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そのとおり!!!Vol.32
■新潟県知事 泉田裕彦
東電は原子力発電部門の分離と事実隠蔽の原因究明をせよ
東京電力:インタビュー特別編
東京電力の命運を握る柏崎刈羽原子力発電所の再稼働。それに待ったをかける立地県首長の真意に迫る。
――東電は現在、銀行から新しい融資を受けるための総合特別事業計画を書いていますが、東電の収支は完全に柏崎刈羽原発に依拠しています。結局、金の問題で再稼働せざるをえないという状況について、どのように考えていますか。
言いたいことは2つ。1つは、原子力発電部門を東電から分離しないとダメではないかということ。3月11日以前は東電も、県からの安全対策要請をかなり 前向きに考えてくれていました。それが今、苦しい懐事情のために先送りや曖昧な対応になっている。県民の生命や安全、財産を守る知事の立場として、原発を 安全に運用すべき東電がこれでは困ります。
それというのも、そういう制度設計になっていることが問題なんです。国策民営でやってきた事業で大事故が起きたときに、すべて東電の利益で賠償させるス キームになっているから、「柏崎刈羽の再稼働か新潟県民の安全か」なんて選択肢になるんです。根本的に変えるべきです。そのために、いろいろ活動していま す。
――具体的にどのような取り組みをしているのですか。
いろいろやっているんですけど、手の内は明かせませんので(笑)。こんなことをやっていますって言ったら、フタをされちゃうじゃないですか。
誰が責任をとるか、被災者の救済をどうするのかも含めて制度設計を見直すということになれば、また違った結論が出るわけです。なんら責任をとっていない株主や東電に融資している金融機関に責任をとってもらう破綻処理も一つの選択肢です。
言いたいことのもう一つは、再稼働の議論の前にやるべきは福島の事故の検証と総括で、これが唯一無二ということです。その中で東電は、なぜ事故発生から2カ月もの間、メルトダウンの事実を認めず故意の虚偽発表をしたのか原因を解明すべきです。
東京電力は3月11日、地震のその日、夕方5時の段階で数時間後にメルトダウン開始ということは認識していました。ところが、東電がメルトダウンを認めたのは、2ヵ月後で、この間、ずっとウソをついていたわけです。
これね、過失じゃないんです。故意なんですよ。わかっていたのに、あえて言わなかったということです。誰がそんな指示をしたのかを明らかにする必要があると思います。背景事情もあるはずですから。
なぜウソをつかなければいけなかったのか。それは制度上の問題なのか。他にも課題がある可能性があるので、自ら犯した故意の虚偽発表、事実の隠蔽について、なぜそういう選択に至ったのかを、まず解明すべきだと思うんです。そうでないと、また同じことが起きるでしょ。
――東電を持株会社制にして廃炉や汚染水対策部分を切り分け、対策の責任を明確化する案の議論が進んでいますが、問題の解決になると思いますか。
いや、難しいんじゃないんですかね。東電の社長が一人で判断できることには限界があり、非常に多くの課題を背負っている組織を、切り分ければすむ話ではないと思いますね。
持株会社制にしても、傘下の企業で賠償費用の負担を分担する状況になったら今と変わらないと思いますよ。そうではなくて、やっぱり原子力発電部門を東電から分離しないと安全を優先する組織にならないのではないですかね。
それから、株式会社が福島第一原発の廃炉をすることに私は疑問を持っています。利益にとらわれない公社、もしくは廃炉庁などをつくるべきだと思っています。
現場の作業員の方々は、ひょっとすると途中でかなりピンはねをされて、すごく厳しい環境で働かされているわけで、彼らの国家公務員化等を考えるべきだと思うんですよ。
現場が何を望んでいるかというとね、やっぱり使い捨てされるっていう感覚については抵抗感が強いですから、そうじゃなくて国家公務員等として身分保障することでモチベーションを継続するということが重要なんじゃないでしょうか。
――東電の廣瀬(直己)社長が会見でよくおっしゃっているのが、例えば1000人の廃炉庁をつくったとして、廃炉は30年にわたる作業だから、人数が足りるのかと。一方、3万人の従業員がいる東電が最も現場をわかっているので、東電内で順繰りに人を回せないと廃炉だけはどうにもならんとおっしゃっています。
廃炉の人員が足りないというのなら、廃炉庁は採算を考えないで、1000人と言わず補充すればいいんですよ、もっと。で、それは国費でやるんですよ。廃炉作業に十分な人数と体制を、利益に依存しないかたちで確保して、対応できる体制をとるべきです。
民間企業の経営ができる範囲でやろうっていう考え方が間違っているということだと思います。だから、採算度外視でやるです。
――立地県の首長として、柏崎刈羽原発の再稼働に対して実質的な最終権限を持つため、東電の命運を握る状態になっています。当初、柏崎刈羽原発について東電が原子力規制委員会の審査を申請することに否定的でしたが、9月末に条件付きで承認しました。周囲からの圧力を感じてのことでしたか。
