚きだ。

 それでは、どのくらいのお金がかかるのか?

 気になる大会の予算は、約3400億円(招致プランベース)である。このプランどおりに事が進むなら、世界でも最もローコストな現代五輪となる。

 確かに、2020年の東京五輪は、土地もある、施設もある、公共交通機関もあると三拍子そろっている。インフラ整備にかかる経費は相当に少ないし、既に使われている施設を使うのだから、新興国での開催に比べれば、五輪後にせっかく作った施設が閑古鳥なんて心配もない。

 一部のマスコミが報道している経済効果約150兆円ということになればとんでもなく潤うし、東京都の試算のように3兆円と控えめでも、ローコスト五輪だからちょっとは潤う。長野五輪は、予算約1100億円に対しても50億円の黒字だったわけから、経験ある国家の五輪開催は、トントン程度に収まるだろう。経済効果の方も、長野五輪で、長野県内が約1.7兆円、日本全国で約4.7兆だったなんて言われている。2020年の東京五輪の150兆円は盛り過ぎにしても、ミニマムの3兆円から長野並みに予算の50倍の15兆円くらいの期待にとどめておけばよいだろう。経済効果なる皮算用は、株価つり上げのためみたいな感じがして、大きな額だとなんだか信用できない…。

 というわけで、開催経費は、北京五輪で約4兆、ロンドン五輪で約1兆、2020年の東京五輪は約3400億円だから、この金額は実現するなら驚くべき超格安五輪なのである。でも格安航空会社のLCCはやっぱり格安のサービスなので、LCCの料金で、ファーストクラス並みの見返りを期待するようなことだけは避けたい。

国民1人ひとりのの外交は、必ずや世界の人々を魅了する

 政府は、五輪には過度な期待をせず、堅実な経済効果を見込むとともに、既に投資されたインフラを利用するローコスト運営を見習って堅実な財政改革の道を歩んでほしい。それが結果的には長期的な安定をもたらすだろう。

 招致プランを丁寧に見れば、普段はダメだダメだと言っているこの国が、いかに優れた国家であるかを理解することができる。

 だから、豊かで幸せなこの国の人々は、根拠のない数字などで、無駄だとか、お得だなんて議論をしていてほしくはない。それよりも、せっかくの祭典である。世界中からやってくる選手たちを、そして観客の皆さんを気持ちよく迎えることに全力を注ぐべきだろう。

 このことは、日本が誇る豊かな高齢社会のあり方を、これから高齢化を迎える国際社会に示す意味でも重要であるし、東日本大震災のような世界が震撼した大災害を乗り越える助け合う力がどのようなものなのかを世界に示すうえでも必要なことだろう。国民と国民が国境を越えて個人と個人でつながることのできる時代である。国家の努力もさることながら、1人ひとりの国民の外交は、世界の人々を魅了することになるだろう。

 東京には、そして日本には、世界に誇るべき情報通信インフラがある。固定ブロードバンドの整備率は100%、30Mbps以上の超高速ブロードバンドの整備率は97%、携帯電話の基地局は、第3世代と3.9世代のLTEを合わせて11万局、それに加えてWi-FiスポットやWiMAXの環境は、既に全国の主要都市をカバーしている。ほぼすべての国民は、インターネットに接続するための端末を常時持ち歩く。1000万人が一度にドーンと増えたって、この国の情報インフラはビクともしない。

 私たちは、7年後にオリンピックとパラリンピックの選手になる、そして観客になるだろう世界の人々と交流するチャンスを既に持っている。素晴らしい能力を持っている、けれど、国が貧しいというだけで、家庭が貧しいというだけで、オリンピックに参加するチャンスを逃す選手は世界にどれほどいるのだろう。オリンピックに来たいのに来れない人はどのくらいいるのだろうか。オリンピックの中継を見たいのに見られない人はどのくらいいるのだろうか。

 SNSやクラウドファンディングを駆使して、彼ら、彼女たちが東京のオリンピック・パラリンピックに参加するプロセスを応援し、世界中のみんながスタッフとして大会に参加できるオリンピックにできたら素晴らしい。オリンピックスタジアムに立った選手が、そして東京にやってきた世界の人々が、持参したスマホから送る映像は、勝者だけを映し出すテレビとはまったく違った感動を世界の人々に与えてくれるに違いない。

 日本に、そして世界に暮らす人々と選手との絆が結ぶ東京オリンピック、パラリンピックであったなら、招致プランをはるかに超えて素晴らしい大会になる。そんなことを人々はもう考え始めているに違いない。

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Posted by nob : 2013年09月13日 07:17