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因果応報/そのとおり!!!Vol.51
■田原総一朗「IS問題の根源は侵略行為の責任を取らない欧米諸国だ」
欧米にテロ予告をするイスラム国。各国で応戦の動きをみせているが、大国の思い通りに決着はつかないのではないかとジャーナリストの田原総一朗氏は懸念する。
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11月13日の夜、パリ市内と近郊の6カ所で同時多発テロが起き、129人が死亡し、300人以上が負傷した。新聞やテレビは連日、この同時多発テロを大きく報じている。
犯人は3チームに分かれ、ベルギー在住のフランス人たちが中軸になっていたようだ。IS(「イスラム国」)がテロを行ったと声明を出した。フランスのオランド大統領は「これはフランスに対する戦争だ」と断言し、「フランスは断固戦う。ISに報復措置をとる」と強調した。
だが、「断固戦う」とはどういうことなのだろうか。もちろん、フランス大統領としては「テロ」に屈しない強い姿勢を取らざるを得ないだろう。だが、空爆の強化では同時多発テロへの対応にはならない。さらに今後、フランスで、いやアメリカやイギリスでもISのテロが起きる危険性がある。
ところで、シリアの状況は極めて複雑である。アメリカやフランスはアサド大統領の失脚を図って、反アサド勢力を支援している。それに対してプーチン大統領のロシアはアサドを全面的に支持しているのである。そしてISはアサドとも、アメリカ、フランスやロシアとも対立しているのである。
アメリカやフランスがアサドの勢力地帯とISの勢力地帯を爆撃しているのに対し、ロシアはISを爆撃すると見せかけて、実は米仏が支持している反アサド勢力地帯を爆撃している可能性も大いにある。アメリカとロシアが対立し、間接的にではあるがお互いに爆撃し合っているのでは、ISの勢いは増大するだけだ。そこでオランド大統領は16日、ISと戦うためにアメリカとロシアが協力することを要請したようだ。
私は率直に言うと、アメリカがなぜアサドを潰そうとしているのか、よくわからない。「独裁だから」というのが要因のようだが、実はアメリカはそれで大失敗しているのだ。
イラクのフセイン大統領は独裁者であった。だが、その独裁下でイラクは安定していたのだ。ブッシュ大統領のアメリカは、大量破壊兵器を隠し持っているとか、アルカイダと緊密な関係にあるとか、ありもしない理由をつけてフセイン大統領を潰した。そのためにイラクは大混乱し、混乱の中で、ISが生まれたのである。いわば、ISをつくったのはアメリカなのだ。
アサド大統領が潰れれば、シリアはさらに混乱することになり、ISが事実上の権力を握る可能性だってある。
話が脱線した。オランド大統領の要請で、オバマのアメリカとプーチンのロシアが協力する可能性はある。
だが、私はイスラムの世界はアメリカ、ロシア、フランスといった大国に都合の良い戦略では決着しないのではないかととらえている。
日本は太平洋戦争に敗れ、1928年のパリ不戦条約以後の戦争の責任を全面的に取らされた。そのため、シリアの空爆になど参加しない「平和国家」となった。だが、アメリカ、イギリス、フランス、ロシアなど戦勝国は、実は第1次世界大戦前のアフリカ、アジア、中米での数々の侵略行為の責任をまったく取っていないのだ。
例えば英仏ロの3大国は1916年に「サイクス・ピコ協定」という密約を結び、中東地域の国境の「線引き」を勝手に定めてしまった。ISはそれに怒って、イスラムの独立の旗印を掲げているのである。
[週刊朝日]
Posted by nob : 2015年11月27日 23:02