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無常なる自己を生きる/変わらぬ確かなものは何処にも存在しない。。。
ある頃から日本人は、自分の至らなさや、人間それぞれが持っている限界への意識が足りなくなっているんじゃないかと思えてきました。
人間は1人ひとり限界だらけの存在でしょう。
ところが、たとえば学校の卒業式なんかでは、「君たちは全方向に可能性を持っている。努力次第で何にでもなれる」というようなことを言います。
でも、僕という人間1人をとってみても、生まれる場所も、親も、容貌も、背丈も、才能も、何も選べない。それだけでもう限界だらけですよね。
木村拓哉さんみたいなスターには、努力したってなりようがない(笑)。
その限界から目を背けて、努力すれば何でもできるって非現実的なことを言うのはおかしいと思うんです。
ですから、自分も、そして他者も万能ではないことを認識すること、いわば人間の哀しみを知ることが大事だと思うんです。
悲惨な目に遭うことも人間の心を育てますが、その一方で考えないといけないのは、その価値観だけでずっと生きていくことはできないということです。
「メメント・モリ」とよく言いますけれど、確かに死を思うことは大切です。根本的な体験を突きつけられると、いままでのくだらない悩みが無化されて、いちばん大事なものが見えてくる。
でも、それだけでずっと生きたら、人間は非常につまらない存在になります。ですから、悲劇や苦労の中で啓示された真理だけで生きていくのもまずいんじゃないかと、僕は思うんです。
小説でも、いつの間にかそうなってしまうことってありますね。
無意識から偶然に何かが出てきて、それが最初から考えていたことよりも、意味が濃く面白くもなったりすることがあります。
[山田太一談より/PRESIDENT online]
Posted by nob : 2013年09月16日 13:29