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稼働する以上最低限の責務/廃炉とこれまでの核廃棄物処分ビジネスの推進こそ日本がこれから進むべき道。。。

■「原発のトイレ」:準備万端のフィンランドと停滞する日本

人間の驕りの産物に国民の7割が反対

村沢義久
立命館大学大学院客員教授

 5月22日、使用済み核燃料など「原発のごみ」の処分(特定放射性廃棄物の最終処分)について、国が7年ぶりに基本方針を改めた。2000年に制定されて以降、2008年にも軽微な修正がなされているが、本格的な改定は初めてのことだ。

 大きく変わったのは最終処分場の選定方法。従来は、自治体が手をあげるのを待つ公募方式をとっていたが、高知県東洋町が一度応募(後に住民反対により撤回)した以外は事例がなく、全く進展がないままだった。そのため、今後は国の主導で候補地を決めると言う。

 最終処分場が未定の日本の原発は「トイレなきマンション」とも言われている。国が前面に出て決めるのは当然だが、動きがあまりにも緩慢すぎる。「トイレ」が間に合わないことは明白だ。

フィンランドでは「オンカロ」年内着工へ

 日本の無作為ぶりと対照的なのが、この分野の最先進国フィンランドだ。「オンカロ」と呼ばれる最終処分場が年内に着工し、2022年にも完成する見通しとなった。

 「オンカロ」とはフィンランド語で、「洞窟」という意味。原発から出る使用済み核燃料を、地下約450メートルに10万年にわたり閉じ込める。処分場を建設するのはポシバ。フィンランド産業電力が60%、フォルタムが40%を出資して設立した合弁会社だ。フィンランド政府は今夏にも、南西部オルキルオトに造る地下施設本体の建設許可を出す見込みだ。

 放射能が安全なレベルに下がるまで数万年かかると言われ、オンカロでは10万年間保管することになっている。今年中に建設を始め、2022年に最終処分を始める計画だ。容量は最大9000トンに達する。

 フィンランドでは現在、オルキルオトとロビーサという2つのサイトで4基の原発が稼働し、総発電量の33%を賄っている(2013年実績)。だが、ほかに建設中のものが1基(オルキルオト3号機)と計画中のものが2基ある。オンカロは、これらすべてを50~60年間運転した場合に発生する核のごみの量を処分でき、100年後に施設が満杯になった段階で完全に封鎖する予定。極めて周到な計画だ。

オンカロの地下構造

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出所:ポシバ

原発稼働と同時に計画開始

 フィンランドの最初の原発は1977年に操業を開始している。フィンランドがすごいのは、原発の操業開始と同時に最終処分場の議論を始めたことだ。

 1994年に自国で発生する核のごみは自国で処分することを盛り込んだ法律を制定。翌1995年には、ポシバが設立された。ポシバは、フィンランドにおける使用済み燃料の最終処分に関する実施主体として、サイトの選定から、最終処分地の特性調査、建設、操業、閉鎖までのすべてについて責任を有する。

 2000年には、処分場地としてオルキルオト(エウラヨキ市)を選定、2001年には市が受け入れを表明し、議会が原則承認した。2012年12 月にフィンランド雇用経済省に処分場本体の建設を申請。2015年2月11日、核の安全を管轄する機関であるSTUKが雇用経済省に対し、「安全な建設が可能」との審査意見書を提出した。

 このように見てくると、結構時間がかかっているようだが、STUKの調査官は、「新しいタイプの施設なのだから、時間をかけてステップバイステップで推進することが必要」と言っている。学ぶべき点は多い。

 2100年に施設が閉鎖された後は、年間の放射線量が0.1ミリシーベルト以下でなければならないと法律で定められている。関係者は、容器破損など最悪の事態が起こった場合でも、実際の放射線量は、0.1ミリシーベルトの1万分の1にしかならないとの分析結果を発表している。

フィンランドにおける処分場建設までの経緯と今後の計画

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出所:ポシバ サイトなどを基に筆者作成

スウェーデンとフランスが続く

 最終処分場建設でフィンランドに続くのはスウェーデンだ。スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社のSKBは、2009年6月3日、使用済み燃料の最終処分地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定した。

 SKBは、処分地選定のため、2002年よりサイト調査を実施してきた。早ければ2015年から処分場の建設を開始し、2025年頃から操業を開始できるとの見通しを示している。フィンランドから数年遅れで操業できることになる。

