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ギャップイヤーとサバティカル、、、素晴らしい。。。
■有給休暇で仕事効率が倍増!? 休むと成果が上がる、の実証結果とは
■「ギャップ・イヤー」認める米国
先日、オバマ大統領の娘マリアがハーバード大学への入学を決め、注目を集めたのは入学が2017年になることだった。本来ならば今年2016年の入学のはずが1年先に見送っている。これはアメリカでは「ギャップ・イヤー」と呼ばれる、大学入学前に1年ほど休暇を取り、見聞を広めてから学業に戻る制度だ。アメリカン・ギャップ協会の調査によると、年間およそ3万〜4万人が1年のギャップ・イヤーの後に大学に入学しているという。多くの学生は学業を休んでボランティアをしたり、旅行をしたり、企業インターンをしたりと自由な1年を過ごす。
マリア・オバマが入学予定のハーバード大学は、むしろ学生に1年休んでから学業に復帰することを促している。1年休養して教科書を離れて社会に目を向けることは、自分が何を学びたいかを理解する機会になるからだ。さらにインターンなどから自分の仕事への興味や向き不向きも感じるようになるかもしれない。何よりも、受験で無我夢中だった自分を冷静に見直す時間になるだろう。
社会人にもこうした疲れた頭を冷却する制度はある。たとえば大学の職員には、サバティカルという、一定期間勤務したのち1年ほど研究などに打ち込む時間が与えられる。ずっと勤務するよりも、リフレッシュすることでより発想が豊かになることを期待するものだ。組織にもよるが、給料はおよそ1学期分かそれ以上になる。
そして最近は日本の企業でも、介護休業などさまざまな休暇の取得を認めるようになった。たとえば育児休業は上限で1年まで。給料は得られないが、給付金は最初の6カ月は月給の67%、7カ月目からは50%になる。必要に駆られてのことかもしれないが、仕事から頭を切り替えるいい機会にはなるだろう。ほか、日本の年次有給休暇は半年勤務で10日発生する。それから1年勤務するごとに1〜2日増え、最高20日程度になる。ところが、こうした公の休業ですら、日本では連続して取りにくいのも事実。たとえ取ったとしても、戻ってきたときに果たしてどうなるかを考えると手を出しにくい。
グラフィックデザイナーのステファン・セグメイスターは、仕事におけるこうしたオフを、ちょっとおもしろい形で提唱している。それはこんなものだ。
■休暇をとりながら働くことの効果
たとえば人生の始め25年ほどを勉強に費やし、その後40年を働くことに使い、老後をおよそ15年ほどと試算する。ステファンが提唱するのは、この15年のうちの何年かを分割して、働いている現役時代に配分することだ。たとえば、表のようなイメージだ。
これなら退職は先に伸びるが、その分働いている期間をより充実した形にできるわけだ。あくまでもサンプルに過ぎないが、ひとつの働き方の例といえるだろう。ときにじっくり休んで充電をして、また仕事に戻ることで集中して仕事ができるだけでなく、休養中に得た経験から新しい発想が生み出せるようになる。
イスラエル、アメリカ、ニュージーランドの研究チームが、サバティカルで休業をとった研究者の健康状態、ストレスレベル、対人関係について調査をして発表している。それによると、休業をとった職員は、よりエネルギッシュになり、新鮮な気持ちで研究にとりくみ、プロとしての意識がより高まっている。何よりも、健康状態がよくなり、ストレスレベルが在職中よりもはるかに下がっているそうだ。
さらには、できる限り街を離れ、仕事と関係のない場所で過ごした職員のほうが、どこか仕事につながっているよりもよい結果になっているという。そのためこの研究者たちは、企業に対してもサバティカルの制度を推奨している。
1年の休業はより仕事の能率を上げ、発想をクリエイティブにしてくれるものだが、企業に居ながらの休業はそう簡単なものではないだろう。ならば、もう少しだけ短くして、休業により効果的に“脳休め”をする、こんな研究も発表されている。
■仕事から“離れる”と成果が上がる理由
インディアナ大学の心理学者Lile Jia氏らは「遠方の教訓――創造的な認識に対して、空間的な距離が持つ効果」という論文を発表している。実験の方法は、数十人の学部生をふたつのグループにわけ、各々が思いつく限りの交通手段を挙げてもらうというもの。
グループ1:この課題は「ギリシャで学ぶ」インディアナ大学生が考案したと伝える。
グループ2:「地元インディアナ州で学ぶ」インディアナ大学生が考案したと伝える。
このふたつのグループには明らかな違いが見られ、グループ1「ギリシャで考案」と聞いたグループのほうが、思いつく交通手段のほうが多かったという。
なぜ、「課題がどこで考案されたか」が重要なのだろうか。
それは、遠くで考案されたという意識から、地元の交通手段だけでなく、さまざまな手段へと思考が広がっていったからだ。つまり、インディアナ州の中を動くのではなく、世界中を動く手段を考えたというわけだ。
今回のように地理的な距離ばかりでなく、時間や確率的な距離でも、人は同じ反応を示すそうだ。「距離的に近く感じられる」ことで、より具体的でイメージ通りの意味でとらえて考えてしまう。ところが「距離が遠い」ことによって、より抽象的に発想することが可能になるというわけだ。
これこそが、休暇が仕事の効率を高め、発想を豊かにする理由である。
つまり、“日常”を離れて距離をおくことで、思考はふいに“何がどこにある”“ここはどこだ”といった具体性をなくして抽象的になり、空間がひろがり、今までと違うアイデアが浮かぶようになる。仕事から離れて初めて、今まででは考え付かなかったようなことに思いを巡らせるようになるのだ。
■休んで思い込みから脱却する
いつものメール、いつもの電話、何も考えずとも思い浮かぶ電車の名前……ある型にはまったことで、別の考えはそこには存在しなくなり、ただひとつのやり方を“正しい”と思い込んでしまう。そこを抜け出て漠然と名も知らない“乗り物”に乗り、説明ができない美しい波音を聞くことで、探していた答えが浮かぶかもしれない。
長期の休暇は難しくとも、堂々と「発想の転換をして、より仕事の効率をあげるために休んできます」と、そんな風に言ってみてもいいのかもしれない。
ステファンは「これから何をしたいか考えていて一番役に立つのは 周りにいる経験済みの人と話すこと。1人で想像するよりずっと効果的です」と語っていた。日本では、どうもそのあたりのコミュニケーションはとりにくいものだが、周りに長い休みをとった人がいたなら思い切って聞いてみたい。それは、どんな風なものなのか。
[脚注・参考資料]
CNNPolitics.com, Malia Obama to attend Harvard after gap year, 2016
Wired, Importance of Vacation, 2011
Psychology today, Do Sabbaticals Lead to Positive Work Outcomes?,by Ronald E Riggio Ph.D. 2010
Stefan Sagmeister, The power of time off, TED, Oct 2009
(上野陽子=文)
[DIAMOND online]
Posted by nob : 2016年06月07日 14:54