いろいろな声は届きました。そして、原発の話は普通の政策論と違って、本質的な議論が伝わらないことも困っています。廣瀬社長と面談すると、記事のタイトルはなぜか「泉田が怒った」とかなってしまう(笑)。
ほかにも例えば、今でも大手の報道各社は規制委の審査を「安全審査」と書くでしょ。あれは「規制基準適合審査」だし、規制委自身も「安全審査」とは言わないんですよね。なぜかというと、この基準は線量規制の上限値を外しているんです。つまり、基準をクリアしても健康に影響のある被曝をしうるものなんです。あくまで設備の規制基準なんですよ。これを何度説明しても、大手マスコミは絶対に書いてくれない。
そうすると何が起きるかっていうと、「なぜ知事は東電に“安全審査”を受けさせないんだ」という誤解が広まるんです。それでは不安だということになるんで、「じゃあ、規制基準適合審査はどうぞ」ということで申請の承認をしたんです。
でも、フィルターベントの運用については、プラント1基だけで身体に影響がある被曝をしうるという県の試算が出ているので、当然、住民の避難計画との整合性をとっていただかないといけない。そこで、体制が整うまで運用開始できないようにするという条件をつけたんです。
ただ、最初は「泉田が圧力に負けてブレた」と言われた(苦笑)。「どうしてブレたんですか」って質問には、ブレていないし、ここが問題なんですって説明をしています。
――第1回の規制委の審査会合で東電の管理能力について規制委から審査に入れるかどうかの懸念が示されましたが、これについてはどういうお考えですか。
首尾一貫しない、審査権限の振りかざしという風に見えるんですよ。規制委は住民の健康と安全を守るために政府の関係機関に勧告をする権限を持っているので、むしろやるべきことは、このままでは十分ではないと思えば、ほかの政府機関に勧告をすべきです。
本来公益を守るはずの規制委が自分の権限を縮小して、住民の安全、安心、健康、財産、これらをいかに別の機関のせいにするかに努力している姿は滑稽です。
――泉田知事といえば、東電だけでなく規制委とも代わる代わる闘っている印象です。
最初から両方が問題を抱えていました。根本的な問題は何かというと、福島での事故、これを検証しないと新しい原発の基準を作れないわけですよ。それをやらないで基準を作っているんで、そこがスタートラインとして間違っていると思うんですよね。
そして、規制委の体制ですよね。審査をするのが設備班と地震・津波班しかいないんですよ。にもかかわらず、電力会社の管理能力を審査すると言っているわけです。それならば、マネジメント班をつくらないと、本来審査できないんじゃないかと思うんですよ。
設備の性能だけ見てもしょうがなくて、事故が起きた原因は判断ミスもありますし、情報を隠すという組織がうまく機能していない部分もあるし、それを助長するような法体系っていうのもあるわけです。
それなのに、規制委員会が地震・津波班と設備班しか持っていなくて、抽象的に管理能力を審査するというのは、体制からしても不備じゃないかと思います。
さらに、この規制委の規制基準がですね、住民の健康を守るという視点に欠けているんですね。今回、敷地境界での上限線量を外しました。つまり、住民の健康に影響のある被曝を避けるっていう観点での基準になっていないということです。
つまり、何のために審査しているのかよくわからないのです。規制委員会が「審査はちゃんとやりました」という責任回避のための審査になっているのではないかとさえ思えるんです。
この辺について、規制委にはちゃんと説明していただく必要があるのだと思います。ですが、規制委の田中(俊一)委員長が私との直接の面談を拒んでいます。他県の知事にはもう会っています。私に会わないのは説明ができないからっていう以上の理由はないと思います。
そんな状況で、地域住民の方が基準をクリアしたから近くの原発は安心だと思えるかは疑問です。規制委の今の行動一つひとつが不信を助長していると思います。
――知事自身は脱原発といった考えを持っているのですか。
原発の燃料であるウラン235は、核燃料サイクルが実現しなければ化石燃料より早く数十年程度で枯渇します。そうすると、原発は人類史から見れば過渡的なエネルギーにしかならない。だから、いずれにしても次のステップを考えないといけない。
私は資源エネルギー庁時代にエネルギー供給計画に2度携わっています。世界の情勢や企業の動向、燃料調達リスクなどをにらみながら、かなり専門的な議論をした上で供給計画をつくって、エネルギーのベストミックスを考える。
原子力も同じだと思うんですよね。事故のリスクや廃炉費用、核燃サイクルがどうなるかを含めた上で、コストがどうなるのか評価をして初めて結論が得られる。答えが先にあるという考えには、私はあまり現実味を感じないですね。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
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Posted by nob : 2014年01月01日 23:48