 原子力大国フランスでは、北東部ビュール村に最終処分場の設置を計画している。この地が候補にあがったのは1991年。これまで20数年に及ぶ議論の末、2025年ごろに試験運用を始める予定である。しかし、反対派の運動もあり、操業開始時期は不透明だ。

 その他の国はずっと遅れている。具体的な候補地が挙がっているのは、ドイツとスイスだけ。米国では、一時候補地になったネバダ州のユッカマウンテンは、現在では中止の方向だ。広大な国土を持つ米国でさえ候補地の選定で行き詰っている。狭い日本で実現できる可能性は低い。

世界の高レベル放射性廃棄物処分計画

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[出所:電気事業連合会、原子力・エネルギー図面集 8-3-12]

日本は到底間に合わない

 我が国では、2000年に成立した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(最終処分法)」に基づき、原発から出る高レベル放射性廃棄物については、地下300メートル以深の安定した地層に処分(地層処分)する方針が決定されている。

 この決定に基づき、原子力発電環境整備機構(NUMO)が、2002年以来、受け入れる自治体を公募してきたが、前述のように、現在に至るまで処分地選定調査にも着手できていないのが実情だ。こうした状況を踏まえ、最終処分に関する政策を抜本的に見直し、今回の改定に至ったわけだ。

 今後は、国が前面に立って取り組んでいく。まずは、新たな方針について国民の理解を得るために、地域ブロックごとに全国シンポジウムや自治体向けの説明会などを開催していく。しかし、一部自治体からは既に反発の声が上がっており、今回の改正が功を奏するかどうか不明だ。

 経済産業省資源エネルギー庁が6月1、2の両日、札幌市内で道内市町村を対象とする説明会を開催した。だが、北海道は、放射性廃棄物を持ち込まない「核抜き」条例を設けていることから、説明会の開催自体に反発の声も出ていた。

 今回の改正のポイントの一つが、「将来世代に負担を先送りしない」ということだが、政府も電力会社もこれまで先送りを続けてきた。フィンランドより10年早く最初の原発を稼働したことを考えると、日本は最終処分場の準備において、フィンランドより25年も遅れていることになる。

 もう一つ、日本には、フィンランドのような地盤の安定した土地がほとんどないことも根本的な問題だ。フィンランドのあるスカンジナビア半島は地質学的に安定した広大な盾状地の上にある。オルキルオト島の岩盤ができたのは約19億年前。地震はほとんど発生しない。この時代の岩石は日本では存在しない。

 政府は火山帯や断層のある場所、地盤の軟らかい所などを避けた「科学的有望地」を選び、対象となる自治体に提案するという。しかし、そんなに都合のよい場所がどれだけあるのか疑問だ。
本当は今すぐ必要なのだが

 日本各地の「トイレのない」原発には、2014年9月末現在、1万4490トンの使用済み燃料が行き場のないまま保管されている。そして、多くの原発で、間もなく保管場所が満杯になるという状況だ。

 東京電力の福島第2原発では、あと2年分、柏崎刈羽原発では3年分しかない。この夏にも再稼働の可能性がある九州電力の川内原発はあと9年分、関西電力の高浜原発は6年分だ。つまり、日本の原発は「今すぐトイレが必要」な状況であり、これ以上ゴミを増やせないのだ。

 にもかかわらず、政府は2030年に総発電量の20~22%を原発で賄うという目標を掲げ、再稼働に積極的だ。原発が動き続ければ、ごみもまた増え続けることになる。処分場を自治体に押し付けなければならないとすれば、少なくともこれ以上事態を悪化させないために、原発依存度を極小化する前提が必要だ。

各原子力発電所の使用済核燃料の貯蔵量

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[出所:電気事業連合会、原子力・エネルギー図面集 7-7-1]

川内再稼働に待った!

 九電川内原発の再稼働に必要な3つの許認可の審査が5月27日、終了した。九電は7月下旬に1号機、9月下旬に2号機を再稼働させる方針だが、そう簡単にはいかないだろう。

 実際、現場での設備検査が難航しており、時期がずれ込む可能性もあるとみられている。それに加えて、原発の再稼働はゴミをますます増やすことになる。

 「原発はバベルの塔」とローマ法王が言った。人間の驕りの産物だ。学者と民間調査会社が今年4月に共同で実施した調査によると、原発再稼働に対して、反対70.8%、賛成27.9%という結果が出ている。「福島が収束していない今、再稼働はあり得ない」というのが平均的な国民感情だ。

[日経ビジネス]

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Posted by nob : 2015年06月19日 15:55